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鬼の子
油断大敵
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──ガサガサッ。
眠りを妨げる音がする。ゆっくりと目を開けると薄明かりの中に人影が見えた。
そっとスマホとアクションカメラを触って配信を開始する。闖入者は俺のリュックを漁ることに一生懸命で、気が付かない。
ここは恵比寿駅跡地だ。わざわざ生き物の気配のないこの場所を探して寝床としたのに、俺の努力は無駄だったらしい。
「……おい」
「ひゃっ!」
女の声だ。驚いてこちらを見る顔は幼い。世奈よりも更に年下だな。中学生といったところか。
「俺のリュックに何か用か?」
「な、何も用なんてないっ!」
バッと立ち上がった少女はしっかりとリュックを背負い、走り出す。
「待てっ!」
と言って止まる相手が盗みなんてするわけがない。慌てて立ち上がるが、いかんせん寝起きだ。足元がおぼつかない。
それに盗人が妙に足が速い。バフがなくても少女に負けるほど俺の身体は鈍ってない筈だが、みるみる離されていく。
もう動かなくなったエスカレーターを降りたところで、盗人の姿は見えなくなった。
ちっ、失態だ。
あのリュックには双眼鏡やナイトビジョン、ファイアスターターが入っている。失うわけにはいかない。
しかしあの盗人……。本当に人間か?
コメント:ルーメンだせええええー!!
コメント:逃げられてやんのー!!
コメント:いや、あの泥棒、足速すぎ
コメント:なぁ。角なかった?
コメント:ちっこい角あったよな。頭に
コメント:角っ子!!
スマホでコメント欄を確認すると、やはりそうだ。俺の見間違いじゃない。あの盗人の頭には小さな角があったのだ。全く、この時代はなんでもありだな……。
一度寝床に戻った俺は、手付かずで残っていた麻袋からカメムシの乾物を取り出した。追跡にはカメムシのバフがいい。コイツを食べると鼻が効くようになるからな。
待っていろよ、角っ子。俺の荷物に手を出したことを後悔させてやる。
#
研ぎ澄まされた俺の鼻は目黒川沿いの公園を指していた。カメムシのバフが効いている間は臭いを明確に嗅ぎ分けることが出来る。恵比寿駅跡地から続いている臭いはここで終着していた。角っ子はここにいる可能性が高い。
「やめろっ!」
俄に声が響く。俺ではない。この声は盗人の角っ子だ。やはりここに居たか。
しかし、不快な臭いがするな。嗅いだだけで胃がムカムカする。角っ子の他にも何かがいるらしい。
「返せ! それはわぁのリュック──」
角っ子は二人の大男にリュックを奪われ、殴り飛ばされた。地面に転がされ、呻いている。……全く容赦がないな。というか、あの大男達は人間ではないぞ。頭に長く伸びた角が見える。
まぁ、いい。人間だろうと魔物だろうと、俺のやることは変わらない。
「おい、お前達。ふざけるなよ。それは俺のリュックだ!」
振り返ったのは、赤黒い肌に角を生やした魔物。オーガだ。
「……人間ダ」
「フン。偉ソウニ」
オーガの興味は角っ子から、俺に移ったようだ。
ゆっくりとこちらに向き返り、リュックを脇へと放り投げる。
「おい、糞鬼ども。丁寧に扱えよ。大事なものが入っているんだ」
オーガ達の眉間に皺がより、こめかみに血管が浮き出た。どうやら、日本語を理解しているらしい。
「……人間ガ」
「フン。死ニタイノカ」
赤く濁った目がギラついた。
「いいから、かかって来い。俺はイラついているんだ」
派手にやるとしよう。俺はかつてハイオークが使っていたハンマーを強く握りしめた。
眠りを妨げる音がする。ゆっくりと目を開けると薄明かりの中に人影が見えた。
そっとスマホとアクションカメラを触って配信を開始する。闖入者は俺のリュックを漁ることに一生懸命で、気が付かない。
ここは恵比寿駅跡地だ。わざわざ生き物の気配のないこの場所を探して寝床としたのに、俺の努力は無駄だったらしい。
「……おい」
「ひゃっ!」
女の声だ。驚いてこちらを見る顔は幼い。世奈よりも更に年下だな。中学生といったところか。
「俺のリュックに何か用か?」
「な、何も用なんてないっ!」
バッと立ち上がった少女はしっかりとリュックを背負い、走り出す。
「待てっ!」
と言って止まる相手が盗みなんてするわけがない。慌てて立ち上がるが、いかんせん寝起きだ。足元がおぼつかない。
それに盗人が妙に足が速い。バフがなくても少女に負けるほど俺の身体は鈍ってない筈だが、みるみる離されていく。
もう動かなくなったエスカレーターを降りたところで、盗人の姿は見えなくなった。
ちっ、失態だ。
あのリュックには双眼鏡やナイトビジョン、ファイアスターターが入っている。失うわけにはいかない。
しかしあの盗人……。本当に人間か?
コメント:ルーメンだせええええー!!
コメント:逃げられてやんのー!!
コメント:いや、あの泥棒、足速すぎ
コメント:なぁ。角なかった?
コメント:ちっこい角あったよな。頭に
コメント:角っ子!!
スマホでコメント欄を確認すると、やはりそうだ。俺の見間違いじゃない。あの盗人の頭には小さな角があったのだ。全く、この時代はなんでもありだな……。
一度寝床に戻った俺は、手付かずで残っていた麻袋からカメムシの乾物を取り出した。追跡にはカメムシのバフがいい。コイツを食べると鼻が効くようになるからな。
待っていろよ、角っ子。俺の荷物に手を出したことを後悔させてやる。
#
研ぎ澄まされた俺の鼻は目黒川沿いの公園を指していた。カメムシのバフが効いている間は臭いを明確に嗅ぎ分けることが出来る。恵比寿駅跡地から続いている臭いはここで終着していた。角っ子はここにいる可能性が高い。
「やめろっ!」
俄に声が響く。俺ではない。この声は盗人の角っ子だ。やはりここに居たか。
しかし、不快な臭いがするな。嗅いだだけで胃がムカムカする。角っ子の他にも何かがいるらしい。
「返せ! それはわぁのリュック──」
角っ子は二人の大男にリュックを奪われ、殴り飛ばされた。地面に転がされ、呻いている。……全く容赦がないな。というか、あの大男達は人間ではないぞ。頭に長く伸びた角が見える。
まぁ、いい。人間だろうと魔物だろうと、俺のやることは変わらない。
「おい、お前達。ふざけるなよ。それは俺のリュックだ!」
振り返ったのは、赤黒い肌に角を生やした魔物。オーガだ。
「……人間ダ」
「フン。偉ソウニ」
オーガの興味は角っ子から、俺に移ったようだ。
ゆっくりとこちらに向き返り、リュックを脇へと放り投げる。
「おい、糞鬼ども。丁寧に扱えよ。大事なものが入っているんだ」
オーガ達の眉間に皺がより、こめかみに血管が浮き出た。どうやら、日本語を理解しているらしい。
「……人間ガ」
「フン。死ニタイノカ」
赤く濁った目がギラついた。
「いいから、かかって来い。俺はイラついているんだ」
派手にやるとしよう。俺はかつてハイオークが使っていたハンマーを強く握りしめた。
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