肛門ダンジョン〜超巨大モンスターの尻穴に挑む〜

フーツラ

文字の大きさ
2 / 23
初めてのダンジョン

ゴブリンダンジョン

しおりを挟む
「これが超巨大ゴブリンゴブリンダンジョン……」

 ラムズ平原に横たわるそれは、呆れるほど大きなゴブリンだった。近づくにつれ、その山の様なサイズに圧倒される。

 さっきまで騒がしかった駆け出し冒険者達はその威容におされて、息を呑んでいた。

 そこへ突然、野太い声が上がる。

「はははっ! 腰抜けども! 何をビビってやがる! この最強ルーキー、アナプラ家の三男、ブジー様がゴブリンダンジョンなんて一発で制覇してやるぜ!!」

 あぁ。冒険者ギルドで目立っていた奴だ。ブジーって言うのか。厳つい巨漢の割に気の抜けた名前だ。

「うん? 何を見てやがる! 随分と目つきの悪い奴だな! 俺様に喧嘩を打っているのか?」

 はぁ。面倒な。こんなところで喧嘩なんて馬鹿らしい。

「いや、カッコいいと思って見ていただけだ。その立派な身体、羨ましい」

「お、おぅ。そうか。お前、なかなか見どころある奴だな。名前は何という?」

 ちょろい。見た目の通り、単純な奴らしい。俺が褒めると焦ったように語気を弱めた。

「ベンだ。最果ての村からきた」

「「「「……」」」」

 なんだ? 周囲が一斉に黙り込んだ。そしてヒソヒソと耳打ちしてやがる。

「……最果ての村」
「あの禁忌の村の……」
「……関わるなよ。アイツとは」

 全部聴こえているぞ。お前ら。俺の故郷に何か文句があるのか?

「「「ヒッ!!」」」

 睨みつけると周囲がまた黙り込んだ。全く、なんだって言うんだ。

「……ベンか。俺はブジーだ。よろしくな」

 そんな中、巨漢のブジーが恐る恐る手を出してきた。思ったより紳士的だな。俺もスッと手を出して握り返す。

「ブジー。よろしく頼む」

「……おうよ。任せとけ」

 ブジーから若干の怯えを感じたが、気のせいか? まぁいい。

「ブジー。さっさとゴブリンダンジョンへ行かないか?」

「ベン。俺様もちょうどそう思っていたところだ! 行こうぜ!!」

 開き直ったようなブジーが走り始めた。デカい癖に速いな。

「上等だ」

 まだ足を止めている駆け出しの集団を置いて、俺は走り出した。


 #


 ゴブリンダンジョンは地面にうつ伏せだ。脚の間を股間に向かって歩いていくと、人だかりが見えてくる。ダンジョンに挑む冒険者達だ。さっきまでの駆け出し達と違って落ち着いている。装備も使い込まれていて如何にもベテランという風情だ。

「よおおおし! 開けるぞおお!」

 ダンジョンの入り口──超巨大ゴブリンの肛門──に取り付いた男が大声を上げた。ダンジョンの門を開ける専門職、ほぐし屋だ。男は両手を肛門に突っ込んで集中する。

「はぁぁぁぁ、【怪力】【怪力】【怪力】!!」

 スキルの重ねがけだ! 父親がやっているのを見たことがある。体力を一気に消費するらしいが、効果は抜群。ほぐし屋の手はグイグイと肛門をこじ開け、人が通れるぐらいに拡張されて──。

「ほら、急げ!! 長くは保たんぞ!」
「よし、行くぞ!」
「おう!」
「やばい、急げ!」
「ギリギリだ!!」

 何人もの冒険者が次々と超巨大ゴブリンの肛門に飛び込んでいった。

「締まるぞおおお!」

 キュッ!!

 ガバガバに開いていた超巨大ゴブリンの肛門が一気に収縮する。タイミングを間違って肛門に挟まったら無事では済まないだろう。

「……どうした、ビビったのか? ベン」

「まさか。初めてのダンジョンを目の前に滾っているところだ」

「流石だぜ。じゃぁ、俺達も行くとしよう」

「あぁ。だが、ほぐし屋はどうする?」

 先程の【怪力】のほぐし屋は疲れ果てて地面に尻餅をついている。別のほぐし屋に頼まないと──

「そこで俺っちの出番すよ!」

 ──自信満々のヒョロ長い男が俄に現れた。こいつ、冒険者ギルドの前にもいたな。さっきのほぐし屋のような力強さは感じない。どちらかというと頼りない。

「お前に出来るのか?」

 ブジーも同じ印象を抱いたのだろう。不躾な質問を投げる。

「ははは! にーちゃん達、ダンジョンは初めてしょ? ほぐし屋にも色んなタイプがあるんすよ! 今回は特別に料金は後払いでいいっすよ!」

「いいのか? 戻ってくるとは限らないぞ」

「2人ともなかなか強そうだから大丈夫しょ! 流石にゴブリンダンジョンで死ぬことないっすよ! もし駄目なら俺っちの目が節穴だったってことで。さぁ、他の冒険者が来る前にやっちゃいましょう」

