虫食べる系配信者が退廃未来へタイムスリップ!〜魔物化したゲテモノを食べて超絶バフで生き延びる〜

フーツラ

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東京

到着

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 崩れ落ちているのは首都高速湾岸線だろうか? その下をくぐり抜けると、幾つもの島が見えてきた。どれも深い森に覆われ、人の気配はない。

 退廃した東京の様子に、視聴者達は言葉を失っていた。コメント欄に、無人島を出発した時の元気はない。デカムシのバフでパドルを漕ぎ、高速航行していた時はあんなに盛り上がっていたのに……。

 丸木舟をつけるのにちょうどいい砂浜を見つけた。これは島ではないだろ。つまり、本島。俺はついに東京にたどり着いた。

「東京に着いたぞー!!」

 砂浜にパドルで「着いたー!!」と書いてカメラに映す。


 コメント:……おう。おめでとう
 コメント:そっか。これが東京か
 コメント:昭和島かな?森だったけど
 コメント:羽田空港どうなってた?
 コメント:飛行機も飛んでなかったし……
 コメント:そも、船とすれ違わなかった


 クソ! こいつらいつまで凹んでやがるんだ!! 未来は未来だって開き直るしかないだろ!!

 砂浜に「怒」の字を書いて映す。


 コメント:いや、だってなぁ……
 コメント:ごめん。普通にショックなの。
 コメント:もしかして、人間滅んでる?
 コメント:世界にルーメンしかいない?
 コメント:せつねえええ
 コメント:はぁ……


 全く! いじけやがって!! 俺がとっとと未来人を見つければいいんだろ? そんな簡単に人類が滅ぶわきゃねーんだよ!

 波に攫われないところまで丸木舟を引き上げ、いよいよ探索を開始する。ボロボロに朽ちたアスファルト、樹木に侵食されたマンション。どのような経緯でこんなことになったのかは分からないが、自然の逆襲を受けたような光景だ。

 大きな自然災害や日本本土が巻き込まれるような戦争があったのかもしれない。しかし、人間が滅んだなんてことはない筈だ。人間はしぶとい。それは俺自身が実証している。

 パドルをアスファルトに立て、人差し指で支える。

「よーし、パドルが倒れた方に進むぞ!」

 視聴者には聞こえていないだろうが、絵でなんとなくわかるだろう。いくぞ!

「とりゃ!」

 ──カラン。と、倒れたパドルがある方向を指す。それをカメラに映す。

 

 コメント:そっちに行くってこと?
 コメント:ルーメンさん、ポジティブ
 コメント:俺達が凹んでても仕方ない
 コメント:一番辛いのはルーメンさんか
 コメント:えっ、西にいくの?
 コメント:さっきのが昭和島なら、西方面に進むのかな?


 うーん。たぶん、西なのかな? 正直自信はない。ただ重要なのは未来人に会うことだ。俺は、パドルを信じるぞ。

「それでは、行ってみましょうー!!」

 俺は穴ぼこのアスファルトの道を進み始めた。


#


 森に飲まれた街にいるのは、今のところ小動物だけだ。今も赤い目をしたコオロギをパドルで叩き殺したところだ。このコオロギ、十五センチぐらいあるぞ。カメラに映すとコメント欄が悲鳴で溢れていた。

 とりあえず焼いて食うか。幸いなことに薪は何処にでも落ちている。

 廃屋で見つけてきたダイニングチェアに座り、アスファルトの上で焚き火をする。現代でこんなことをしていれば即通報だろうが、ここでは俺を咎める者はいない。妙な解放感がある。

 胴体から外した後あしを火で炙ると香ばしい。少し海老に似ているかもしれない。カメラの前で食べるとしよう。

「いっただきまーす!」


 コメント:オエエエエエエエー!!
 コメント:コオロギは食べられるよね
 コメント:あしのトゲトゲ痛そう
 コメント:蟹の脚みたいなもんやろ?
 コメント:デカい昆虫が普通に見える
 コメント:わかる現代の虫が小さいよな


 大分コメント欄に活気が戻ってきたな。やはり、賑やかな方がいい。

「いやー、これは美味い。車海老に近いな」

 しかし、未来のゲテモノはどうしてこんなに美味いのか。昆虫や節足動物、何を食べても外れがない。食糧問題の救世主は昆虫なんてことが言われるが、少なくともここでは本当のことだ。

「お、そろそろ胴体も焼けて来たかな?」

 遠赤外線で焼いていた胴体もこんがり焼けてきた。そろそろ──。

 ……たす……て……

 うん? はるか遠くから人の声が聞こえる。遠過ぎて、自分の耳で聞いているのではないような感覚だ。これはもしや、この巨大コオロギのバフか?

 ……たす……て……

 やはり間違いない。人が助けを求めている。俺は焚き火から炭になりかけた薪を取り出し、廃屋の壁に黒く書き殴った。その文字は「人」だ。カメラにその文字を映すとコメント欄が凄まじい速さで流れ始めた。

 さて、面白くなって来たぞ! 配信者冥利に尽きるぜ。

 乾燥デカムシを頬張ると、俺は焚き火の後始末もせずに声のする方に向かって走り始めた。
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