29 / 60
鬼の子
鬼退治
しおりを挟む
ドンッ!! と腹を殴られ、俺は公園の茂みに飛ばされた。大した力だ。ワンパンで宙を舞う経験が出来るとは。
カブトムシのバフで身体は平気だが、直ぐに出て行くのは面白くない。茂みの中で屈んで様子を窺っていると、二体のオーガは角っ子に用があるようだ。まだ地面に横たわる角っ子を見下ろしている。
「人間ノ血ガ混ザッタ紛イ物ガ」
「……わ、わぁの父親はお前達の頭領だぞ!」
「下ラン嘘ヲツクナ」
オーガが角っ子を蹴り上げた。コロコロと面白いように転がる。
「冗談ヲ言エナイ体ニシテヤロウ」
もう一体のオーガが、角っ子の顔を踏みつけるように足を置いた。そろそろか──。
「おい、糞鬼!」
二体のオーガがゆっくりとこちらを向く。俺は一気に間合いを詰めた。
「油断んんん! 大敵いいい!!」
体重の乗ったハンマーを横薙ぎにすると、一体には躱されたがもう一体の──。
ドシャッ!! と脇腹にめり込んだ。呼吸が出来なくなったのか、オーガはひゅうひゅうと口から息を漏らす。
「死んどけッ!!」
身体を回転させながらハンマーを引き抜き、くるりと反対側から顔をブン殴ると、オーガは冗談の言えない体になった。
地面に膝をつき、そのまま前のめりに倒れる。
「貴様ァァ!」
オーガの巨体が俺に迫り、鋭い貫手が放たれる。当たれば簡単に身体を抉られるだろう。当たればな……。
「クソッ! 何故ダ!」
ハリガネムシのバフで自らを操ると、限界を超えることが出来る。動体視力さえも。
空気を裂く音が聞こえる。それは俺の身体に届くことはない。虚しくすり抜ける。
ゲハッ。
ハンマーヘッドがオーガの腹に突き刺さった。巨体がくの字になり、頭が降りてくる。
「もう一丁!!」
溜めた膝を一気に解放し、天に向かってハンマーを払う。オーガの顎が鈍い音を立て、嫌な感触が手に伝わってきた。そして重量に引かれるように、仰向けに倒れた。
──どうだ?
コメント:ウオオオオオオー!!
コメント:勝ったああああー!!
コメント:ルーメン、強えええー!!
コメント:それより角っ子だろ
コメント:角っ子、はよ!!
コメント:ルーメン、角っ子大丈夫!?
コメント欄、角っ子好きすぎだろ! 全員、俺の勝利を讃えろよ! まったく!!
視線を感じて振り向くと、地面にペタンと座る角っ子の姿がある。近くまで行ってしゃがむと、目を丸くしてこちらを見上げた。赤い髪の間から小さな角が二つ見える。
「よう。盗人。大丈夫──」
「お前、強いな! 気に入った! わぁと結婚しよう!!」
……結婚しよう? 聞き間違いか?
「なんと言った?」
「わぁは、結婚しようと言った! 子供は三人でいいか?」
ちょっと冷静になろう。こういう時はコメント欄を見るに限る。
コメント:角っ子きゃわわいいいー!!
コメント:目がくりくりしてるるる!!
コメント:角っ子、胸デカくね?
コメント:ロリ巨乳きたあああー!!
コメント:これ、恋愛イベント発生だろ
コメント:ルーメン! 許さんぞー!!
