勘違い令嬢に婚約破棄は通用しない!

フーツラ

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遠征

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イブラムの狙い通り、魔法学院の遠征には私とイブラムがペアを組むことになった。高等部で最も優秀な私に他の誰からも誘いがなかったのはきっと、イブラムが裏で手を回したからでしょう……。

「イブラム。気をつけなさい。雑魚モンスターしか出ないとはいえ、ここは魔の森」

「はい! アンナさん!」

 あっ……。抱き締めそうになるのを必死に我慢する。クリクリとした瞳でこちらを見つめる度に疼く──。

「アンナさん! モンスター!」

 暗い森の中。灯りの魔法がモンスターの姿を照らした。

「さようなら」

 ザシュ! っと瞬時に放った魔法の矢に射抜かれ、フォレストウルフがパタンと倒れる。

「イブラム。尻尾を」

「はい!」

 パタパタと走り、イブラムがフォレストウルフの体にナイフを差し入れ、尻尾を切り取る。

 討伐対象一体クリア。

 王立魔法学院の遠征は実戦を重視する。

 魔の森で一晩過ごし、より多くより強力なモンスターを倒したペアが優勝となるのだ。

「次はイブラムがやるのよ?」

「はい!」

 イブラムは私と一緒にずっと魔力操作の修行をしていた。その身に宿る途方もない魔力を制御するために。てっきり私の気を引くための演技だと思っていたけど、イブラムは本当に魔力操作が苦手だったのだ……。

「来るわ……」

 イブラムの右手に魔力が集まり、ビリビリと空気が震え出す。それと同時に茂みから飛び出してきたのは魔の森では強敵に当たるマッドベア。

「いけぇぇッ!」

 ──ドバンッ! と空気が引き裂かれた。そして胸元から煙を上げるマッドベア。

 膨大な魔力を収束させ、雷として打ち出す魔法は私とイブラムが共同で開発したオリジナル。

「や、やった!!」

 最初から大物を倒して飛び上がって喜ぶイブラム。私の中の保護欲を刺激するつもりね……。

「おめでとう、イブラム」

 冷静を装ってなるべく低い声を出す。

「はい! アンナさんのお陰です!」

 灯りの魔法が照らすイブラムの顔は紅潮していて、私にはとても艶めかしいものに見えた……。
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