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新婚の話
伸ばした俺の左手の薬指に、金色の指輪が真新しくキラキラと光るのは、まだ当分慣れそうにない。
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彼は朝が苦手だと聞いていたので、朝食は俺が作った。
新居はまだ引っ越しが間に合わず、新しく買った家具や食器、それから元々一人暮らしをしていた名須さんの部屋から運ばれた家電や荷物しか届いていなかったけれど、寝室は別にしたから迎えに行くのは名須さんの部屋だ。
「おはようございます、名須さん」
結婚しても籍に入ったりする訳じゃないので、今日からも「名須さん」と「明原チャン」のままだと思う。
俺が「名須」になることも、彼が「明原」になることもない。
今日から一緒に暮らし、実績を残し、そしていつか事実婚という関係に ――本当になれるのだろうか?
呼び掛けてもみじろぎひとつしない彼に、俺はそおっと手を伸ばして揺り動かす。
伸ばした俺の左手の薬指に、金色の指輪が真新しくキラキラと光るのは、まだ当分慣れそうにない。
名須さんの寝顔なんて初めて見たから、ドキドキした。
「名須さん、朝ですよ」
カーテンを開けて、朝の日差しを入れる。
新婚旅行に行く予定はなかったけれど、今日から三日の有休と土日の休みがあるから、日帰りであちこち遠出してもいいかも知れない。
彼がいいと言うなら、行き先も宿泊先も決めぬまま二泊三日くらいの旅に出るのもいい。
そうしたらそれが新婚旅行ってことになるのかな?
何も計画なんてしていないけれど、そもそも俺たちは出会って三ヶ月という短いお付き合いで無計画なまま結婚をしてしまったのだ。
「名須さん、ご飯冷めちゃいますよ」
ベッドの上に座り、うつ伏せ寝な名須さんの肩を揺り動かす俺の腰に、彼の長い腕が絡みつくよう巻きついた。
「ひあっ!」
って叫んでしまったのは、まだそういった接触には慣れていなかったから。
学生時代に友人とスキンシップをとることなんかはあったけれど、社会人になってからはそんな子どもみたいなこともなかなか無かったし、名須さんとだってハグすらしたことなかった。
「おはよ」
寝ぼけた声に誘われて見下ろすと、名須さんが俺を見ていた。
メガネのレンズに遮られない鋭い目は、寝ぼけ眼なんて可愛らしいものじゃなかったけれど、俺は彼の鋭い視線は怖いけど嫌いじゃない。
ただちょっと、まだ慣れないだけ。
そしてそのまま頭から抱き寄せられ、ぐらりと傾いだ俺の体が彼の上に乗り上がるのに、近づいた俺の唇に彼の唇が重なった。
それが、俺のファーストキスだった。
驚いて口を押さえる俺に、名須さんの唇が歪むよう笑う。
「可愛い反応、たまんねェ、直撃した」
そしてすごく悪そうな表情を浮かべて言われるのに、ゾクゾクしたのは本当だ。
直撃ってなんだろう?
と思ったけれどそれは聞かないまま、誰かに何かをされたり言われたりして、こんなふうにゾクゾクするのは初めてだって気づく。
だからもう一度キスをされたら、クラクラと目眩がして、思わず彼にしがみついていた。
朝だから仕方ないけれど、重なり合った名須さんの股間の辺りがゴツゴツと硬くなっていて、俺はそれに気づくなり赤面した。
恥ずかしかったけどこれから一緒に暮らすのだし、そういうことにも慣れていかなければならないんだろうと思う。
「名須さん……ごはん、です」
そしてやっと絞り出した声に、名須さんはもう一度俺にキスをしてから起き上がると、
「下で呼んでよ、もう夫婦なんだから」
名須さんは言って、寝癖のついた髪を掻き毟るようにしてアクビした。
新居はまだ引っ越しが間に合わず、新しく買った家具や食器、それから元々一人暮らしをしていた名須さんの部屋から運ばれた家電や荷物しか届いていなかったけれど、寝室は別にしたから迎えに行くのは名須さんの部屋だ。
「おはようございます、名須さん」
結婚しても籍に入ったりする訳じゃないので、今日からも「名須さん」と「明原チャン」のままだと思う。
俺が「名須」になることも、彼が「明原」になることもない。
今日から一緒に暮らし、実績を残し、そしていつか事実婚という関係に ――本当になれるのだろうか?
呼び掛けてもみじろぎひとつしない彼に、俺はそおっと手を伸ばして揺り動かす。
伸ばした俺の左手の薬指に、金色の指輪が真新しくキラキラと光るのは、まだ当分慣れそうにない。
名須さんの寝顔なんて初めて見たから、ドキドキした。
「名須さん、朝ですよ」
カーテンを開けて、朝の日差しを入れる。
新婚旅行に行く予定はなかったけれど、今日から三日の有休と土日の休みがあるから、日帰りであちこち遠出してもいいかも知れない。
彼がいいと言うなら、行き先も宿泊先も決めぬまま二泊三日くらいの旅に出るのもいい。
そうしたらそれが新婚旅行ってことになるのかな?
何も計画なんてしていないけれど、そもそも俺たちは出会って三ヶ月という短いお付き合いで無計画なまま結婚をしてしまったのだ。
「名須さん、ご飯冷めちゃいますよ」
ベッドの上に座り、うつ伏せ寝な名須さんの肩を揺り動かす俺の腰に、彼の長い腕が絡みつくよう巻きついた。
「ひあっ!」
って叫んでしまったのは、まだそういった接触には慣れていなかったから。
学生時代に友人とスキンシップをとることなんかはあったけれど、社会人になってからはそんな子どもみたいなこともなかなか無かったし、名須さんとだってハグすらしたことなかった。
「おはよ」
寝ぼけた声に誘われて見下ろすと、名須さんが俺を見ていた。
メガネのレンズに遮られない鋭い目は、寝ぼけ眼なんて可愛らしいものじゃなかったけれど、俺は彼の鋭い視線は怖いけど嫌いじゃない。
ただちょっと、まだ慣れないだけ。
そしてそのまま頭から抱き寄せられ、ぐらりと傾いだ俺の体が彼の上に乗り上がるのに、近づいた俺の唇に彼の唇が重なった。
それが、俺のファーストキスだった。
驚いて口を押さえる俺に、名須さんの唇が歪むよう笑う。
「可愛い反応、たまんねェ、直撃した」
そしてすごく悪そうな表情を浮かべて言われるのに、ゾクゾクしたのは本当だ。
直撃ってなんだろう?
と思ったけれどそれは聞かないまま、誰かに何かをされたり言われたりして、こんなふうにゾクゾクするのは初めてだって気づく。
だからもう一度キスをされたら、クラクラと目眩がして、思わず彼にしがみついていた。
朝だから仕方ないけれど、重なり合った名須さんの股間の辺りがゴツゴツと硬くなっていて、俺はそれに気づくなり赤面した。
恥ずかしかったけどこれから一緒に暮らすのだし、そういうことにも慣れていかなければならないんだろうと思う。
「名須さん……ごはん、です」
そしてやっと絞り出した声に、名須さんはもう一度俺にキスをしてから起き上がると、
「下で呼んでよ、もう夫婦なんだから」
名須さんは言って、寝癖のついた髪を掻き毟るようにしてアクビした。
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