生徒との1年間

スオン

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顧問2年目08月

顧問2年目08月 1

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(まずいまずいまずい・・・・)

 八月に入ったばかりの昼下がりの高校。
 焦りながら歩く。こんなに焦ってはいるものの、一応教師だから廊下を走るわけにはいかない。
 夏用スラックスに包まれた太腿を少しでも早く少しでも前へと繰り返す。巨体の立成が肩を切って競歩のようにせかせかと歩いていると廊下が狭く見える。

「せんせー焦ってる~!」
「急げ急げー!」
「せんせーじゃあねぇ~~~」
「おうっ!!お前らも寄り道すんなよっ!」

 声をかけるのは通り過ぎる何人かの生徒たち。
 大人を舐め腐ったような軽い言い方だが、挨拶してくるだけで可愛い生徒認定してしまうのは我ながら甘いなぁ。こっちは切羽詰まった状態だというのに歩きながらヤケクソスマイルで返してやる。

 時間にルーズなわけではないが、今日は本当にうっかりしていた。
 職員会議の時間が迫っているというのに、自分の作業を優先していたのだ。

 ようやく期末試験が終わったというのに、2週間先の夏期講習の準備が完了していなかったのだ。
 一応ここは進学校なのだが、地方であるというのもあり、都会のソレと比べてもそこまで学習速度がはやいわけではない。
 このため、夏期講習もやってはいるものの、1年生は国、数、英が主要科目だ。
 立成は主に1年の世界史を担当しているため、夏期講習は特に予定が無いはずだったのだが、昨年の進学実績や都会の新学校の学習進捗を鑑み、理科系、社会系科目も1年生のうちから強化していくことになったのだ。

 そんなことが先週、急に決まったのだ。
 もう夏休みは始まって主要科目の夏期講習は始まってしまってい るにもかかわらず。
 他の先生方は、昨年までに準備した教材で凌ぐつもりのようでそこまでの焦りはなさそうだった。その上、理科系・社会系の講習は2週間先だ。時間的な余裕はまだある。
 だが、立成には急がなくてはならない理由がある。

 1つ目は昨年から赴任したため、そのような教材ネタが揃いきってないということ。
 そして2つ目はというと、来週からは・・・・ 
 
 ああ!もう!

 ただでさえ忙しいというのに・・・!

 つーか、何でこんなに職員室から会議室が離れているんだ!?

 次々と湧き上がる不満にイライラししながら左腕の銀色のアナログ腕時計を確認。
 
 まだ大丈夫のようだ。でも、これ時間合ってんのか?
 時間ギリギリまで職員室で作業していたのがまずかったかもしれない。他の教師が席を立ち始めたのを横目にキーボードを叩いていた自分を悔やむ。

 ようやくたどり着いた会議室の扉。

(ギリギリセーフ、か?)

 慌てて、しかし万一のことを考えて、静かにそっと戸を開き、顔をのぞかせてみる。
 もうほとんどの教師は集まっていたようだ。
 
 部屋の奥の方へと目を向ける。校長の席と教頭の席はまだ誰もいない。ということは、問題なしということだ。

(あっぶねぇ・・・あの2人が来る前にさっさと席に・・・あれ、他に席がまだ空いてる・・・?)

 空いている2つの席の1つの席に着く。ほっと一息つくと、身体中から一気に汗があふれ出てきた。
 額の汗が目に入ってきそうなほどだ。
 これでは、半袖シャツの脇下もくっきりと色が変わってしまっているだろう。

 まぁいいか。疲労感が気持ちいいほどに感じる。
 
 何十人もの大人たち。年齢も性別もバラバラだ。
 べらべらと互いに談笑している。これだけを切り取ると、みんな子供ようなものだった。

 ぼんやりと一番うるさいエリアに目を向けると、体育教師でサッカー部顧問の角田が、周りの男性教師数人とべらべらと喋っている。
 こういうとき、いつもうるさい男だった。
 声も無駄に大きく、立成よりも体格がデカいため存在感もあるから、そう感じるのだろうか。とにかく、なんというか、同じ空間にいるだけでちょっと心が疲れてしまう男だ。

 ふと、こちらの視線に気づいたのか、その角田が一瞬立成の方を見やったように感じた。

(あん?気のせいか・・・?)

