性悪ムーブで神様を喜ばせろ‼︎ 〜見返りのレアドロップで現代最強探検者に〜

フーツラ

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異世界

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「………ー」

「……ロー」

「サブロー」

すぐそこから俺を呼ぶ声がする。目を開けると黛の顔があった。慎重に息を吸って吐く。

「空気はあるみたいだな」

「綺麗な空気」

「そうだな。ここは森か」

「たぶん」

俺と黛はまだ葛籠の中だが、誰かが蓋を開けたようだ。見上げると空は樹々に覆われ、隙間から光が差し込んでいる。中へ視線を戻すと、黛が俺の服をぎゅっと握っていた。まあ、異世界転移だ。緊張して当然だろう。

「異世界転移、成功だな」

「サブロー、おめでとう」

「おめでとうじゃないだろ!」

エジンの顔が視界に飛び込んできた。近くにいたのだろう。声には怒気が混じっている。

「黛、さっそく第一異世界人だ。挨拶しろ」

「はじめまして。地球からきました」

「お前等、ふざけるなよ!見てみろ、この惨状を」

葛籠から身体を起こして見渡すと、ありとあらゆるモノが周囲にばら撒かれている。

「エジン、お前片付け出来ないタイプか?」

少し離れた所で三木と望月が失笑している。

「根岸、説明しろ!なんでお前達がここにいる?」

「鈍いな。この【転移】の葛籠は2つでセットの魔導具だ」

「なんだと!」

「一つは俺の所、もう一つはエジン、お前のところ。予想通り、マジックポーチに入れてくれていたようだな」

「…」

「この葛籠は双方向に【転移】できる魔導具なんだよ。マジックポーチに人間は入れられないからな。俺達が転移してきたタイミングで破けてしまったんだろ」

「貴様、異世界にタダ乗りしたのか!俺達がどんな思いで新宿ダンジョンを攻略したと思っているんだ!」

エジンが凄む。

「おい、三木。どんな思いだった?」

傍観者を決め込んでいた三木に話を振る。

「え、私ですか?あの、凄く恥ずかしかったです」

三木は"羞恥の神様の加護"を持つ。恥ずかしい気持ちが強い程、味方に強力な盾が作られる。新宿ダンジョン攻略チーム、守りの要だ。

「凄く恥ずかしかったそうだぞ。エジン」

「くっ」

エジンは言葉を失って視線を逸らした。

「エジン、もうやめておけ。相手が悪い。口では敵いっこない」

望月がエジンに寄ってきて窘める。

「流石は望月だ。よく理解している」

「おお!そうだろ!」

跨ればなんでも乗りこなして力を引き出す"騎乗の神様の加護"を持つ望月。新宿ダンジョンの攻略では三木に跨ってその力と羞恥心を引き出した。

新宿ダンジョンの攻略チームは三木と望月の守りと、"剣の神様の加護"を持つエジンの攻めで成立していた。サポートメンバーも2名ほどいた筈だが、どこにも見当たらない。

「三木、異世界には3人で来たのか?」

「そうです。残りの二人は新宿ダンジョン最下層の転移石の前で待機しています。我々の役割はこの異世界のあらゆるもののサンプルを採取して地球に戻り、向こうの二人に渡すことなんです」

「そんなに簡単に戻れるのか?」

「一度ダンジョンをクリアしてしまえば簡単ですよ。ダンジョンの最下層には転移石が2つあるんです。一つはダンジョンの入り口と繋がっているもの。もう一つは異世界と繋がっているもの。これはこちらの世界のダンジョンでも同じなんです」

「つまりお前達は新宿ダンジョンと対になっているこちらのダンジョンの入り口にさえ行けば、地球に戻れるということか?」

「その通りです」

そう言って三木は森の中に出来た獣道をみた。きっとあの先にこの世界のダンジョンがあるのだろう。

「残念だったな、根岸!新宿ダンジョンを攻略していないお前達はこちらのダンジョンを攻略してからじゃないと地球には戻れないってことだ!」

エジンは得意げに言うが、もう【転移】の葛籠のことを忘れたのだろうか。

「なるほど、よく分かった。一つ取引をしないか?」

俺の言葉にエジン達3人は露骨に身構えるのだった。
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