残飯あさりの期待外れ勇者として追放されたけど、何でも食べて取り込む《悪食の聖印》は最強への近道でした

フーツラ

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厄介事4

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俺は魔石を口に入れてゆっくりと噛み砕いた。全身が力の膜に覆われて少しだけ意識が高揚した。マノンはジョスイから水属性の魔法の詠唱を大急ぎで習っている。水の精霊石を有効活用する為だ。この広い平原をわざわざ俺達に向かって騎馬を飛ばしてくる集団が、俺達に好意的なわけはない。どうせ精霊石絡みでの厄介事だ。

程なくして、聖印騎士団は俺達の前に轡を並べて止まった。総数20騎。おそらく全員が聖印を持った勇者だろう。Fランク冒険者3人に大袈裟なことだ。

「君がハクロウ君だね。驚かしてすまない。私は聖印騎士団副団長、エンゾ・クザンだ」

そう名乗った男は如何にも勇者然とした美丈夫だった。歳は30歳ぐらいに見えるが実際の年齢は不明だ。勇者は老化が遅いらしいから見た目と年齢が一致しない。なんにしても何代か前の勇者には違いない。

「聖印騎士団の副団長様がこんなにも大勢で何のようですか?」

なるべく下手に出るように頑張ったが、険のある言い方になってしまった。思いの外、気が立っているらしい。

「そんな怖い声を出さなくて大丈夫だよ。ちょっとお願いに来ただけだから」

「初対面の相手にお願いだなんてどういう神経をしてるのかしら!聖印騎士団の品位の程が知れるわね!」

「マノン!お前!」

聖印騎士団の中の1人がマノンに対して声を荒げた。どうやら当代の勇者も既に聖印騎士団に取り込まれているらしい。そう言えば見たことのある顔がある。《烈火の聖印》を授かったやつだ。

「誰かと思ったらシュレンじゃないの。ヘタレが聖印を授かって異世界デビューとかテンプレ過ぎてマジ退屈……」

「おい、マノン!寝てんじゃねえ!」

「ハッ!退屈過ぎて寝ちゃったわ!」

「ハハハ!ウチのシュレンと随分と仲が良さそうじゃないか。つもる話もあるだろうが、そろそろ本題に入らさせてもらうよ」

エンゾはグッと背筋を伸ばして表情を変えた

「君達が手に入れた精霊石を我々に譲って欲しい」

「その見返りは?」

「ここに金貨が10枚ある」

頭に血が上って爆発しそうになるのを何とか抑える。まだ暴れる時じゃない。

「馬鹿にしているのか?」

「これでも誠意をみせているつもりなんだけどな。さっさと精霊石を渡したまえ。君達だって五体満足で明日を迎えたいだろう?」

エンゾの口角が醜く歪んだ。

「……エンゾ殿。これでは盗賊と同じですじゃ。聖印騎士団には誇りがないのですか?」

「確かジョスイといったかな?王宮魔術師くずれが聖印騎士団を語るんじゃない。我々の行いこそが正道なのだ。貴様等が精霊石を持っていたところで何になる?さっさと渡せばいいんだよ」

これは無理だな。何が無理だって?穏便に済ませるのがだ。

「マノン!」

「任せて! झरना大瀑布!」

マノンの詠唱が終わると同時に俺達の前に馬鹿みたいな水の壁が生まれてそのまま騎士団を飲み込んだ。
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