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赤い髪の女

魔道具屋にて

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「いやー、聞いたことないね。スキルを無効にするスキルなんてのは」

「……そうですか。ラムズヘルムにならあるかも? って聞いたもので……」

 魔道具屋の店主の言葉に赤い髪の女は項垂れた。歳は俺よりも少し上、18歳ぐらいだろう。顔は大人しそうなのに妙に露出の多い格好をしている。痴女か?

「悪いが他のお客さんもいるんでね」

 店主の言葉で後ろにいる俺の存在に気がついたようだ。飛び退くようにカウンターの前を俺に譲った。

「いらっしゃい。なんのようだい?」

「この魔結晶をスキルオーブにして欲しい」

 スキルの入った魔結晶をリュックから取り出してカウンターの上に置くと、店主は鋭い目つきになった。

「ちょっと見てもいいかい?」

「もちろんだ」

 店主は手袋をはめた手で慎重にスキル入りの魔結晶を取り、照明の魔道具で照らした。

「ふむ。珍しい光り方だね。鑑定しないと分からないけど、レアなスキルかもしれない」

「そいつは有難い。スキルオーブ化と鑑定で幾らだ」

「3万ギムでどうだい?」

 別の魔道具屋では4万ギムと言われたが、ここは随分と安いな。さっきはルーキーだと舐められていたようだ。

「安いな」

「見所のありそうな冒険者には安くしているのさ。どうする?」

「頼む。何日ぐらいかかる」

「この魔結晶は随分と魔素を溜め込んでるみたいだから結構かかるよ。余裕をみて5日は欲しい」

「分かった。料金は?」

「後払いでいいよ。今、引き替えの札を発行するからちょっと待ってね」

 店主はスキル入りの魔結晶を持って店の奥に引っ込んで行った。スキル入りの魔結晶を身体に取り込むとスキルを覚えることが出来る。ただ、そのままは駄目だ。魔結晶には人間の身体には毒となる魔素が含まれている。その魔素を抜いたものがスキルオーブと呼ばれる。

「あの!」

 赤髪の女が上目遣いでモジモジしながら声を上げた。この様子は間違いない──。

「この店の脇にちょうどいい路地があったぞ。トイレを探しているならそこですればいい」

「違います!」

「そんな格好をしているクセに恥ずかしがり屋か。小便ぐらいさっさとすればいいのに」

「違いますって!! それに、この格好には理由があるんです!」

 水着のような格好でプリプリと女は怒る。

「理由?」

「え、あ、いえ。なんでもないです……」

 女は焦った様子で縮こまった。

「で、何のようだ?」

「あの、さっきのスキル入りの魔結晶はやっぱりダンジョンで見つけたんですか?」

 なんだ。そんなことか。

「そうだ。ゴブリンダンジョンで見つけた」

「えっ! ゴブリンダンジョンでレアなスキル入りの魔結晶が取れるんですか?」

「たまたま運が良かったのかもしれない。ただ、今は立ち入り禁止になっている筈だ。寄生虫の駆除中だ」

「……そうですかぁ。ありがとうございました……」

 明らかにがっかりした様子の女は背中を丸めてとぼとぼと店から出て行った。そんなにスキル入りの魔結晶が欲しいのか。

「お待たせ。これが引き替えの札だよ」

 奥から戻ってきた店主が魔結晶の描かれた札を持ってきた。どうやら俺が渡した魔結晶のようだ。人が描いたとは思えないほど精巧だ。

「ははは! 驚いたようだね。これは魔道具で写したんだよ」

「そんな魔道具があるのか?」

「割と有名な魔道具だよ。この札があれば取り違えたりしないからね」

「なるほど」

「ところで君はまたダンジョンに行くのかい?」

「ああ。そのつもりだ。入れるダンジョンがあればな」

「ちょっと難易度高めだけど、超巨大オークオークダンジョンがそろそろ休眠に入るって聞いたよ。自信があるなら行ってみるといい」

 オークダンジョン。きっとオークが出てくるのだろうが、全然問題ないな。行ってみるか。

「スキルオーブが出来るまでの間に覗いてみる」

「また、スキル入りの魔結晶を見つけたらウチで頼むよ?」

「分かった」

 店主の笑顔に見送られ、俺は店を出た。オークダンジョンを目指して。
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