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異世界

森にて

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黛が大鎌を振るうと死体がうまれる。

おかしな表現だが、実際そうなのだ。俺がモンスターに気付くのは首を刈られた後。森の中からポンポンとテンポよく死体が湧き出てきて、積み重ねられていく。不思議な光景だ。

ダンジョンと違い、ここではモンスターの死体が煙になって消えたりはしない。だからリリパット達がせっせと死体から魔石を取り出し、皮を剥いで解体している。

その臭いはなかなかのもので、さらにモンスターを呼び寄せるのだろう。死体の山は加速度的に大きくなり、リリパット達の顔も疲労で土気色だ。

「黛、そろそろじゃないか?」

「……足りない」

そう言いながらリリパットに一瞥をくれる。そして、案の定の五体投地。未だにリリパット達は黛を畏怖している。

"顔を上げろ。もう必要なものはないな?"

リリパット達が頷くのを確認し、死体の山の下に大穴を掘り、土を被せて固める。一瞬で消えた死体について何やら言いたそうな視線を感じるが捨て置くとしよう。

「魔石はもう充分らしい。帰るぞ」

「まだ」

「もう充分刈っただろう?」

「違う。くる」

何がだ?

そう口にする間もなく身体に衝撃が走った。何度も不可視の攻撃にさらされて意識が揺れる。

攻撃の切れ目で周囲を確認するともう黛の姿はない。襲撃者の姿も見えないが、大体の方向は察しがついた。

思いっきりやっても問題ないな。お返しだ。

【鉄生成】【鉄操作】【電気生成】【電気操作】【磁界生成】【磁界操作】【念動】【加重】【加速】

「消し飛べ!!」

バリバリと空気を引き裂く音の後、森に道が出来た。リリパット達が耳を塞いだまま地面にひっくり返っている。少しやり過ぎた。

しかし、手応えが薄かった。外したか?

そう思っていると視界の先、新しく出来た道の端でもぞもぞと動く影が二つある。

近づいていくとそれはハッキリと人だと分かる。リリパットとは違い人間と同じサイズ。しかしレベッカ達とも何かが違う。

2人は男と女のようで、ようやっと立ち上がってこちらに視線を向けている。男の方からは敵意を感じるな。

「黛」

「かくほー」

気の抜けた声と同時に大鎌が男の首筋にピタリと添えられた。一瞬抵抗する素振りを見せたが、首に血が滲む感覚で諦めたのだろう。男はゆっくりと両手をあげた。

今日はついている。エルフゲットだ。
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