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最終章~あたしの大事な人~
代わりはいない
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「心海!お待たせ!」
東京。
卒業式に出れなかった暁が、学校に手続きをしに来ていた。
たまたま休みだったあたしはそれを大学の前で待っていた。
「ちゃんと卒業できた?」
「当たり前だし。俺を誰だと……「はいはい」
言われることは分かってるので、手で暁の口を塞ぐ。
「……ったく、お前くらいだよ。俺にそんな態度なの」
「ん?いやだ?」
「いや、別に……昔からそこが好きだったから」
少し照れくさそうに話す。
「暁ってたまーに可愛くなるよね」
「うるせーな。あっちの教授にも言われた」
「教授に?」
「俺さ、向こうでクール王子とか言われてたらしいの」
「うわー」
暁は心を許した人の前でしか本性を見せず、まわりにはほんとクールだから騙される人が多い。
「うわーってなんだよ」
あたしの鼻を摘む。
「いたいー!だって、こんなにクールじゃなくてただの横暴なワガママ王子なのにね?」
「言うようになったな……」
はぁっとため息をつく。
「で?教授がどうしたって?」
「なかなかロマンチックなんだなとか言われたよ」
「えー?暁、何言ったの?」
そんなに暁にロマンチストな部分なんてあっただろうか。
俺様で横暴でしかないのに。
「卒業式に絶対帰りたかったから、絶対に受かりたいって言ったんだよ」
「……卒業式?」
「心海の誕生日だったろ。だから行く時から最短の合格しか考えてなかったんだよ」
「……暁」
暁の心意気がすごく嬉しかった。
あたしの誕生日を覚えててくれたことも、その日になんとしても帰ってこようとしてたことも。
「親父のとこ行こう」
「社長……?」
「うん。心海も一緒に」
「え……」
社長のところに行くとなると、さすがに気後れしてしまう。
あたしは一社員でしかないし、それにまた反対されるかもしれない。
「大丈夫だよ。親父はもう萌香さんと結婚とか考えてないから」
不安を感じ取ったのか、あたしの手をぎゅっと握る。
「う、うん……」
「って言っても不安だよな。高校ん時も今回も俺たちの仲を引き裂こうとしたのは親父だもんな」
「……っ」
あの頃のあたしは社長に会ってはいないけど、暁にあの言葉を言わせて離れさせたのは他でもない社長で。
あの時、暁に言われた言葉を思い出すともう違うって分かってるのに未だに胸が痛む。
たった2週間くらいだったけど、毎日暁はあたしを追いかけてきてて最初は構わないつもりだったのにいつの間にか楽しみになってた。
だから、暁があたしから離れていくことがショックで仕方なかった。
「もし、また親父が反対するようなことがあれば俺は会社なんて捨ててもいいから」
「……え?」
「会社なんて他にいくらでもある。資格活かせばどこだって就職できる」
「うん……」
暁は勉強もできるし、小さい頃から経営学を社長のそばで学んできてるからたしかに就職に苦労はしないだろう。
「でもさ、心海は1人だけなんだよ」
「暁……」
暁の言葉にじわじわと涙が溢れてくる。
「おい、なんで泣くんだよ」
慌てたようにシャツの裾であたしの涙を拭う。
「そんな言葉言われたことないもん……」
「本心だから。心海の代わりになるものなんてないんだ。それなら俺は会社よりも心海をとる」
「……ありがとう」
自分じゃなきゃダメだと言ってくれること。
この言葉ほど嬉しいものはないのかもしれない。
〝好き〟とか〝愛してる〟なんて言葉はもちろん嬉しいけど、でもそれ以上に〝代わりはいない〟と言われることが一番嬉しい。
「だからさ、親父のとこ一緒に行こう。俺を信じて」
「……うん、わかった」
誰に何を言われたって平気。
この手を握っていれば、離さなければ幸せでいれるから。
「お前は俺に飼われたんだからさ」
「あ、それまだ有効だったんだ」
「ずっとお前は俺のなんだから、ずっと有効に決まってんだろ」