……全く落ち着かない。逆効果だった。しかし、同時接続数はうなぎ登り。角っ子、数字を持っているようだ。ここで切るには惜しい人材だ。
「結婚の話は一旦置いておこう。角っ子、お前の名前は?」
「わぁの名前はニコだ! お前は?」
「ルーメンだ。ところで、親は何処にいる?」
「お母さんは死んだ! お父さんは──」
ニコは渋谷方面に向き直り、空を指差す。その先には駅前の高層タワーが微かに見える。
「あそこのてっぺんに居るってお母さんが言ってた!」
「……そうか」
「結婚の挨拶に行くんだな! 分かった!」
ニコは元気よく立ち上がり、俺の腕にぶら下がるように絡み付く。
「邪魔だ」
「ひゃ! もー、照れとるのか?」
ニコを振り解き、リュックを拾い上げる。さて、どうしたものか……。
「ニコ、あのタワーの近くに人間はいるのか?」
「ちょっと離れた所におるぞ! たいいくかんってところに閉じこもってる」
代々木体育館だな。とりあえず行ってみるか。
「案内を頼めるか?」
「もちろん、いいぞ!」
ニコは嬉しそうに俺の手を取り、ぶんぶん振りながら歩き始めた。
カブトムシのバフで身体は平気だが、直ぐに出て行くのは面白くない。茂みの中で屈んで様子を窺っていると、二体のオーガは角っ子に用があるようだ。まだ地面に横たわる角っ子を見下ろしている。
「人間ノ血ガ混ザッタ紛イ物ガ」
「……わ、わぁの父親はお前達の頭領だぞ!」
「下ラン嘘ヲツクナ」
オーガが角っ子を蹴り上げた。コロコロと面白いように転がる。
「冗談ヲ言エナイ体ニシテヤロウ」
もう一体のオーガが、角っ子の顔を踏みつけるように足を置いた。そろそろか──。
「おい、糞鬼!」
二体のオーガがゆっくりとこちらを向く。俺は一気に間合いを詰めた。
「油断んんん! 大敵いいい!!」
体重の乗ったハンマーを横薙ぎにすると、一体には躱されたがもう一体の──。
ドシャッ!! と脇腹にめり込んだ。呼吸が出来なくなったのか、オーガはひゅうひゅうと口から息を漏らす。
「死んどけッ!!」
身体を回転させながらハンマーを引き抜き、くるりと反対側から顔をブン殴ると、オーガは冗談の言えない体になった。
地面に膝をつき、そのまま前のめりに倒れる。
「貴様ァァ!」
オーガの巨体が俺に迫り、鋭い貫手が放たれる。当たれば簡単に身体を抉られるだろう。当たればな……。
「クソッ! 何故ダ!」
ハリガネムシのバフで自らを操ると、限界を超えることが出来る。動体視力さえも。
空気を裂く音が聞こえる。それは俺の身体に届くことはない。虚しくすり抜ける。
ゲハッ。
ハンマーヘッドがオーガの腹に突き刺さった。巨体がくの字になり、頭が降りてくる。
「もう一丁!!」
溜めた膝を一気に解放し、天に向かってハンマーを払う。オーガの顎が鈍い音を立て、嫌な感触が手に伝わってきた。そして重量に引かれるように、仰向けに倒れた。
──どうだ?
コメント:ウオオオオオオー!!
コメント:勝ったああああー!!
コメント:ルーメン、強えええー!!
コメント:それより角っ子だろ
コメント:角っ子、はよ!!
コメント:ルーメン、角っ子大丈夫!?
コメント欄、角っ子好きすぎだろ! 全員、俺の勝利を讃えろよ! まったく!!
視線を感じて振り向くと、地面にペタンと座る角っ子の姿がある。近くまで行ってしゃがむと、目を丸くしてこちらを見上げた。赤い髪の間から小さな角が二つ見える。
「よう。盗人。大丈夫──」
「お前、強いな! 気に入った! わぁと結婚しよう!!」
……結婚しよう? 聞き間違いか?
「なんと言った?」
「わぁは、結婚しようと言った! 子供は三人でいいか?」
ちょっと冷静になろう。こういう時はコメント欄を見るに限る。
コメント:角っ子きゃわわいいいー!!
コメント:目がくりくりしてるるる!!
コメント:角っ子、胸デカくね?
コメント:ロリ巨乳きたあああー!!
コメント:これ、恋愛イベント発生だろ
コメント:ルーメン! 許さんぞー!!
