性悪ムーブで神様を喜ばせろ‼︎ 〜見返りのレアドロップで現代最強探検者に〜

フーツラ

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異世界

一撃

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「いたたたた。振動が足に響きますねぇ」

足を痛めた富沢さんが座り込み、顔を顰めながら言った。私達のいるコクピットはロボット?の胸の辺りにあり、随分と広い。

「自業自得っす!自分の体重考えてください!」

「富沢は馬鹿だな!!」

2人の言う通りだ。富沢さんの体型で20メートルの高さから飛び降りるなんて自殺行為。いくら加護持ちだからといっても油断し過ぎだ。

「ボス、ポーションはありませんか?」

「馬鹿にやるポーションはない」

「よよよ。厳しい」

そう言いながら、自分のマジックポーチからポーションを取り出し、足にふりかけている。一連のやり取りを見ていると、富沢さんと根岸さんの関係性が分かる。ちょっと羨ましい。

「根岸!もっと速く動かせないのか!?」

【念動】でロボット?を操作する根岸さんを望月さんが煽った。

「ふん。舌を噛むなよ」

ロボット?が徐々に加速し、走り始める。

「おおお!速い!凄い!もっとだ!!」

「ちょっと、パイセン!酔うからやめて下さい!望月さんも黙って!!」

「……ちょっと気持ち悪いです」

「おい五条。吐くなよ。【統計】眼鏡で前方位1キロ以内にいる人間の数を測ってくれ」

「……うぷ。えっ、あっ、はい」

根岸さんの指示に五条さんが慌てて眼鏡をかけた。

「……うぷ。1キロ以内には、人間は、いません」

「2キロ以内ならどうだ」

「……うぷ。120人です」

まだ肉眼では見えないけれど、飛行船はもうすぐそこまで来ているようだ。想定よりも大分はやい。

帝都から充分に離れた辺りで、ロボット?は歩みを止めた。五条さんはギリギリ、大丈夫だった。


#


どれだけ待っただろう。遠くに見えた点が徐々に大きくなり、その全容が視界に入ると圧倒された。

日本で見た飛行機よりも遥かに大きな飛行船に言葉を失う。

「……パイセン、あの飛行船。デカくないですか?なんか光ってますし」

「飛行船の周囲で光っているのが結界だろう。良いマトだな」

こちらに近づくにつれて、飛行船の速度はゆっくりになった。こちらの様子を伺っているのだろう。

「フィロメオ。軽く威嚇してもいいか?」

「もちろんです。皇帝として許可します」

私の合図をキッカケにコクピットが大きく開き、ロボット?が両腕を前に突き出した。

「……いくぞ」

根岸さんがロボット?と同じように両腕を前に突き出す。

「消し飛べ」

大気が震え、悲鳴を上げた。

認識出来ない何かが飛行船に向かって進み、幾重にも重なっていた結界を破る。

飛行船が沈む。

それは私の想像の中だけのことだった。実際はその結界を破っただけ。不可視の一撃は飛行船本体を掠めていってしまった。

「……ほほほ。お優しいことで」

「威嚇だと言ったろ。それに撮影中だからな。殺生はなしだ」

根岸さんが睨みを聴かせていると、飛行船はゆっくりと旋回を始めた。

「おお!飛行船が逃げていくっす!!」

「なんだ、もうおしまいか!つまらんな!!」

イシャーン王国の飛行船は来た時の何倍もの速度で離れて行き、やがて完全に見えなくなった。
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