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ダンジョン

とりもどす

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ここは第10階層。もうすぐフロアボスの部屋だ。ある程度のモンスターでなければ三木の加護の力は測れない。フロアボスのオークジェネラルを三木にぶつけてどうなるか。俺の考えが正しければ、三木の羞恥心を取り戻す旅はここで終わる筈だ。

「おい、三木。何をやっている?」

ごそごそとマジックポーチから何かを取り出す三木を咎める。

「いえ、根岸さんに全て任せっきりってわけにはいかないので、望月さんと一緒に考えたんですよ。この鼻フックを付けた状態で、、」

「馬鹿野郎!そういうことじゃないんだよ!」

「ひっ!ごめんなさい」

三木が縮こまる。

「望月、お前もだ!無駄に頭を使うな!」

「なんだと!二人で一生懸命考えたんだぞ!」

「望月。お前の加護の力は素晴らしい。そちらで貢献してもらう」

「おお、そうか!わかった!」

ちょろい。

しかし、望月の加護の力が素晴らしいのは本当だ。望月は"騎乗の神様の加護"を持つ。跨ってしまえば何でも乗りこなして力を引き出す騎乗の加護の力と【テイム】のスキルでトップエクスプローラーに登りつめた。こいつが"日本昔ばなし"と呼ばれているのは富士ダンジョンで龍に跨って飛ぶ動画がYouTobeに投稿されたことがきっかけだ。公表はしていないが、召喚オーブも複数持っている。

「さあ、いくぞ」

二人は黙って頷いた。


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大きな魔法陣が地面に描かれた。もうすぐオークジェネラルが現れる。

「三木、盾は出せるか?」

三木が目を瞑って辛そうな表情をする。

「だ、駄目です。出ません」

「わかった。ならば、今すぐ四つん這いになれ」

「えっ、四つん這いですか?」

「四つん這いになるんだよ。早くしろ」

戸惑いながらも三木は四つん這いになる。

「ブヒヒイイイイィ!」

オークジェネラルが現れて雄叫びを上げた。

「望月!三木に跨れ!」

「なんだと!」

望月が目を剥く。

「お前の加護はなんだ!お前も加護を失いたいのか!?」

望月は少し戸惑いながらも、自分の刻印を触ってから三木に跨った。するとどうだ。俺の前に薄っすらと透明な盾のようなものが現れた。

「盾がでた!」

三木の声に反応したオークジェネラルがハルバードを振るうが盾に阻まれる。しかし、まだまだ盾は薄く頼りない。

「三木!カメラを回すぞ!落武者チャンネルでライブ配信だ!」

用意しておいた機材を素早くマジックポーチから出して設置する。ナウオンエアー。

「根岸さん、ちょっと待ってください!流石にそれは」

どんどん盾が厚くなり、その輝きがましていく。

「さて、何万人がお前の痴態をみることになるんだろうな!」

オークジェネラルがハルバードを三木に振り下ろすが全く届くことなく盾に弾き返される。旅のついでだ。もう少し燃料を投下しよう。俺はマジックポーチからフリップを取り出す。

「三木、この漢字を正しく読んでみろ!」

「えっ、"しゅっせいりつ"でしょ」

「ははは!出生率しゅっしょうりつだ!何万人もの前で間違える気分はどうだ?」

「……」

「三木。お前、意外とものを知らないんだな」

望月の言葉がダメ押しとなり、羞恥の盾は完成したのだった。
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