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43話 秘めた力

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 青い光は収束し、久保の身体の表面をユラユラと炎の様に揺れながら覆っていた。力が漲っているのが分かる。

 ギガースの顔付きが変わった。やばいやつが来た! と。

 久保が腰の短剣を抜いた。

 巨人は睨まれて動かない。動けない。

 1、2秒の間の静寂。それを破る踏み込み。

 ダンッ! とボス部屋に鋭い音が響き、久保の身体が飛び出した。

 ──斬ッ! と刃が振るわれ、ギガースと久保が交錯した。

 ぼとりと落ちる右腕。巨人の口から悲鳴が漏れる。

 噴き上がる血飛沫。久保はゆっくりと振り返り、また飛ぶ。

 青白い閃光が空間を横切り、ギガースの左腕は容赦なく切り落とされた。

 両腕が亡くなり巨人の顔に絶望が浮かぶと思われたが……。

「ガァァァァァアァァァッッ!!」

 空気が震えると、ギガースの身体から腕が生えた。

 それだけではない。地面に落ちた二本の腕がボコボコと膨れ上がったと思うと、そのまま人の形となる。

「なんだ……!?」

「八幡君は分裂した方のギガースをお願いします!」

 ギガースが分裂……!? そんな話、聞いたことないぞ!

「……分かった!」

 とにかくやるしかない。

 ミニギガースに金属バットを振るうと、呆気なく倒れた。こいつら、まだうまく動けないのか? やるなら今か……!!

「オラッ!!」

 ぼんやりと立つもう一体のミニギガースを殴り飛ばす。

 残るは本体のみ。

 久保が飛び回りながら斬りつけているが、腕を落とした時のような勢いはない。時間制限アリのスキルなのか? 身体を覆う光は見る見る内に弱まっていく。

 そろそろ危ない。

 俺は左手の角野さんを強く意識する。そして──。

「ステータス・スワップ!!」

 【 名 前 】 八幡タケシ
 【 年 齢 】 18
 【 レベル 】 10
 【 魔 力 】 30
 【 攻撃力 】 197348
 【 防御力 】 30
 【 俊敏性 】 36
 【 魅 力 】 5
 【 スキル 】 配信命、モフモフ化、女人禁制
※【 H P 】 30

「死ねぇぇェェェ!!」

 久保が飛び退き、空いたスペースに踏み込む。見開かれる紅い瞳。

 もし、今攻撃を喰らえば俺は死ぬだろう。しかし、もう金属バットは止まらない。あと1ミリ。触れた瞬間、俺達の勝ちは確定する。

 コマ送りのようにゆっくりと背景は流れる。そして──。

 パァァァァァンンンンン……!!

 ギガースの体は弾け飛ぶ。

 体液が霧となり、ゆっくりと地面に降り始める。

 勝った。俺達は勝った。

 新宿ダンジョン十五階のボスに。

 苦しそうな顔をした久保が歩いてくる。

「八幡君……」

「大丈夫か? 随分と辛そうだぞ」

「そうだね。ちょっとスキルを使い過ぎたみたい」

 久保の身体からはもうすっかり青い光は消え失せていた。

 フッと何かが晴れるような感覚。

「八幡君。ごめん……」

「何故謝る?」

 返答はない。久保は走り出す。

「おい。何故逃げる」

 おかしい。変だ。

 急に焦点が合うような感覚。

 辺りを見渡すと、馬鹿みたいに大きな血溜まりと魔石。そして──。

「グミ! マリナ!」

 二人が地面に横たわっている。意識はなく、血を流していた。

「なんでだ……!? 何があったんだよ……!!」


『何やってんだよ! 早く治療して!』
『死ぬ死ぬマン! 早くして!!』
『回復アイテムないの?』
『ダンジョンの入り口で回復アイテム売ってるから!』
『さっさと入り口に戻って!!』
『タケシちゃん! 急いで!!』
『早く! 早く!!』


 分からない……。何があったんだよ……!?

 俺はグミの身体に触れようとして、雷に打たれた。
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