肛門ダンジョン〜超巨大モンスターの尻穴に挑む〜

フーツラ

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赤い髪の女

酒場

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「お、いらっしゃい。オークダンジョンはどうだった?」

 魔道具屋の店主は俺の顔を見るなりそう笑顔で話しかけてきた。

「かなりの稼がせてもらった。スキル入りの魔結晶は見つからなかったけどな」

「まぁ、そんな簡単に見つかってたらスキルの有り難みがなくなるってものさ。今日はスキルオーブの受け取りだろ? 交換用の札はあるかい?」

 予め用意しておいた札をカウンターに置くと、店主は手袋をした手でそれを取り、店の奥へ引っ込んだ。
 
 手持ち無沙汰になって店内を見渡すと様々な魔道具が綺麗に整頓して置かれている。この辺は店主の性格なのだろう。他の魔道具屋にはただモノが積み上げているだけのような所もあった。店内の様子からも、ここは丁寧な仕事が期待出来る。

「お待たせ」

 店主が大事そうに手に持っているのは青く輝く丸いオーブだった。魔素が抜けるとこんなにも綺麗になるのか。

「鑑定結果はこの封筒の中だよ」

 そう言って店主は封筒をカウンターに置いた。無言で手に取って中の紙をみる。ほう。こんなスキルもあるのか。

「なかなかレアなスキルだよ。貴族や騎士に売ればかなりの値になる筈だ。ウチに売ってくれるなら奮発するよ」

「いや、売らない。何せ初めてのスキルだからな。料金は3万ギムだったか」

「毎度アリ」

 金を渡し、店主からスキルオーブを受け取る。スキルオーブは冷んやりとして手になかなか馴染まない。中に篭っているスキルを考えると当然かも知れない。

「ひとつ聞いていいか?」

「なんだい?」

「オークダンジョンの入り口に笛を吹く童がいたんだ。ほぐし屋だと思うんだが、知っているか?」
 
「……それはほぐし屋じゃないよ」

「じゃ、あの童はなんだ?」

「君の見たのは肛門童子だよ。ダンジョンに現れる妖精の一種さ」

 肛門童子? そんな妖精がいるのか。

「もしかしたら君は有名な冒険者になるかもしれないね。肛門童子は見込みのある冒険者を見つけてはちょっかいを出したり応援をしたりするらしいから」

「たまたまだろ」

「そのたまたまが重要なのさ。君、名前は?」

「ベンだ」

「覚えておくよ」

 魔道具屋の主人は人を値踏みするような笑顔で俺を見送った。


#


「もう! ベン君遅いですよ!」

 ギルドの前で、ほとんど裸のような格好のビデールが手を振っている。その様子は人目を引くもので、若い男の冒険者達が釘付けになっていた。

「すまない。魔道具屋で時間を食った」

「許してあげます! さぁ、今日は飲んで飲んで飲みまくりましょうー」

 今日はオークダンジョンのお礼ということで、ビデールの奢りだ。1人では勇気がなくて入れなかった酒場に連れて行かれるらしい。

「今日行く酒場はですねー、上級の冒険者もやってくる人気の店なんです! もしかしたら、面白い話が聞けるかもです!」

 上級冒険者。ギルドでは冒険者を格付けしている。俺のような駆け出しは下級冒険者だ。ギルドでの魔結晶の買取額が増えるに連れて、中級、上級へとランクは上がっていく。一番上は特級と呼ばれるらしいが、ほとんどいないという話だ。

「あっ、見えてきましたよ! あの渋い店構えの酒場が今日の目当ての店、"ビッグホール"です!」

 店の中はまだ夕方にもかかわらず酒を飲み交わす人々で賑わっていた。どいつもこいつも癖のある風貌だ。この中に上級冒険者が……。

「いらっしゃい。カウンターしか空いてないけど、大丈夫?」

 髪を一つ縛りにしたぶっきらぼうな印象のウェイトレスが両手に木のジョッキを持ったまま言う。 

「大丈夫です!」

 ビデールは慣れた様子で店内を進み、俺に席を勧めた。

「嬉しそうだな」

「何せ、私は酒場の娘ですからね! マスター、エールを2つ!」

 あいよー。と、カウンターの中のスキンヘッドの男が返事をし、すぐにジョッキが2つ置かれた。

「それでは、カンパーイ!」

 ……苦い。なんだこの飲み物は。これが酒なのか?

「どうしたんですか? ベン君がそんな顔をするの初めて見ました」

「に、苦い」

「あはははっ! これが美味しいんじゃないですかー! ベン君、まだまだ子供ですねー」

「うるさい。マスター、何か食い物をくれ」

 あいよー。と返事のあった後、カウンターにはくたくたになるまで煮た肉が大きな皿にのってドンと置かれた。

「これこれ! 名物のオーク煮です! ほろほろになるまで煮たオーク肉にマスタードをつけると美味しいんです! そしてエールで流し込む! 最高!」

 初めての筈なのに随分と詳しいな。ビデールは大口を開けてオーク煮を頬張り、グイグイとジョッキを傾けた。俺も真似してみる。オーク肉の甘みとマスタードの辛味が口の中で混ざり、それをエールが包んで流す。これは、確かに癖になる。

「どうですか?」

「……うまい」

「でしょー!!」

 ビデールは得意げだ。ニコニコとこちらを観察する様にみている。俺に"うまい"と言わせたことが余程嬉しかったらしい。

「あ、そう言えばスキルオーブの鑑定結果、出たんですか?」

「ああ。その件でビデールに提案があったんだ」

 俺はリュックからスキルオーブの入った袋を取り出してカウンターに置いた。ビデールは不思議そうにそれを見つめる。

「このスキルオーブ、ビデールが使ってみないか?」
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