この主従関係は解消されることはなさそうだなと思うけど、でもそれがあたしたちなのかもしれない。
東京。
卒業式に出れなかった暁が、学校に手続きをしに来ていた。
たまたま休みだったあたしはそれを大学の前で待っていた。
「ちゃんと卒業できた?」
「当たり前だし。俺を誰だと……「はいはい」
言われることは分かってるので、手で暁の口を塞ぐ。
「……ったく、お前くらいだよ。俺にそんな態度なの」
「ん?いやだ?」
「いや、別に……昔からそこが好きだったから」
少し照れくさそうに話す。
「暁ってたまーに可愛くなるよね」
「うるせーな。あっちの教授にも言われた」
「教授に?」
「俺さ、向こうでクール王子とか言われてたらしいの」
「うわー」
暁は心を許した人の前でしか本性を見せず、まわりにはほんとクールだから騙される人が多い。
「うわーってなんだよ」
あたしの鼻を摘む。
「いたいー!だって、こんなにクールじゃなくてただの横暴なワガママ王子なのにね?」
「言うようになったな……」
はぁっとため息をつく。
「で?教授がどうしたって?」
「なかなかロマンチックなんだなとか言われたよ」
「えー?暁、何言ったの?」
そんなに暁にロマンチストな部分なんてあっただろうか。
俺様で横暴でしかないのに。
「卒業式に絶対帰りたかったから、絶対に受かりたいって言ったんだよ」
「……卒業式?」
「心海の誕生日だったろ。だから行く時から最短の合格しか考えてなかったんだよ」
「……暁」
暁の心意気がすごく嬉しかった。
あたしの誕生日を覚えててくれたことも、その日になんとしても帰ってこようとしてたことも。
「親父のとこ行こう」
「社長……?」
「うん。心海も一緒に」
「え……」
社長のところに行くとなると、さすがに気後れしてしまう。
あたしは一社員でしかないし、それにまた反対されるかもしれない。
「大丈夫だよ。親父はもう萌香さんと結婚とか考えてないから」
不安を感じ取ったのか、あたしの手をぎゅっと握る。
「う、うん……」
「って言っても不安だよな。高校ん時も今回も俺たちの仲を引き裂こうとしたのは親父だもんな」
「……っ」
あの頃のあたしは社長に会ってはいないけど、暁にあの言葉を言わせて離れさせたのは他でもない社長で。
あの時、暁に言われた言葉を思い出すともう違うって分かってるのに未だに胸が痛む。
たった2週間くらいだったけど、毎日暁はあたしを追いかけてきてて最初は構わないつもりだったのにいつの間にか楽しみになってた。
だから、暁があたしから離れていくことがショックで仕方なかった。
「もし、また親父が反対するようなことがあれば俺は会社なんて捨ててもいいから」
「……え?」
「会社なんて他にいくらでもある。資格活かせばどこだって就職できる」
「うん……」
暁は勉強もできるし、小さい頃から経営学を社長のそばで学んできてるからたしかに就職に苦労はしないだろう。
「でもさ、心海は1人だけなんだよ」
「暁……」
暁の言葉にじわじわと涙が溢れてくる。
「おい、なんで泣くんだよ」
慌てたようにシャツの裾であたしの涙を拭う。
「そんな言葉言われたことないもん……」
「本心だから。心海の代わりになるものなんてないんだ。それなら俺は会社よりも心海をとる」
「……ありがとう」
自分じゃなきゃダメだと言ってくれること。
この言葉ほど嬉しいものはないのかもしれない。
〝好き〟とか〝愛してる〟なんて言葉はもちろん嬉しいけど、でもそれ以上に〝代わりはいない〟と言われることが一番嬉しい。
「だからさ、親父のとこ一緒に行こう。俺を信じて」
「……うん、わかった」
誰に何を言われたって平気。
この手を握っていれば、離さなければ幸せでいれるから。
「お前は俺に飼われたんだからさ」
「あ、それまだ有効だったんだ」
「ずっとお前は俺のなんだから、ずっと有効に決まってんだろ」
この主従関係は解消されることはなさそうだなと思うけど、でもそれがあたしたちなのかもしれない。
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