 すぐに視線をこちらから外した。だが。 

 すごく、嫌な顔をしていた。ように見えた。
 眉間に皺が寄り、眉も吊り上がっている。そしてあの目。

 睨んだとか、見下したとか、そういう顔ではない。ただ、嫌な感じのする見方だった。

(なんだ・・・?)
 
 そんなことを考えていたら、扉が開いて校長と教頭が入ってきた。 

「それでは今月の会議を始めますね。皆さん揃ってますかね、まずは3年主任・・・」
「・・・す、すみません!遅れました!」

 教頭が音頭をとり、今月の職員会議が始まった瞬間に、バタバタという忙しない足音と、女の声、そして会議室の扉が開く音が響いた。 

「はぁ。吉沢先生。時間に余裕を持つようにしてください」
「はい!すみません!気をつけます!」

 入ってきたのは養護教諭の吉沢だった。
 遅れて来たのを気にしたのか、呆れたことを隠しきれていない教頭の言葉に元気に返す。
 大人なのに背が低いからまるで女子生徒のようだ。

 吉沢が空いている席を探している。ん?あれ?てことは・・・

「失礼します」

 隣に座ってきた!

 思わず吉沢を見てなんとなくお辞儀をすると、吉沢も少し困ったような顔でにこっと笑ってくる。

(・・・・!かわいい・・・・!それに、今日はすごい薄着だ・・・・!)

 養護教師との関わりは毎日あるもよではない。
 久しぶりに目にした吉沢の姿に癒されながらも、夏らしく薄手のシャツを着た上半身、サマーパンツの下半身の女性が隣にいると思うと、雄の欲求が暴走しそうになってしまう。

「め、珍しいですね、吉沢先生が遅れるなんて」

 不埒な妄想を無理やりにも断ち切るかのように、立成はぼそぼそと小声で吉沢に話しかけた。3年学年主任からの、履修状況や希望大学リストの説明等の説明中だが、まるで授業中のひそひそ話のようだった。

「本当にごめんなさい・・・・」
「い、いや、いいんですよ別に!」
「実はさっきまで、ちょっと怪我した子の相手を・・・」
「あ、それじゃ仕方ないですね。でもいんですか、来ちゃって?」
「だって、処置はもうとっくに終わってて、その後お喋りしてただけですもん。30分くらい」
「えぇっ!」

 黒髪を少しだけ揺らしながらウフフっと笑う。その声があまりにも可憐でかわいくて、立成も自然とつられて顔をだらしなくさせながら笑った。
 こんな状況であるため必死に声を抑えたが、もしも職員会議中ではなかったならば、どれだけ大声で笑ってあげられただろうか。

(あ、やべ、俺、汗臭いんじゃ・・・・)

 立成は大きな鼻をヒクヒクさせる。会議中だから露骨に腋に鼻をやれないが、どうだろうか?

(・・・臭えかな?うわ、最悪じゃねぇか?こんな匂いしたら吉沢先生に嫌われちまう・・・!)

 そんなことにヒヤヒヤしていると、また吉沢と目が合う。

「あの、もしかして私、汗臭いですか?」
「えっ!」
「さっき急いじゃって、汗かいちゃったんで・・・・」
「いやいや!全然!大丈夫ですよ!」

 むしろいい匂いです・・・・と言うのは色々な意味で大変なことになりそうなので心の中にしまっておいた。

「・・・それでは次の議題に移りますね。次は養護部からの報告ですね。吉沢先生お願いしますよ」

「あ、はい!それではご説明します!あ、資料はこちらですので回していただければ・・・・」

 資料を回し回され、吉沢からの説明がされている。

 あー、声も可愛いなぁ。こんなに若いのに説明もしっかりしているなぁ。

 もはやおっさんと言われても仕方ないような感想を脳内で垂れ流しながらも、普段の忙しない日常により少し荒んだ心を浄化している最中のことだった。

(・・・・?)
 
 スラックスのポケットしまっていたスマートホンが振動した。

 ん?なんだ?

 教師という立場上、昼の間は着信音は切っている。そもそも、ただのアプリ通知ならば何もないはずだ。ということは、それ以外の何かの通知だろうか?

「えー、次のページに書いておりますように、他校における保健室の病床人手当の状況と方法、そしてそれらの管理についての取り組みを踏まえまして・・・・」
 
 周りを見ると、他の教師たちは手元にある吉沢の資料を見ているようだ。

 ごめん!吉沢先生!