……全く落ち着かない。逆効果だった。しかし、同時接続数はうなぎ登り。角っ子、数字を持っているようだ。ここで切るには惜しい人材だ。
「結婚の話は一旦置いておこう。角っ子、お前の名前は?」
「わぁの名前はニコだ! お前は?」
「ルーメンだ。ところで、親は何処にいる?」
「お母さんは死んだ! お父さんは──」
ニコは渋谷方面に向き直り、空を指差す。その先には駅前の高層タワーが微かに見える。
「あそこのてっぺんに居るってお母さんが言ってた!」
「……そうか」
「結婚の挨拶に行くんだな! 分かった!」
ニコは元気よく立ち上がり、俺の腕にぶら下がるように絡み付く。
「邪魔だ」
「ひゃ! もー、照れとるのか?」
ニコを振り解き、リュックを拾い上げる。さて、どうしたものか……。
「ニコ、あのタワーの近くに人間はいるのか?」
「ちょっと離れた所におるぞ! たいいくかんってところに閉じこもってる」
代々木体育館だな。とりあえず行ってみるか。
「案内を頼めるか?」
「もちろん、いいぞ!」
ニコは嬉しそうに俺の手を取り、ぶんぶん振りながら歩き始めた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
無能扱いされ会社を辞めさせられ、モフモフがさみしさで命の危機に陥るが懸命なナデナデ配信によりバズる~色々あって心と音速の壁を突破するまで~
ぐうのすけ
ファンタジー
大岩翔(オオイワ カケル・20才)は部長の悪知恵により会社を辞めて家に帰った。
玄関を開けるとモフモフ用座布団の上にペットが座って待っているのだが様子がおかしい。
「きゅう、痩せたか?それに元気もない」
ペットをさみしくさせていたと反省したカケルはペットを頭に乗せて大穴(ダンジョン)へと走った。
だが、大穴に向かう途中で小麦粉の大袋を担いだJKとぶつかりそうになる。
「パンを咥えて遅刻遅刻~ではなく原材料を担ぐJKだと!」
この奇妙な出会いによりカケルはヒロイン達と心を通わせ、心に抱えた闇を超え、心と音速の壁を突破する。
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。
木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。
しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。
そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。
【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
オッサン齢50過ぎにしてダンジョンデビューする【なろう100万PV、カクヨム20万PV突破】
山親爺大将
ファンタジー
剣崎鉄也、4年前にダンジョンが現れた現代日本で暮らす53歳のおっさんだ。
失われた20年世代で職を転々とし今は介護職に就いている。
そんな彼が交通事故にあった。
ファンタジーの世界ならここで転生出来るのだろうが、現実はそんなに甘く無い。
「どうしたものかな」
入院先の個室のベッドの上で、俺は途方に暮れていた。
今回の事故で腕に怪我をしてしまい、元の仕事には戻れなかった。
たまたま保険で個室代も出るというので個室にしてもらったけど、たいして蓄えもなく、退院したらすぐにでも働かないとならない。
そんな俺は交通事故で死を覚悟した時にひとつ強烈に後悔をした事があった。
『こんな事ならダンジョンに潜っておけばよかった』
である。
50過ぎのオッサンが何を言ってると思うかもしれないが、その年代はちょうど中学生くらいにファンタジーが流行り、高校生くらいにRPGやライトノベルが流行った世代である。
ファンタジー系ヲタクの先駆者のような年代だ。
俺もそちら側の人間だった。
年齢で完全に諦めていたが、今回のことで自分がどれくらい未練があったか理解した。
「冒険者、いや、探索者っていうんだっけ、やってみるか」
これは体力も衰え、知力も怪しくなってきて、ついでに運にも見放されたオッサンが無い知恵絞ってなんとか探索者としてやっていく物語である。
注意事項
50過ぎのオッサンが子供ほどに歳の離れた女の子に惚れたり、悶々としたりするシーンが出てきます。
あらかじめご了承の上読み進めてください。
注意事項2 作者はメンタル豆腐なので、耐えられないと思った感想の場合はブロック、削除等をして見ないという行動を起こします。お気を悪くする方もおるかと思います。予め謝罪しておきます。
注意事項3 お話と表紙はなんの関係もありません。
家の庭にダンジョンができたので、会社辞めました。
希羽
ファンタジー
都内のブラックIT企業で働く社畜・佐藤健太(27歳)。
手取り18万、残業100時間。唯一の資産は、亡き祖母から相続した郊外のボロ戸建てだけ。
「このまま死ぬのかな……」
そう絶望していたある夜、庭の物置の裏に謎の穴が出現する。
そこは、なぜか最弱モンスターしか出ないのに、ドロップアイテムだけは最高ランクという、奇跡のボーナスダンジョンだった。
試しにスライムを叩いたら、出てきた宝石の査定額はなんと――【1,000,000円】。
「……え、これ一個で、俺の年収の3分の1?」
スマホアプリで即換金、ドローン配送で手間いらず。
たった10分の庭仕事で5000万円を稼ぎ出した健太は、翌朝、上司に辞表を叩きつけることを決意する。
※本作は小説家になろうでも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる