俺様御曹司に飼われました

馬村 はくあ

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第一章~悪魔との同居~

休日のデート

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「デートしよう」



ある日の休日。

たまの休みだから昼まで寝てようと思ったのにそんな悪魔の声にあたしの目が覚める。



「やだ」



目もあけず、そのまま答えて布団を深々とかぶる。



「は?拒否とかありえねぇから」



あたしのかぶった布団を剥ぎやがる。



「休みの日くらいゆっくり寝させてよ……」



しぶしぶ、目をあけると映し出されたのは今日もキマってる悪魔の姿。

朝からよく、そんなキメキメでいれるなと感心してしまうくらい。



「だってさ、普段日中一緒にいられないんだよ?」


「そりゃね」



あたしは仕事、この悪魔は大学だ。



「休みの日だけじゃん、お前を一日中俺のものにできるの」


「は……」



なんで、そんな優しい顔して言うの。
なんで、あたしのことが好きだと言ってるような顔をするの。

好きなひとがいるのに、その人がダメだったからなの?

じゃあ、その人がもし戻ってきたら……。



「ん?」



じとーっと悪魔を見てると、それに気づいたのか不思議そうに聞いてくる。



「……なんでも、ない」



聞いてくる姿さえ、かっこよくて思わず目をそらす。



「なんだよ、はっきり言えよ」



その態度が気に食わなかったのか、不機嫌そうにあたしの顔を悪魔に向ける。



「なんでもないよ、本当に」



あたしはまだだもん。
まだこの人のこと好きなんかじゃない。

久しぶりに甘い言葉を言われてドキドキしてるだけだから。
きっとすぐに、こんな感情なくなる。



「なら、早く用意しろ」



チュッとあたしの唇に軽く口づけをする。



「……っ」


「ほんとすぐ赤くなるね、かわいい」



からかってるんだってわかってる。
たぶん、彼は演技派なのかもしれない。
簡単にあたしの心を奪おうとするんだから。

そんな手に乗ってやるものか。
何故か対抗意識が出てくる。



「着替えるから出てって」



ベッドから抜け出したあたしは、悪魔の背中を押して部屋の外に出す。



「お前、どこ行きたいとかあるか?」



着替えて、リビングに行ったあたしにソファーでくつろいでいた悪魔がきいてくる。



「いや、別にない……」



今日どこか行こうだなんて思ってなかったし。
家でゆっくり寝ていたかったのを邪魔されたから。
できれば、デートならお家デートにしてほしいくらいだ。



「じゃあ、俺が決めるな」



あたしの願いなんか知らない悪魔は爽やかに笑って、テーブルの上からキーケースを取って立ち上がる。



「行くぞ」



その動作をボーッと見ていたあたしの腕を掴む。



「あ、うん……」



やっぱり、動きがどれもかっこよくて。
掴まれた腕が熱い。



「今日の格好、可愛いじゃん」



横にいるあたしを優しい瞳で見つめる。

とくんと胸が高鳴るのを感じる。

なんでだろう。
好きなんかじゃないのに。
悪魔なのに。

格好いいからなんだろうか。



「可愛い格好しないと釣り合わないかなって……」


これは本音だ。
悪魔の隣を歩くのにふさわしい服なんてこれぐらいしかなかった。



「服なんてなんでも可愛いよ」


「え?」


「たとえ、スウェットだとしても可愛いね」


「は?」



デートって言われて、スウェットなんて履くわけがない。



「何着てもかわいいって言ってんの」


「あ、ありがとう……」



なんか腑に落ちないけど。

褒められてもからかってるんだって思ってしまう。

だって、社長の息子でお金持ち。
そのうえかなりの容姿の持ち主で背も高い。
大学もいい所にいってる。

俗にいう三高というものを兼ね揃えているんだ。
高学歴、高収入、高身長だっけ?

こんな人がその親の会社に入ってきた新入社員でたまたま部屋が一緒になったあたしのことを好きだとか可愛いとか。
そんなの信じられるわけがない。

絶対に悪魔のまわりにはもっと綺麗な子がいるはずだし、現に他に好きな人がいるんだもん。



「なんか静かだけど、どうかした?」



黙って、悪魔に付いていくと振り返ってそんなことを聞かれる。



「いや、別に」


「まぁいいか。乗れよ」



気づけば、悪魔が助手席のドアを開けてあたしの背中を押していた。



「どこいくの?」


「映画」


「映画!?」



なんか普通のカップルぽいなんて思う。



「なんだ、映画嫌いか?」


「いや、そうじゃなくて……カップルぽいことするなーって思って」


「はぁ?」


「いや、別にそんなんじゃないのはわかってる!」



眉をひそめる悪魔に慌ててそう否定する。



「ちげーよ。なんでそうなんだよ」


「え?」


「お前は俺の彼女つってんだろ。いつになったら覚えんだよ、このバカ」


「一瞬にしてすごい言われよう……」



本当に悪魔の彼女だっていうような行動をしたらしたで笑われそうで。
なかなかその事実を認められない。

悪魔に好きな人がいるって事実も影響してるんだと思う。



「シートベルトしろよ」


「うん、大丈夫」



あたしのシートベルトを確認して、車のハンドルを握る。



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