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ダンジョン

五条美里の冒険

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「やぁっ!」

【刺突】のスキルを発動してオークの喉にレイピアを突き入れると、剣先はあっさりと首を貫通した。素早くレイピアを戻し、バックステップする。

私と入れ替わるようにタンク役の窪田君がラージシールドを構える。オークは生命力の強いモンスターだ。窪田君に油断はない。

オークの首から血が吹き出し、巨体が崩れ落ち、ややあってから煙になって魔石を残した。

「五条さん、ナイス!」

「美里やるー!」

窪田君と桜が囃し立てる。なんだか気恥ずかしい。2人がお膳立てしてくれたから、私は【刺突】を決められたのだ。決して1人の力ではない。


私達は今、第6階層に挑んでいた。先週末に第5階層をクリアし、それぞれがスキルオーブでスキルを覚えた。私は【刺突】で桜は【必中】、そして窪田君は【屈強】。

元々、私達のパーティーは窪田君がタンクで私が遊撃、桜が後衛という役割をこなしていたのでスキルオーブの選択で揉めることはなかった。それぞれの特性にあったスキルを仲良く分け合った形だ。

私が必ずパーティーでダンジョンに臨むようになったのは第2階層で死にかけてからだ。それまでは加護の力を過信してダンジョンを甘く考えていた。1人でも平気だと思っていたし、予備の武器なんて発想すらなかった。つまり、愚か者だったのだ。

ふと、あの男のことが脳裏に浮かんだ。最近はポーションの買取依頼だったり、意味の分からない呼び出しとかもない。

「美里?」

「ごめんごめん。ちょっとスキルについて考えてた」

「スキルって凄いよね。20メートル以内だと絶対に的を外さないし」

桜が短弓の弦を軽く引きながら言った。

「オークに殴られてもちょっと痛いぐらいで済むし!」

窪田君が何故か照れ臭そうだ。窪田君はいかにも気が優しくて力持ちといった見た目をしていて、まさにタンクだ。

「美里、今日はこれくらいにしとく?」

「私、そんなに疲れてるように見える?」

「そんなこともないけど、明らかに美里だけスキルの使用回数も多いから、、」

「へーきへーき。私、こー見えても加護持ちなんだから!」

「あー、そうだったねー!インドア系の神様だけど」

「もう!絶対試験勉強手伝わないからね!」

「ちょっと2人とも!ここはダンジョンだからね!」

窪田君が冗談っぽく諫めた。

「「はーい、ごめんなさい」」

このパーティーでダンジョンに挑むのはとても楽しい。まだまだ先に進める気がする。
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