 心の中で吉沢に謝罪しながら、机の下でこっそりスマホを見る。
 メッセージが来たようだ。誰からだ?

「!!」

 瞳孔が開く。
 まさかの清野からだった。
 
 会議室に到着してから大分落ち着いてきたというのに、一瞬にして汗ばみ始める。
 しかし、先ほどまでとは違う汗に感じていた。

 な、なんだ・・・?
 
 清野から連絡など、そうそう来るものではない。そのせいもあってか、先月のあの出来事が一気に脳裏に浮かび上がる。

 まずい・・・・
 これ、先月の旅館のことも絡んでる、よな?
 まさか、また、・・・?
 とりあえず、今は、確認はよそう・・・・

 スマホの画面を凝視した後、そっとポケット中へとしまい込んだ。

「それでは他になにかある方は・・・」
 
 その後も考えるとはなしにモヤモヤとしながら考え事をしていたら、いつの間にか時間が過ぎていた。どうやら職員会議は終わったようだ。

 後半はすっかり話を聞かなかったが、まあ大丈夫だろう。
 解散となり、会議室から出ていく教師たち。

(とりあえず後で清野先生からのメッセージを確認するか・・)

 そう思いながら椅子から立ち上がった。

「あの、立成先生・・・」

「は、はいっー?」

 いきなり吉沢に呼び止められ、裏返った声が出てしまう。

(やべっ!スマホをやってるのを見られたか?もし、内容がバレたらっ・・・・・・?)

 しかし、自分でも中身を確認していないのだから、わかるはずもないというのに気付いた。しかしビビってしまった立成は、まるで自衛隊員が鬼軍曹に呼び出されたときのように背筋が伸び起立した姿勢をとっていた。

「あのですね・・・」
「吉沢先生!!」

 吉沢が何か言おうとした瞬間、嫌な声が聞こえてきた。角田が寄って来る。

「いやぁ、先ほどの資料のご説明がですね~・・・」

 他の教師たちは続々と会議室から退出していく。この場には3人だけになってしまった。
 巨体の角田が、小柄な吉沢を見下ろすかのように背を丸めて顔をのぞき込む。両手をハーフパンツのポケットに突っ込んだままに話している。
 格好だけ見ればイチャモンでもつけていそうではあるが、そうではないのは角田のだらしない顔を見れば丸わかりだ。

 聞くではなしに角田の話を聞いていると、特段込み入った話というわけでもなさそうだ。ただただ、吉沢と話をしようとしているようだが・・・?

(・・・こいつ、まさか?)

 立成は思いついた。
 あまりにも簡単すぎること・・・

 そんな立成の思惑をよそに、角田から聞かれたことについて吉沢が考え込む。
 その間、話が止まった角田が、丸めた背を伸ばして、吉沢の頭上越しにこちらを見てきた。

(はあっ!?)

 その顔。
 先程の職員会議の時と同じ顔、だった。
 またもしてきたのだ。あの、嫌な顔を。

(なーんだっっ!?)

 さすがに立成も顔に出てしまった。

 もともとそこまで親しい間からではない。科目も担当学年も異なるため、接する機会だって少ないのだ。
 それなのに・・・それなのに、何だか前よりも態度が悪化しているような。

「あ、そうだ、これはですね・・・」
「・・・なるほど!さすがですねぇ、吉沢先生!助かります!」
「いえいえ、そんな」
「ハハハっ、それじゃあ!」
「はい、お疲れさまです」

 ガラガラと扉を開けて体育教師は出ていった。

「・・・あの、立成先生?」
「・・・・はっ」
「すっごく顔が怖いですよ?」
「えぇっ!」

 え、俺、そんな顔になってた!?

 両手で顔をぎりぎりと撫であげつまみ上げ、なんとか無理やり表情筋をもとに戻そうとする。大柄男のコミカルな作法を目の前でやられて吉沢は思わず吹き出していた。

「フフフッ、もうっ!・・・でも、わかります。なんだか、角田先生、最近ちょっと・・・」
「な、なにかあったんですか?」

 笑っていた吉沢の顔が少しだけ曇る。

 吉沢先生にこんな顔をさせるなんて!
 聞き捨てならない話だっ!

