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第二章~悪魔のことが好きなあたし~

彼の心の中心にいる人

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「う、緊張してきた」



合コン会場の居酒屋について、数分。
ついた矢先、あたしをみてめっちゃ不機嫌な顔になったのを見て一気に気持ちが萎む。

 

「なに言ってるの!」


「あれー?朱莉ちゃんの友達!めっちゃ暁の高校の時の彼女に似てる!!!!」



あたしのことを見た瞬間、悪魔に少し似た感じの男の人がそう叫んで駆け寄ってきた。



「……っ」


「おまっ、ふざけんな……っと」



本性が出てしまったことに焦りをみせて自分の口を手で塞ぐ。



「いまの王子なんからしくなかったね。裏の顔とか素敵ー」



朱莉の友達だろう。
悪魔を見て頬を赤くしてる。

社内の人なのだろうか。
あたしと悪魔のことをしってるのは同じフロアで働く人たちだけ。

社内中の噂になってないことだけが救いだった。
だから、朱莉も何も知らない。



「元カノに似てることだし、俺この子の隣でいいよね」



ニッコリとみんなに笑ってあたしの隣に座る。



「ちょっ……」


「いいから黙れ」



こそっとあたしにだけ聞こえる声で、いつもの悪魔。
2人だけの秘密のようで、くすぐったかった。



「隣にきたらほかの男の子と話せないでしょ」



本当は、そんなのいらないくせに。
本当は、話せるのは悪魔だけでいいくせに。



「ほかの男なんて見んなよ」



こそっと耳打ちをしてくるから、悪魔がいる方の耳が熱い。



「合コンにきたんだから……やっぱり席替えとか……ね」


「俺がいれば充分だろ」



素直になれないあたしと
あたしへ甘い言葉をたくさん述べてくる横の男。
好きなのは、その高校生のときの元カノのくせに。

さっきの人のおかげで、わかった。
あの写真は元カノなんだってこと。



「元カノ……あたしに似てんだね」


「は……?」


「さっきあの人言ってた……」



悪魔がいままでどんな恋愛をしてきたなんて、聞いたことがなかった。

でも、きっと悪魔はその人のことが好きだ。



「まぁ……な……似てるって言うか……やめよ、この話」



あたしの頭をぽんっと叩く。



「お望みどおりにほか行ってやるよ」



そうやってあたしから逃げる。

あんな風に待ち受けにしてしまうぐらい好きなくせに。
その話題を基本的には避けてるんだと思う。

それだけ触れられたくない話題になるほど、その人は悪魔の心の中にずっといる。



「心海ちゃん?」


「あ……」



いつの間にか隣にきていた、さっき元カノのことを言っていた彼。



「どうも、俺、進藤泰治」


「進藤……」


「そ、暁とは従兄弟」



そこで〝あっ〟と思い出した。
あたし悪魔と誰かがキスしたと勘違いしてたとき、本当にキスしてたのはこの人だった。



「心海ちゃんだよね?いま、暁と一緒に住んでんの」


「……え」



誰も知らないと思ってた。
悪魔との同居生活。



「暁からいろいろ聞いてるからさ」


「あの、元カノって……」


「あー、ごめんね。最初はいま暁と付き合ってる女の子とは知らずにあんなこと言っちゃって」



申し訳なさそうにあたしを見る。
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