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魔力操作
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「アンナさん! どうしよう! 右手から魔力が止まらない!!」
魔法陣の授業。イブラムは私の気を引くためにわざと魔力操作が拙いフリをして慌てる。額に汗までかいて、芸が細かいわね。
「イブラム。あなたは魔力が桁外れに多いんだから、少しでも魔力操作を誤れば今みたいになるのよ」
「わわわっ! 暴発しちゃう!!」
「仕方ないわね。今回はサービスよ」
私はイブラムの側により、魔法陣に魔力を注ぐ右手にそっと触れる。そして干渉した。
「あっ、止まった……」
イブラムの手から魔力の流れが止まる。そして魔法陣の上に光の球が現れた。灯りの魔法完成。
「イブラム。今の感覚を忘れないでね。すっと管を絞る感じよ」
「は、はい! ありがとうございます!」
くうぅぅ。可愛い……。イブラムの策略に嵌められている……。
「アンナさんが書いた魔法陣、複雑ですね」
イブラムが私の魔法陣を覗き込む。
「あら? そう? これぐらい簡単でしょ」
「これも灯りの魔法陣なんですか?」
「そうよ。ちょっと見た目は工夫しているけど」
机の上の羊皮紙に書いた魔法陣の端に指を乗せる。そして細く細く滑らかに魔力を注いだ。すっと魔法陣が輝く。そして──。
「凄い……」
イブラムは魔法陣から飛び立つ光の蝶を見て感嘆の声を上げた。教室の中を優雅に羽ばたく様子に、他のクラスメイト達も見惚れている。
パチリ。と指を鳴らして魔力を霧散させると、蝶は光の粉になって宙に溶けていった。
イブラムが一人拍手をしている。担任教師や他のクラスメイトは悔しそうな表情だ。何故かしら?
「イブラムもこれぐらい出来るようにならないと。そうね。遠征までには」
魔法学院の高等部では卒業前に、王都から離れた魔の森への遠征が行われる。遠征中は男女がペアになって課題に挑戦することになっている。
国を守る魔法使いとして覚悟を求めるとともに、貴族同士が将来の相手を見つけるイベントでもある。
「え、遠征って男女のペアで挑戦するんですよね……? 碌に魔力を操作出来ない僕と組んでくれる人なんているかなぁ……」
あらあら。婉曲なお誘いね。眉間に皺を寄せて困ったフリをしている。
「イブラム。女性を誘う時ははっきり言いなさい」
「えっ! なんの話ですか?」
「私とペアを組みたいんでしょ? 今なら考えてあげるわよ」
「本当ですか!?」
イブラムの表情がパァっと明るくなる。うぅ……。可愛い……。
「仮よ! 仮! 他にいい人からお誘いがあれば分からないわ」
「……はい」
そのシュンとした顔に、私の心は鷲掴みにされるのだった。
魔法陣の授業。イブラムは私の気を引くためにわざと魔力操作が拙いフリをして慌てる。額に汗までかいて、芸が細かいわね。
「イブラム。あなたは魔力が桁外れに多いんだから、少しでも魔力操作を誤れば今みたいになるのよ」
「わわわっ! 暴発しちゃう!!」
「仕方ないわね。今回はサービスよ」
私はイブラムの側により、魔法陣に魔力を注ぐ右手にそっと触れる。そして干渉した。
「あっ、止まった……」
イブラムの手から魔力の流れが止まる。そして魔法陣の上に光の球が現れた。灯りの魔法完成。
「イブラム。今の感覚を忘れないでね。すっと管を絞る感じよ」
「は、はい! ありがとうございます!」
くうぅぅ。可愛い……。イブラムの策略に嵌められている……。
「アンナさんが書いた魔法陣、複雑ですね」
イブラムが私の魔法陣を覗き込む。
「あら? そう? これぐらい簡単でしょ」
「これも灯りの魔法陣なんですか?」
「そうよ。ちょっと見た目は工夫しているけど」
机の上の羊皮紙に書いた魔法陣の端に指を乗せる。そして細く細く滑らかに魔力を注いだ。すっと魔法陣が輝く。そして──。
「凄い……」
イブラムは魔法陣から飛び立つ光の蝶を見て感嘆の声を上げた。教室の中を優雅に羽ばたく様子に、他のクラスメイト達も見惚れている。
パチリ。と指を鳴らして魔力を霧散させると、蝶は光の粉になって宙に溶けていった。
イブラムが一人拍手をしている。担任教師や他のクラスメイトは悔しそうな表情だ。何故かしら?
「イブラムもこれぐらい出来るようにならないと。そうね。遠征までには」
魔法学院の高等部では卒業前に、王都から離れた魔の森への遠征が行われる。遠征中は男女がペアになって課題に挑戦することになっている。
国を守る魔法使いとして覚悟を求めるとともに、貴族同士が将来の相手を見つけるイベントでもある。
「え、遠征って男女のペアで挑戦するんですよね……? 碌に魔力を操作出来ない僕と組んでくれる人なんているかなぁ……」
あらあら。婉曲なお誘いね。眉間に皺を寄せて困ったフリをしている。
「イブラム。女性を誘う時ははっきり言いなさい」
「えっ! なんの話ですか?」
「私とペアを組みたいんでしょ? 今なら考えてあげるわよ」
「本当ですか!?」
イブラムの表情がパァっと明るくなる。うぅ……。可愛い……。
「仮よ! 仮! 他にいい人からお誘いがあれば分からないわ」
「……はい」
そのシュンとした顔に、私の心は鷲掴みにされるのだった。
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