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ダンジョン

誓い

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第8階層までの道のりは非常に容易かった。第6、7階層はオークに【変身】していればモンスターから襲われることはないし、エクスプローラーに遭遇した場合はさっさと逃げた。

第8階層から出現するモンスターはリザードマン。戦った印象はとにかく硬い。下手な斬撃はその硬い皮で逸らされる。真っ向からやり合う場合、業物の剣を手に入れるまでは苦労しそうだ。

もちろん俺が真っ向からやり合うことなどない。俺は神に誓って正々堂々とは闘わない。俺には【変身】がある。様々な性悪ムーブが可能なのだ。そう、このように。

「ゲコゲコゲコッ!」

落とし穴に落ちたリザードマンが喚いている。多分、助けてくれ!なんてことを言っているのだろう。俺のことを仲間だと思っているのだ。たとえ俺がリザードマンだったとしても、落とし穴に落ちるような間抜けな奴は捨て置くがね。

俺はしゃがんでウロコに覆われた手を差し伸べる。リザードマンの表情がサッと緩んだ。

ここだ!

俺は【変身】を解いて人間の姿に戻る。リザードマンの表情がくるりと変わって困惑が広がる。そして気付くのだ!人間にハメられたと!

「バカめ!」

俺は冒険野郎で購入したばかりのスキル【土生成】でリザードマンを生き埋めにした。

3分ほど経つと地面に魔石とリザードマンの結石が転がった。掘り起こす必要がなくてホッとした。

リザードマンの結石は香水の材料として高値で取り引きされるレアドロップだ。デカイものになると100万近い値がつくらしい。

もっとも、この"即身リザード仏"作戦には【土生成】と【土操作】の2つのスキルが必要だったので既に2000万投資している。利益が出るのは当分先だ。

また、おまけと言っては何だが、【土生成】と【土操作】の2つを組み合わせると土の塊を弾丸のように射出することが出来るようになった。こっちの世界でいう魔法だ。俺の場合、この程度のスキルならばいくら使っても消耗しないので非常に使い勝手がいい。目潰しは性悪ムーブの基本だ。

「さて、仕事仕事」

俺は周囲に気配がないことを確認してからリザードマンに【変身】する。そして一体でうろついているリザードマンを探して即身仏に仕立て上げるのだ。

さっきのリザードマンは手を振りながらゲコゲコゲコ話しかけると真っ直ぐ走ってきて、綺麗に落とし穴に落ちてくれた。とても良い絵だったので明日は三脚を用意して動画に収める予定だ。これを観ながら飲む酒は美味い筈。

俺は嬉々として探索を続けた。
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