2人の未来〜今まで恋愛感情を抱いたことのなかった童貞オタク受けがゲイだと勘違いした周りに紹介されてお見合いする話〜

ルシーアンナ

文字の大きさ
12 / 13
新婚の話

伸ばした俺の左手の薬指に、金色の指輪が真新しくキラキラと光るのは、まだ当分慣れそうにない。

しおりを挟む
 彼は朝が苦手だと聞いていたので、朝食は俺が作った。


 新居はまだ引っ越しが間に合わず、新しく買った家具や食器、それから元々一人暮らしをしていた名須さんの部屋から運ばれた家電や荷物しか届いていなかったけれど、寝室は別にしたから迎えに行くのは名須さんの部屋だ。


「おはようございます、名須さん」

 結婚しても籍に入ったりする訳じゃないので、今日からも「名須さん」と「明原あきはらチャン」のままだと思う。


 俺が「名須」になることも、彼が「明原」になることもない。

 今日から一緒に暮らし、実績を残し、そしていつか事実婚という関係に‪ ――本当になれるのだろうか?


 呼び掛けてもみじろぎひとつしない彼に、俺はそおっと手を伸ばして揺り動かす。

 伸ばした俺の左手の薬指に、金色の指輪が真新しくキラキラと光るのは、まだ当分慣れそうにない。


 名須さんの寝顔なんて初めて見たから、ドキドキした。


「名須さん、朝ですよ」

 カーテンを開けて、朝の日差しを入れる。

 新婚旅行に行く予定はなかったけれど、今日から三日の有休と土日の休みがあるから、日帰りであちこち遠出してもいいかも知れない。


 彼がいいと言うなら、行き先も宿泊先も決めぬまま二泊三日くらいの旅に出るのもいい。

 そうしたらそれが新婚旅行ってことになるのかな?

 何も計画なんてしていないけれど、そもそも俺たちは出会って三ヶ月という短いお付き合いで無計画なまま結婚をしてしまったのだ。


「名須さん、ご飯冷めちゃいますよ」

 ベッドの上に座り、うつ伏せ寝な名須さんの肩を揺り動かす俺の腰に、彼の長い腕が絡みつくよう巻きついた。


「ひあっ!」

 って叫んでしまったのは、まだそういった接触には慣れていなかったから。


 学生時代に友人とスキンシップをとることなんかはあったけれど、社会人になってからはそんな子どもみたいなこともなかなか無かったし、名須さんとだってハグすらしたことなかった。


「おはよ」

 寝ぼけた声に誘われて見下ろすと、名須さんが俺を見ていた。

 メガネのレンズに遮られない鋭い目は、寝ぼけ眼なんて可愛らしいものじゃなかったけれど、俺は彼の鋭い視線は怖いけど嫌いじゃない。


 ただちょっと、まだ慣れないだけ。


 そしてそのまま頭から抱き寄せられ、ぐらりと傾いだ俺の体が彼の上に乗り上がるのに、近づいた俺の唇に彼の唇が重なった。


 それが、俺のファーストキスだった。


 驚いて口を押さえる俺に、名須さんの唇が歪むよう笑う。

「可愛い反応、たまんねェ、直撃した」

 そしてすごく悪そうな表情を浮かべて言われるのに、ゾクゾクしたのは本当だ。


 直撃ってなんだろう?

 と思ったけれどそれは聞かないまま、誰かに何かをされたり言われたりして、こんなふうにゾクゾクするのは初めてだって気づく。


 だからもう一度キスをされたら、クラクラと目眩がして、思わず彼にしがみついていた。


 朝だから仕方ないけれど、重なり合った名須さんの股間の辺りがゴツゴツと硬くなっていて、俺はそれに気づくなり赤面した。

 恥ずかしかったけどこれから一緒に暮らすのだし、そういうことにも慣れていかなければならないんだろうと思う。


「名須さん……ごはん、です」

 そしてやっと絞り出した声に、名須さんはもう一度俺にキスをしてから起き上がると、

「下で呼んでよ、もう夫婦なんだから」

 名須さんは言って、寝癖のついた髪を掻き毟るようにしてアクビした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

結婚初夜に相手が舌打ちして寝室出て行こうとした

BL
十数年間続いた王国と帝国の戦争の終結と和平の形として、元敵国の皇帝と結婚することになったカイル。 実家にはもう帰ってくるなと言われるし、結婚相手は心底嫌そうに舌打ちしてくるし、マジ最悪ってところから始まる話。 オメガバースでオメガの立場が低い世界 こんなあらすじとタイトルですが、主人公が可哀そうって感じは全然ないです 強くたくましくメンタルがオリハルコンな主人公です 主人公は耐える我慢する許す許容するということがあんまり出来ない人間です 倫理観もちょっと薄いです というか、他人の事を自分と同じ人間だと思ってない部分があります ※この主人公は受けです

氷の公爵様と身代わりパティシエ~「味覚なし」の旦那様が、僕のお菓子でトロトロに溶かされています!?~

水凪しおん
BL
【2月14日はバレンタインデー】 「お前の菓子だけが、私の心を溶かすのだ」 実家で「魔力なしの役立たず」と虐げられてきたオメガのリウ。 義弟の身代わりとして、北の果てに住む恐ろしい「氷血公爵」ジークハルトのもとへ嫁ぐことになる。 冷酷無慈悲と噂される公爵だったが、リウが作ったカカオのお菓子を食べた途端、その態度は激変!? リウの持つ「祝福のパティシエ」の力が、公爵の凍りついた呪いを溶かしていき――。 拾ったもふもふ聖獣と一緒に、甘いお菓子で冷たい旦那様を餌付け(?)する、身代わり花嫁のシンデレラストーリー!

俺の婚約者は小さな王子さま?!

大和 柊霞
BL
「私の婚約者になってくれますか?」 そう言い放ったのはこの国の王子さま?! パミュロン王国で次期国王候補の第1王子アルミスから婚約を求められたのは、公爵家三男のカイルア。公爵家でありながら、長男のように頭脳明晰でもなければ次男のように多才でもないカイルアは自由気ままに生きてかれこれ22年。 今の暮らしは性に合っているし、何不自由ない!人生は穏やかに過ごすべきだ!と思っていたのに、まさか10歳の王子に婚約を申し込まれてしまったのだ。 「年の差12歳なんてありえない!」 初めはそんな事を考えていたカイルアだったがアルミス王子と過ごすうちに少しづつ考えが変わっていき……。 ※不定期更新です

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

[BL]憧れだった初恋相手と偶然再会したら、速攻で抱かれてしまった

ざびえる
BL
エリートリーマン×平凡リーマン モデル事務所で メンズモデルのマネージャーをしている牧野 亮(まきの りょう) 25才 中学時代の初恋相手 高瀬 優璃 (たかせ ゆうり)が 突然現れ、再会した初日に強引に抱かれてしまう。 昔、優璃に嫌われていたとばかり思っていた亮は優璃の本当の気持ちに気付いていき… 夏にピッタリな青春ラブストーリー💕

聖獣召喚に巻き込まれた俺、モフモフの通訳をしてたら冷徹騎士団長に外堀を埋められました

たら昆布
BL
完璧っぽいエリート騎士×無自覚な愛され系

ざまぁされたチョロ可愛い王子様は、俺が貰ってあげますね

ヒラヲ
BL
「オーレリア・キャクストン侯爵令嬢! この時をもって、そなたとの婚約を破棄する!」 オーレリアに嫌がらせを受けたというエイミーの言葉を真に受けた僕は、王立学園の卒業パーティーで婚約破棄を突き付ける。 しかし、突如現れた隣国の第一王子がオーレリアに婚約を申し込み、嫌がらせはエイミーの自作自演であることが発覚する。 その結果、僕は冤罪による断罪劇の責任を取らされることになってしまった。 「どうして僕がこんな目に遭わなければならないんだ!?」 卒業パーティーから一ヶ月後、王位継承権を剥奪された僕は王都を追放され、オールディス辺境伯領へと送られる。 見習い騎士として一からやり直すことになった僕に、指導係の辺境伯子息アイザックがやたら絡んでくるようになって……? 追放先の辺境伯子息×ざまぁされたナルシスト王子様 悪役令嬢を断罪しようとしてざまぁされた王子の、その後を書いたBL作品です。

処理中です...