肛門ダンジョン〜超巨大モンスターの尻穴に挑む〜

フーツラ

文字の大きさ
1 / 23
初めてのダンジョン

はじまり

しおりを挟む
 ラムズ平原の入り口にある街、ラムズヘルムはその住民の半分以上が冒険者だと言われている。ラムズ平原に多数生息する超巨大モンスターを目当てに、世界中から集まって来ているのだ。

 昨日から世話になっている木賃宿の食堂に行くと、俺と同じような若い冒険者が目をギラギラさせながら朝食を口にかきこんでいた。

「よう、新入り! メシ食うだろ?」

 突然現れた宿の主人が朝から馬鹿みたいな大声を出す。

「くれ」

 主人はツカツカとやってきて俺が座ったテーブルにドンッ! と朝食の皿を置いた。

「ダンジョンに潜ると腹が減るからな! しっかり食うんだぞ!」

「たすかる」

 ダンジョン。

 それは超巨大モンスターの肛門の向こうに広がる空間のことだ。俺達冒険者はダンジョンに憧れる。何せ、普通のモンスターを倒しているよりも圧倒的に稼げるからだ。もちろんその分、危険も大きいが。

「ゴブリンダンジョンが休眠したそうだぞ」
「それはチャンスだな。今回は何日ぐらい潜れるんだ?」
「ギルドで聞くしかないな。この後行ってみよう」

 隣りのテーブルから実になる情報が聞こえてきた。

 チャンスだ。俺のような駆け出しには最適な超巨大ゴブリンゴブリンダンジョン。どうやらそこに入れるらしい。冒険者ギルドに行って情報を集めなければ。

 俺は競うように朝食を平らげ、席を立った。


 #


「くすぐるよー!! ゴブリンダンジョンの門を開くなんて俺っちにかかれば朝飯前っす!!」
「我が怪力の前に、ゴブリンダンジョンの門は無力なり!!」

 冒険者ギルドの前ではほぐし屋達が声を張り上げて客引きをしていた。ダンジョンに入るには超巨大モンスターの肛門を開かなければならない。肛門を弛めるにはそれぞれのモンスターの癖を見抜く、ある種の専門性が求められる。一介の冒険者が自力で肛門を開くのは効率が悪い。だから、ほぐし屋がいるのだ。

「そこのお兄さん! ゴブリンダンジョンを狙ってるっしょ? 俺っちを雇いなよ! 損はさせないっす!」

 ひょろっと細長い身体をしたほぐし屋が絡んできた。

「後でな」

 雑にあしらって冒険者ギルド──街の中央に聳え立つ──に入ると阿鼻叫喚の大騒ぎだった。

「買取りはこちらでーす!! ゴブリンダンジョンでとれた魔結晶はこちらで買取りまーす!! スキル入りは通常の10倍、いや、20倍出しますよー!!」
「ゴブリンダンジョンの情報を知りたい奴はこっちに来い! 俺が教えやる!! 俺の話を聞いておけば間違いないからな!! 死にたい奴は耳を塞いでどっかへ行っちまえ!!」

 もう祭りは始まっていたらしい。俺と見た目の変わらない男女──15、6歳だろう──が何十人もギルド職員に群がっていた。

「よし、お前ら! 死にたくなければ俺の話を聞け!」

 指南役らしい髭面の男ががなる。

「ゴブリンダンジョンが寝ているのは後10日余りだ! お前らがダンジョンに潜れるのはあと8日ぐらいだと思っておけ! 超巨大モンスターの眠りが浅くなるとダンジョンの危険度は跳ね上がるからな!」

 なるほど。初心者には役に立つ情報だ。

「ゴブリンダンジョンは臭いから、しっかり臭い対策をしろ! お勧めは香草で燻した布だ! それで顔を覆っていれば気にならないぞ!」

 臭い対策か。まぁ、当然といえば当然。ダンジョンとは超巨大モンスターの肛門の向こう側なのだ。臭うに違いない。

「ゴブリンダンジョンは少しするとゴブリンが出てくる! まぁ当たり前だな! 奴等は大したことない! 鉄の棒でぶん殴ったらおしまいよ。お前達、やれるよな?」

「当たり前だ!!」

 太々しい大男が拳を握りながら答える。大した自信だ。しかし、俺だってやってやる。

「そしてお目当ては魔結晶だ! 壁に埋まった魔結晶を取ってこい! もしスキル入りの魔結晶を見つけたら歓声を上げろ! 自分で使えばスキルを覚えられる! スキルのない冒険者なんて糞だからな!」

