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新しいクラスメイト

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学院を歩いていると、やたらと視線を感じる。私の美貌はいつものことなのに、何かしら?

 少し気になって耳をそば立てると、どうも婚約破棄のことを噂しているみたい。エドワードとレミリア嬢も同じ魔法学院に通っているから、話が回ったのね。

「はぁ」

 人間なんて下世話なものね。聞くに耐えないわ。

 自分の周りに消音の魔法をかけると、静寂に包まれた。

「そもそもエドワードなんて私には不釣り合いだったのよ。少し顔がいいだけ。さっさと別れて正解だったわ」

 私の独り言は魔法に吸収される。

 高度な魔力操作を要求される消音の魔法を私の年齢で使える者はこの国にはいない。

 ちょっとした優越感に浸りながら、教室に入るとまたもや様子が変だ。まだ私の婚約破棄の噂を……?

 席に着いてしばらくすると、担任教師と見慣れない男の子が教室に入ってきた。高等部に来るからには15歳以上なのだろうけど、随分と幼くみえる。

 担任教師が促すと、男の子は教壇の前に立った。

 つまり、新しいクラスメイトってことね。自己紹介を始めたみたい。名前ぐらい聞いておこうかしら?

 私は消音の魔法を解除する。

「……したイブラム・ハインリッヒです。よろしくお願いします」

 イブラム? 変わった名前だわ。肌も褐色だし遠方の出身かしら? 辺境の田舎貴族かもしれないわね。

 担任はイブラムに私の横の空席に座るように指示した。小柄なイブラムはニコニコと愛想よく教室を歩く。

「イブラム・ハインリッヒです。よろしく」

「アンナよ」

 少し驚いたような顔をする。私の美貌にたじろいだようね。

「そんなに緊張しなくていいのよ。ここは学舎なのだから、一緒に知識を深め、素晴らしい魔法使いを目指しましょう」

「あっ、はい! よろしくお願いします」

 元気な子ね。イブラム。嫌いじゃないわ。

「イブラムは何系の魔法が得意なの?」

「……ぼ、僕は実は魔法が全然で」

 謙虚ね。でも、膨大な魔力をもっていることはバレてますけど? 私が魔力を見えることは知らないだろうから無理もないけど。

「ふーん。手の内はさらさないってことね」

「い、いえ! 本当に魔力の操作が苦手で! だからこの学院に──」

「授業が始まるわ」

「……はい」

 しゅんと縮こまるイブラム。可愛い……。ちょっと意地悪したくなる。

 少しだけ、学院生活が楽しくなりそうね。
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