「別にどうってわけではないんですが・・・なんだか、ちょっと・・・」

 どうにも歯切れが悪い。
 が、分からなくもない。こちらも何となくだが、言わんとしていること、そのニュアンスは伝わってくる。

「具体的にどうこう、って話ではないので、なかなか言いづらいのですが・・・とっても明るくて元気な方だとは思うのですが・・・・その、接するのがちょっと・・・」
「ま、まぁ、前からそういう部分はありましたよね」

 必死に言葉を濁しているのが伝わってくる。
 はっきりとした言わないのは、彼女の育ちの良さでもあり、優しさでもあるだろう。

「でも最近はちょっとそれが度を過ぎているような・・・・それに・・・」
「?」
「最近、サッカー部員の子たちがよく保健室に来るんですよ」
「え、それは・・・・もしかして」
「ええ、皆部活で怪我をしちゃったみたいでて・・・・」
「あ、そっちですか」
「??なんですか、そっちって・・・?」
「い、いえ!こっちの話です!お気になさらず!」

 サッカー部員が来るのは『吉沢先生が可愛いから・・・・』だと思ったのだが、その言葉については立成は自分の心の中に大切にしまい込んだ。
 こんなことを相手に言えるくらいの軽さと会話センスがあったのならば、立成も未だに純潔を保ってなどいないだろうということを、本人は気付いてもいない。

「サッカー部、高校総体でいい成績だったから、部活も激しくなっているのかもしれません」
「あー、それはあるかもしれませんね」
「それにしたって、明らかに件数が増えているんです。私、結構心配で・・・」

 あぁ、優しいんだなぁ・・・

 うんうんと大きく頷きながら吉沢の話を聞く。

「立成先生も、生徒に激しくしちゃダメですよ?」
「えっ!?お、俺はそんなことをしませんよっ!?」
「ふふっ。そうですよね。それに、筒井君も頑張ってるみたいだし」

 ん?急になんで筒井?
 ・・・あ、そうか、あいつ保険委員だっけ。

「筒井君、楽しみにしてるみたいですよ。来週から弓道部の合宿で、そのあといよいよインターハイなんですって?」
「そうなんです!」
「地方大会は結構惜しいとこまでいったみたいですね。それでもすごいねって言ったんですけど、インターハイは絶対入賞するって意気込んでましたよ」

 そうだ。
 先月の地方大会、筒井は予選を通り、決勝まで残り、順位決定戦で敗れたのだ。
 あと少し、あと2本、連続で的中していれば、地方大会6位入賞、というところまでいけたのだった。
 大会終了後、筒井は晴れ晴れとした様子だった。悔いなし、全部出せた、そんな感じだった。

 それなのに、そんな闘志を燃やしていただなんて。
 そんな筒井のことを話されると、立成は自然と顔が緩んだ。それは、今日の立成の顔の中で、一番自然な笑顔だった。

「あいつも頑張ってます。だから、俺も頑張らないとですねっ!」
「頑張るのはよろしいですが、あんまり激しい練習はダメですよ!?」
「はいっ!わかりました!!」
「もうっ!ふざけないでっ!」

 シャキッとした声で吉沢に叱咤され、思わず立成は右手で敬礼した。
 そんないちゃついているかのような2人の声を、扉越しに鋭く睨んでいる男の影があった。

ーーーーーーーーー

 夕方近く。弓道場。

 吉沢との楽しすぎる会話に浮かれに浮かれた立成は、嫌でたまらない夏期講習準備という業務を明日へと後回しにして弓道場にやって来た。

 もう夏休みに入っている。

 来週は合宿だ。

 再来週はIH。

 ・・・筒井にとって最後の大会だ。
 泣いても、笑っても、これが最後だ。

 ガラガラと古めかしい開き戸を開ける。

 会議で参加するのが遅れたためか、もう既に活動は終わっていたようで、自主練習している2人がいるだけだった。

 そのうちの1人は新部長の川崎だ。

 6月の高校総体の団体戦では途中で大きく崩れた。これは2ヶ月前のことだが、最近の練習や学校での顔をみる限りでは元気そうだ。しばらく後を引きずりそうな気配はあったが、ここ一か月くらいで以前どおり、いや、以前よりもずっと、練習する姿に『気』を感じる。やはり、部長となったからだろうか。とにかく、どうやらこいつはもう大丈夫みたいだな。

 そんなことを考えながら、畳で10歳以上年の離れた少年たちの射を眺めていた。

 そして、もう1人の居残り少年はというと。

「あーーーー、疲れた」
「ん?もう今日は終わりか?筒井?」
「うん、疲れちゃったし、それに」
「?」
「暑っついし」

 練習を終えて畳に上がってきた筒井が手団扇で顔をあおぐ。その顔には煌めくような汗がポツポツとついている。あまり動かない競技で、道着に袴とそこまで暑苦しい格好ではないのに、夏の暑さはしんどいものだ。

