電気工事士×異世界転生_配線勇者は黙々と繋ぐ ~電気工事士、異世界で神経系を構築する~

もしもノベリスト

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第十二章 兵器開発

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夜明けと共に、魔王軍の総攻撃が始まった。

 地平線を覆い尽くすような大軍が、要塞に向かって進軍してくる。その中には、巨大な魔導兵器の姿もあった。

「——敵の魔導砲、射程に入りました!」

 斥候の報告が響く。

 敵の最前列にある巨大な砲が、青白い光を帯び始めた。魔力を凝縮している。

「——全員、防御態勢!」

 司令官の号令と同時に、敵の砲が火を噴いた。

 青白い光線が、要塞の城壁に命中した。轟音と共に、石壁の一部が吹き飛ぶ。

「——被害報告!」

「第三区画の壁が損壊! 負傷者、多数!」

 修平は、砲台に駆け上がった。

 新型魔導砲「雷撃」が、そこに設置されている。

「——準備はいいか」

「はい」

 操作を担当する兵士たちが、緊張した面持ちで答えた。

「敵の砲を狙え。こっちの方が連射できる。当たるまで撃ち続けろ」

「了解!」

 「雷撃」が、咆哮を上げた。

 青白い光線が、敵の魔導砲に向かって飛んでいく。

 一発目——外れ。

 二発目——かすめる。

 三発目——

 命中。

 敵の魔導砲が、爆発した。

「——やった!」

 兵士たちが歓声を上げた。

 だが、修平の表情は険しかった。

「まだだ。敵の砲は、あと十基以上ある」

  ◇

 戦いは、一日中続いた。

 「雷撃」は、敵の魔導砲を次々と破壊した。連射性能が効果を発揮し、単発の敵砲を圧倒していた。

 だが、敵も黙ってはいなかった。

「——新しい兵器が来ます!」

 斥候の報告。

 敵軍の後方から、今までとは違う形の兵器が現れた。

 それは——移動式の魔導盾だった。

 敵兵が、巨大な盾を前面に押し出しながら進軍してくる。「雷撃」の光線は、その盾に阻まれて敵に届かない。

「——くそ、防がれた」

 修平は、唇を噛んだ。

 敵も、こちらの兵器を分析して対策を立ててきた。

「どうする、シュウ」

 リカルドが、緊迫した声で言った。

「あの盾を破らないと——」

「わかってる」

 修平は、頭を回転させた。

 盾の正面は、強固な魔導防御。だが——

「——側面だ」

「は?」

「盾は、正面しか守れない。側面から撃てば——」

「側面って、どうやって」

「砲を移動させる」

 修平は、即座に指示を出した。

「『雷撃』を、城壁の左右に分散配置! 敵の盾の側面から射撃する!」

「了解!」

  ◇

 砲の移動は、困難を極めた。

 敵の攻撃が続く中、重い砲を城壁の端まで運ばなければならない。

 修平も、自ら砲を押した。

「——シュウ、お前は指揮を——」

「今は人手が足りない。俺も働く」

 全員が必死で動いた。

 やがて、砲の再配置が完了した。

「——撃て!」

 左右から、敵の盾の側面を狙う。

 青白い光線が、盾の横から敵軍に突き刺さった。

 爆発。叫び声。混乱。

「——効いてる!」

 兵士たちの士気が、再び上がった。

  ◇

 戦いは、夕方まで続いた。

 日が傾き始める頃、敵軍はついに撤退を開始した。

「——敵、退却します!」

 歓声が、要塞中に響き渡った。

 修平は、砲台に座り込んだ。

 全身が、汗と煤で真っ黒だった。

「——勝った……のか」

「勝ったよ」

 アリシアが、近づいてきた。

「お前のおかげだ」

「いえ、みんなの——」

「謙遜するな。お前の技術と判断が、この勝利をもたらした」

 アリシアは、修平の手を取った。

「——ありがとう」

 修平は、小さく笑った。

「——まだ、終わりじゃないですよ」

「ああ。これは、始まりに過ぎない」

 アリシアは頷いた。

「だが、今日は——祝おう。我々は、勝ったのだから」

  ◇

 その夜、要塞では祝宴が開かれた。

 といっても、質素なものだ。兵糧の中から分けられた少しの酒と食料。

 だが、兵士たちの顔には、笑顔があった。

「シュウさん!」

 マルコが、酒を持って駆け寄ってきた。

「一緒に飲みましょう!」

「——ああ」

 修平は、杯を受け取った。

 久しぶりの酒だった。

 前世で、仕事終わりに飲んでいたビールの味を思い出した。

「——うまい」

「でしょう!」

 マルコは、満面の笑みを浮かべた。

「シュウさんのおかげで、俺たちは生き延びられた。本当に——ありがとうございます」

「俺一人の力じゃない」

「でも、あなたがいなければ——」

「いいから。飲もう」

 二人は、杯を交わした。

 リカルドやゴルドも加わり、チーム全員で乾杯した。

「——お前たちのおかげだ」

 修平は、チームのメンバーを見回した。

「俺一人では、何もできなかった」

「何言ってんだ。お前が全部やったようなもんだろ」

「違う。俺は——繋いだだけだ」

「繋いだ?」

「ああ」

 修平は、夜空を見上げた。

「配線を繋ぎ、人を繋ぎ、力を繋ぐ。それが俺の仕事だ」

 チームのメンバーたちは、顔を見合わせた。

 そして——笑った。

「——変な奴だな、お前は」

「よく言われる」

 夜は更けていった。

 だが、修平の心には——静かな満足感があった。

 見えないところで、確実に繋ぐ。

 その仕事が、今日——世界を少しだけ、変えたのだから。
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