 ブジーと顔を見合わせる。どのみち、今ダンジョンに入ろうと思えばこのヒョロイほぐし屋に頼むしかないのだ。

「分かった。頼む」

「そうこなくっちゃね! ちなみにニーチャン達はダンジョンから出る時のことは考えてるんすか?」

「というと?」

「入る時と違って冒険者自身の力で無理矢理出てこれないこともないけど、もっと簡単に出る方法があるんすよ」

 そう言って小さな皮袋を俺とブジーに手渡した。

「ダンジョンから出る時はこの液体を頭からかぶるんす! そうすれば滑りが良くなるから簡単に肛門から出られるっす!」

 なるほど。そんなものもあるのか。無くてもなんとかなるらしいが、初めてのダンジョンだ。備えて損はない。

「これの料金もつけておいてくれ。戻ったらまとめて払う」

「よーし、話は決まったっすね! じゃ、早速ほぐすので! 俺っちが合図したら飛び込むんすよ!」

「分かった」
「おうよ!」

 ヒョロ長いほぐし屋がダンジョンの入り口に取り付いた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

嵌められたオッサン冒険者、Sランクモンスター(幼体)に懐かれたので、その力で復讐しようと思います

ゆさま
ファンタジー
ベテランオッサン冒険者が、美少女パーティーにオヤジ狩りの標的にされてしまった。生死の境をさまよっていたら、Sランクモンスターに懐かれて……。 懐いたモンスターが成長し、美女に擬態できるようになって迫ってきます。どうするオッサン!?

オッサン齢50過ぎにしてダンジョンデビューする【なろう100万PV、カクヨム20万PV突破】

山親爺大将
ファンタジー
剣崎鉄也、4年前にダンジョンが現れた現代日本で暮らす53歳のおっさんだ。 失われた20年世代で職を転々とし今は介護職に就いている。 そんな彼が交通事故にあった。 ファンタジーの世界ならここで転生出来るのだろうが、現実はそんなに甘く無い。 「どうしたものかな」 入院先の個室のベッドの上で、俺は途方に暮れていた。 今回の事故で腕に怪我をしてしまい、元の仕事には戻れなかった。 たまたま保険で個室代も出るというので個室にしてもらったけど、たいして蓄えもなく、退院したらすぐにでも働かないとならない。 そんな俺は交通事故で死を覚悟した時にひとつ強烈に後悔をした事があった。 『こんな事ならダンジョンに潜っておけばよかった』 である。 50過ぎのオッサンが何を言ってると思うかもしれないが、その年代はちょうど中学生くらいにファンタジーが流行り、高校生くらいにRPGやライトノベルが流行った世代である。 ファンタジー系ヲタクの先駆者のような年代だ。 俺もそちら側の人間だった。 年齢で完全に諦めていたが、今回のことで自分がどれくらい未練があったか理解した。 「冒険者、いや、探索者っていうんだっけ、やってみるか」 これは体力も衰え、知力も怪しくなってきて、ついでに運にも見放されたオッサンが無い知恵絞ってなんとか探索者としてやっていく物語である。 注意事項 50過ぎのオッサンが子供ほどに歳の離れた女の子に惚れたり、悶々としたりするシーンが出てきます。 あらかじめご了承の上読み進めてください。 注意事項2 作者はメンタル豆腐なので、耐えられないと思った感想の場合はブロック、削除等をして見ないという行動を起こします。お気を悪くする方もおるかと思います。予め謝罪しておきます。 注意事項3 お話と表紙はなんの関係もありません。

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

ハズレスキル【地図化(マッピング)】で追放された俺、実は未踏破ダンジョンの隠し通路やギミックを全て見通せる世界で唯一の『攻略神』でした

夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティの荷物持ちだったユキナガは、戦闘に役立たない【地図化】スキルを理由に「無能」と罵られ、追放された。 しかし、孤独の中で己のスキルと向き合った彼は、その真価に覚醒する。彼の脳内に広がるのは、モンスター、トラップ、隠し通路に至るまで、ダンジョンの全てを完璧に映し出す三次元マップだった。これは最強の『攻略神』の眼だ――。 彼はその圧倒的な情報力を武器に、同じく不遇なスキルを持つ仲間たちの才能を見出し、不可能と言われたダンジョンを次々と制覇していく。知略と分析で全てを先読みし、完璧な指示で仲間を導く『指揮官』の成り上がり譚。 一方、彼を失った勇者パーティは迷走を始める……。爽快なダンジョン攻略とカタルシス溢れる英雄譚が、今、始まる!

処理中です...