 同じ汗だというのに、自分とは全然違うもののように感じる。
 代謝がいいし、今時の細身体型だからか。脂っぽさが微塵もない。本当に同じ男なのだろうかとさえ思ってしまう。
 
「そういえば、今度のインターハイ、森田たちと同じところに泊るの?」
「えっ!?」

 タイムリーすぎる筒井からの確認に不必要なほど驚いてしまった。

 と、いうのも。弓道場に来る前、清野からの連絡は確認していた。その内容は、思ったものと少し違うものだったのだ。

『今回も同じ場所に泊まるかい?』

 職員会議であのときの焦りを思い出してしまったのだ。

 清野からの連絡・・・

 もし、清野からのこの連絡が、もっと、『アレ』な内容だったらと思うと・・・

 ゴクリ。

 立成の太い喉仏が揺れる。知らず知らずのうちに唾を飲み込んでいた。

(いかんいかん!)

 肌色のイメージ図が勝手に湧き上がってくる。慌ててそんな不埒な妄想を取り消す。

 駄目だ。あんなこと、もうあってはいけない。

 それに・・・

 チラリと目の前の筒井を見る。

 生徒に抱かれるのもおかしな話ではあるが、それ以上に教師同士で盛り合ったてしまったなど、あってはならない。

 こんなこと、筒井には絶対に言えない・・・

 立成の勘ではあるが、何となく、言わないほうがいい気がしていた。おまけに、それを話すとしたら、先月のことも、先々月のことも・・・ここの所、立て続けで破廉恥な目にあってしまっていることを、恥を晒すかのように打ち明けることなど、できるはずがなかった。

 絶対、悟られてはいけない・・・!

 このため、立成は自分では気づいてはいないが、普段以上に陽気に振る舞うようになっていたのだった。

「ん?なに、どしたの?」
「いや、別に・・・あぁ、インターハイの泊まる場所かだな。今回のお泊りは森田くんたちとは別々だ」
「ふーん、残念だなぁ」
「ん?そうなのか?」
「まぁね。森田と会うのも、これで最後になるだろうし」
「そうか・・・でも大学で一緒になるかもしれねぇぞ」
「それはないよ、あいつは就職希望みたいだし」
「そうなのか!?あいつがぁ?」

 へぇ、彼は来年就職なのか。
 なんだかイメージが湧かないな。結構変わった子だと思っていたから、てっきりアカデミックな方面に行くのかと思ったのだが、人生は色々なのだな。

「ちなみに、俺らはどこに泊まるの?」
「実は、今回はなぁ・・・」

 スマホで宿泊先のサイトを見せる。

「えぇ!何ここ!?」
「なぁ!ひどいよなぁ!?」
「・・・なんで、ここなの?」
「実はなぁ・・・あ、永山先生て知ってるか?前の校長先生やってた人。その人の知り合いがこの民宿みたいなところをやってるみたいでな、そのツテで・・・永山先生も張り切ってしまっているようでな、俺の知らないうちに決められちまってたようでな」
「・・・うぅ、せっかくのインターハイなのになぁ・・・」

 肩を下ろす筒井。

 あぁ、明らかにガッカリしてんな、コイツ。

 もとより、今回は清野からの誘いは断るつもりだったのだ。先月のこともあるが、我が校のお偉いさんの知り合いだという宿泊所に、平教員の自分がキャンセルなどできるはずもないのだった。

 とはいえ、その施設がなぁ・・・

「ま、まぁ、気を落とすな!ほら、永山先生がいうには、ここ、料理うまいみたいだぞ!あ、あと、海も近いらしいぞ!きっと景色もいいぞぉっ!なっ、なっ!」
「うーん、そうだね・・・」
「よしっ!とりあえず、まずは合宿だぁっ!がんばるぞぉっ!!」

 筒井の細身の両肩を背後から握りながら、わざと臭さ全開で筒井を焚きつける。我ながらあまりにも嘘くさい空元気だとは思うが、決まってしまったものは仕方ない。

 まずは合宿を無事に乗り換えなければ。

 とはいえ、その前に夏期講習の準備を片付けないといけないな・・・・・
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