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異世界

神の祝福

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「パイセン、お久しぶりっす!」

「……根岸さん、お久しぶりです」

和久津と五条が俺の座るファミレス席にやって来た。

「呼び出して悪かったな」

「そんなことないっす」

2人の手には指輪が光る。

「もう籍は入れたんだったな」

「はい!先月入れました!これが結婚式の招待状っす!是非来て下さい」

そう言って招待状を手渡す和久津の頭は以前のようにハゲ散らかしている。

「しかし良かったのか?頭は。結婚式はフサフサで迎えたかったのではないのか?」

「パイセン、今更っす!あのアルナ星から地球に戻った日に自分は決めたんすよ!ありのままの自分とそれを受け入れてくれる人を大切にしようって!だからパイセンに完全に元に戻してもらったんです」

五条が顔を赤くしている。

「随分と幸せそうだな」

「まぁ、そうっすねー」
「……はい」

「今日はそんな2人に祝いの品を持ってきた」

白く光る球体をバッグから取り出し、テーブルに置く。

「えっ、召喚オーブすか?」

「そうだ」

「なんでこの召喚オーブはまだ光ってるんすか?アルナ星から離れて神様の力が及ばなくなったから、ただの石ころに戻る筈っす」

「単純な話だ。中に入ってるのが神様の化身だからだ」

「ちょっと!全部置いてきたんじゃなかったんすか!?」

「フィロメオにやったのは戦力になりそうな神様の召喚オーブだけだ。この中に入っているのは幸福の神様の化身。結婚祝いにこれ以上のものはないだろう?」

「いや、気持ちは嬉しいっすけど……」

「なんだ、不服か?ならばこっちにしておくか?」

黒く光る球体をバッグから取り出し、テーブルに置く。

「うわっ、なんすか?この禍々しいのは?」

五条は完全に身を引いている。

「これには性悪の神様の化身が入っている」

「「えっ!」」

「反神の民から洗礼具の一部を貰い受けていてな。アルナ星が地球から離れ始めたタイミングで召喚オーブに加護を逃しておいたんだ」

「……そんなことしてたんすか?」

「そうだ。性悪の神様の化身がどんなものか見たかったからな」

「……確かに興味はありますけど」

引いた身体を戻しながら五条は言った。

「よし!お前達の披露宴の余興でこの召喚オーブを使ってやろう。何が起こるかはその時のお楽しみだ」

「駄目っす!絶対碌なことにならないっす!!」

「はははっ!今から楽しみだな!」

「駄目ったら駄目っす!」

「はははっ」

「全然聞いてないっ!」

次は結婚式だ。
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