 みてろよ。俺はすぐにスキルを覚えてみせる。

「よーし、分かった奴等はラムズ平原へ走れ! ほぐし屋を雇うのを忘れるなよ! お前達のようなヘナチョコが自分で肛門を開けると思うな!!」

 ぉぉおおおお!!

 怒号と共に俺達は外に向かって走り始めた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

嵌められたオッサン冒険者、Sランクモンスター(幼体)に懐かれたので、その力で復讐しようと思います

ゆさま
ファンタジー
ベテランオッサン冒険者が、美少女パーティーにオヤジ狩りの標的にされてしまった。生死の境をさまよっていたら、Sランクモンスターに懐かれて……。 懐いたモンスターが成長し、美女に擬態できるようになって迫ってきます。どうするオッサン!?

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

ハズレスキル【地図化(マッピング)】で追放された俺、実は未踏破ダンジョンの隠し通路やギミックを全て見通せる世界で唯一の『攻略神』でした

夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティの荷物持ちだったユキナガは、戦闘に役立たない【地図化】スキルを理由に「無能」と罵られ、追放された。 しかし、孤独の中で己のスキルと向き合った彼は、その真価に覚醒する。彼の脳内に広がるのは、モンスター、トラップ、隠し通路に至るまで、ダンジョンの全てを完璧に映し出す三次元マップだった。これは最強の『攻略神』の眼だ――。 彼はその圧倒的な情報力を武器に、同じく不遇なスキルを持つ仲間たちの才能を見出し、不可能と言われたダンジョンを次々と制覇していく。知略と分析で全てを先読みし、完璧な指示で仲間を導く『指揮官』の成り上がり譚。 一方、彼を失った勇者パーティは迷走を始める……。爽快なダンジョン攻略とカタルシス溢れる英雄譚が、今、始まる!

オッサン齢50過ぎにしてダンジョンデビューする【なろう100万PV、カクヨム20万PV突破】

山親爺大将
ファンタジー
剣崎鉄也、4年前にダンジョンが現れた現代日本で暮らす53歳のおっさんだ。 失われた20年世代で職を転々とし今は介護職に就いている。 そんな彼が交通事故にあった。 ファンタジーの世界ならここで転生出来るのだろうが、現実はそんなに甘く無い。 「どうしたものかな」 入院先の個室のベッドの上で、俺は途方に暮れていた。 今回の事故で腕に怪我をしてしまい、元の仕事には戻れなかった。 たまたま保険で個室代も出るというので個室にしてもらったけど、たいして蓄えもなく、退院したらすぐにでも働かないとならない。 そんな俺は交通事故で死を覚悟した時にひとつ強烈に後悔をした事があった。 『こんな事ならダンジョンに潜っておけばよかった』 である。 50過ぎのオッサンが何を言ってると思うかもしれないが、その年代はちょうど中学生くらいにファンタジーが流行り、高校生くらいにRPGやライトノベルが流行った世代である。 ファンタジー系ヲタクの先駆者のような年代だ。 俺もそちら側の人間だった。 年齢で完全に諦めていたが、今回のことで自分がどれくらい未練があったか理解した。 「冒険者、いや、探索者っていうんだっけ、やってみるか」 これは体力も衰え、知力も怪しくなってきて、ついでに運にも見放されたオッサンが無い知恵絞ってなんとか探索者としてやっていく物語である。 注意事項 50過ぎのオッサンが子供ほどに歳の離れた女の子に惚れたり、悶々としたりするシーンが出てきます。 あらかじめご了承の上読み進めてください。 注意事項2 作者はメンタル豆腐なので、耐えられないと思った感想の場合はブロック、削除等をして見ないという行動を起こします。お気を悪くする方もおるかと思います。予め謝罪しておきます。 注意事項3 お話と表紙はなんの関係もありません。

処理中です...