外れジョブ「レンガ職人」を授かって追放されたので、魔の森でスローライフを送ります 〜丈夫な外壁を作ったら勝手に動物が住み着いて困ってます〜

フーツラ

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冒険者ギルドと露店

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 何度目かの冒険者ギルドは大通りほどではないものの、やはり混み合っていた。ローズを酒場兼待合室に置いて、カウンターに並ぶ。

 何人かの冒険者が挨拶をしてきた。コボルトキング討伐に参加した人達だ。リュックに収まるテトを見て、ギョッとした表情をしたのは、首刈り猫の恐ろしさを知っているからだろう。

 やっと順番が来てカウンターの前に立つと、受付の女職員は俺のことを覚えていたようだ。「あぁ、マッドボアの」と言いながら裏へ引っ込み、大きな袋を一つ持ってきた。

「ありがとうございます」

「テトちゃんは?」

「ミャオ~」

 カウンターに背中を向けて、テトの顔をみせる。

「あら、元気そうね。ところでマルス君……」

 女職員が息を詰めた。

「はい? なにか?」

「もしよかったらなんだけど、冒険者登録していかない?」

「お断りします」

 ふぅーと息を吐く。

「やっぱり駄目かぁ~」

「ごめんなさい」

「いいのいいの。一応、誘ってみただけだから」

「俺なんかが冒険者になっても仕方ないですよ」

「……分かってないわね。最近、開拓民があなたの土地の近くによくいるでしょ?」

 確かに最近、魔の森で開拓民とすれ違うことが多くなった。

「はい。あれって何か理由があるんですか?」

「マルス領の城壁がどんなものか見学に行っているのよ。開拓民達は安全が欲しいの。マルス君は魔の森の北側の開拓民の村がどんな感じか見たことある?」

「ないですね……」

「だいたいは木の柵で囲っているだけよ。だから魔物からの被害が絶えない。彼等は丈夫な壁が欲しい。開拓民の間でマルス君のこと、随分と話題になっているみたいよ」

「……そうなんですね。情報ありがとうございます。ついでにもう一つ聞いてもいいですか?」

「いいわよ?」

「このギルドの近くにピンク色の石を売ってる露店はありませんか?」

 女職員は驚いた顔をする。

「その質問、今日二回目よ。あの露店は開くのが遅いの。もうそろそろやってるんじゃないかしら?」

 そう言って俺の背後に目を遣る。

「マルスちゃん! 遅いわよ!!」

 ローズか……。せっかちだな。

「もう終わりましたよ。そろそろ露店もやるみたいです。行きましょう」

「ピンクのお家! ピンクのお家!!」

 そんなに楽しみなのか……。

 ローズは走ってギルドから飛び出した。


#


 女職員の言ったことは本当だった。大通りの脇、さっきまで何もなかった場所に布が広げられ、様々な石が並べられている。

 ただし、先客がいた。

 横に大きな身体をしたドワーフの男が、ピンク色の石を手に取り唸っている。

「私のピンクの石に触れないで!!」

 急に飛び出したローズがドワーフに難癖をつける。男はゆっくりとこちらに振り返り──。

「何か文句……か、可愛い……!」

 えっ……!?

「あら? 素直なドワーフちゃんね。確かにローズちゃんは誰もが認める可愛──」

「お前のことじゃない!! クソ人族の小娘がっ!!」

「えっ……!?」

 今度はローズが驚く。

「可愛いのは、その男の肩にいる猫のことだ!」

「ミャオ~?」

 テトはいつの間にかリュックから抜け出し、俺の肩に頭をのせていた。このドワーフ、猫好きなのか……。

「ちょっと! 誰が小娘よっ!! ちゃんとローズって可愛い名前があるのよ!!」

「知るかっ! チンチクリンが騒ぐな! 鬱陶しい!!」

 なんだろう。凄く胸がスカッとする……。

「これだからドワーフは……!!」

「ローズさん。落ち着いて下さい。店主さん、騒いでしまって申し訳ないです。私達はこのピンクの石が欲しいんです。それも大量に。お礼はしますので、仕入れ先を教えて貰えませんか?」

 勿論、お礼は最終的にローズに出させる予定である。

「なんだ。お前達も鍛治師だったのか。魔花鉱石に目を付けるとは……。やるな」

 マカコウセキ……? 知らないけど……!!

「あ、あなたも鍛治師なの……? マカコウセキは鍛治師の憧れよね……」

 ローズが知ったかぶりをする。この女、やはり図太い。

「アハハハハ。この石は開拓民が持ってくるんだ。何処で採れるかなんて、あっしは知りませんよ! アハハハハ」

 店主が歯のない口を開けて笑う。開拓民か……。

「その開拓民を紹介してくれませんか……?」

「アハハハハ。いいけど、お金欲しいな。アハハハハ」

 俺は懐から一万シグを取り出し、露天商に握らせたのだった。
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