残飯あさりの期待外れ勇者として追放されたけど、何でも食べて取り込む《悪食の聖印》は最強への近道でした

フーツラ

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聖印⑨

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ギギッ!

「わっ、ゴブリンが喋った!ハクロウ、なんて言ったの?」

「分かるわけないだろ!人をなんだと思ってるんだ!」

「えっ、現地産の外れ勇者」

「だまれ!」

俺は一気にゴブリンに向かって踏み込み、ショートソードで首を切りつけた。ゴブリンの首はおかしな方向に曲がってそのまま崩れ落ちた。

「弱いな」

「弱いわね」

「これで強くなれるなら儲けものだな」

「ハクロウ、魔石取ってよ」

「たまにはマノンが魔石抉れよ。魔石抉ったら聖印生えるかも知れないぞ」

「わっ!根に持ってる!外れ勇者を根に持ってるわー。ないわー」

「根に持つに決まってるだろ!こっちは人生マルっとひっくり返ったんだぞ!」

「何言ってるのよ!私なんて世界がマルっとひっくり返ったんだからね!召喚した側の世界の人間として少々いじられるのぐらい受け入れなさい」

チッ。俺は仕方なくゴブリンの胸部にナイフを入れて魔石を抉りだした。ゴリっとした感覚にはまだ慣れない。

今日は朝早くから王都を出て、予定通り西の森で魔物を狩っている。幸いなことに今のところゴブリンにしか遭遇していない。それぞれが一体ずつ狩ったので最低限の目標は達した。

「ハクロウ、どうする?もうちょっと粘ってみる?」

「1日の稼ぎが小さな魔石2個じゃ流石に寂しい。もう少しやっていこう」

「了解ー」


######


「マノン、この樹を見てみろ。この辺りにマッドボアがいるのかもしれない」

俺は樹皮の削れた樹を指した。マッドボアは牙を樹に擦りつける習性があると、ギルドの資料室の本に書いてあったのだ。

「マッドボアと遭遇したら俺が前に出るから、マノンは弓で援護してくれ」

「オッケー!」

「俺に当てるなよ。頼むぞ」

「ふふふ。それは当てろってことね」

「違う!」

「はいはい」

「違うってば!」


######


俺は無言でマノンに視線を送り、手振りで隠れるように促した。もちろん俺も茂みに隠れた。何かが走るような音が聞こえたのだ。それも複数。そして更に厄介なことに、それには人間の声も混ざっていたのだ。

音は次第に大きくなり、声もはっきりと聞こえるようになってきた。

「オラッ!早く逃げないと親子共々死んじまうぞ!」

「それ、アドンが殺すんじゃん!」

「アドン!試したい技があるから一体は残してくれよ!」

牙が異常に発達した猪、マッドボアが2体フラつきながらも前へ前へと走り、その後ろから3人組が武器を持って追い立てている。

3人とも同じ皮鎧を着ており、手に持っている剣も同じように見える。そして何より皆、長身でスラリとしていてはっきりした目鼻立ちの美形だ。名前は分からないが、3人とも見覚えがある。

こいつら、勇者だ。
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