生徒との1年間

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顧問2年目05月

顧問2年目05月 6

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「おやっ・・・」
「ほ、ほら、どう見たってただの普通のパンツじゃないですか。今日はあのパンツを履いてないんですよ」
「むっ・・・そのようですね」
 
 ガバッとジャージズボンを膝まで下ろした立成は、自身が身に着けている下着を沼田に見せつけた。
 ライトグレーのボクサーブリーフだ。柄の無い無地。少し股上が深い野暮ったいデザインで、見るからに安物であり、いかにも下着にこだわりなんてない男が適当に身に着けていそうな代物だ。そんなわざわざ人に見せるほどてもない自分が履いている下着を、沼田に対してアピールするように誇示して見せる様子はまるで己が罪の潔白を主張しているようで、滑稽な姿だった。
 知り合ったばかりである男からの下着を見せろという意図がよくわからない要求に対して、立成は元から厳つい顔をさらに険しくしている。無意識ではあるが沼田を威嚇しているのだ。しかし、その顔は火照ったように赤く染まっていることから、立成が羞恥しているのは一目瞭然だった。

「ふむ、確かに違いましたね。至って普通のボクサーブリーフをお召のようですね。失礼しました」

 口では丁寧な言葉遣いで謝罪をしながらも、その眼は立成の風貌から離さない。全体的にがっしりとしていて逞しく筋肉を有した体躯、腕や太股、少し弛んだ腹回りや胸部に豊かな体毛が生い茂っている雄みのある身体。膝下にジャージズボンをまとわりつかせ、下腹部には安っぽいライトグレーのボクサーブリーフを履いただけの高校教師の姿。そのグレーの布地はぴっちりと立成の身体に張り付き、股間にある男根や睾丸、そして何よりデカ尻の膨らみをくっきりと示している。おまけにそのボクサーブリーフを“ほらっほらっ”と見せつけているのだ。男らしい顔と身体をしているというのに、当人の顔は羞恥により赤く染まり、表情は屈辱により歪んでいる。そんな立成の屈辱的なパンツお披露目ショーの様子を録画しているかのように沼田は目を話さなかった。

(な、なんだ?あっさりと・・・まぁいいか。つーか何なんだよこのおっさんは!)

 沼田の謝罪の言葉を聞き、腑に落ちないものの安堵した立成は、思わずため息を吐いていた。
 ほぉ~っ、と。それはこれまでの問答のことを考えると、あからさまに安心したものだった。おまけに立成の険しかった表情が一気に緩んだ。
 そんな立成の変化を沼田は見逃してはいなかった。

 立成はこれ以上の会話を露骨に拒否するかのように沼田に背を向けた。そのまま壁を向き、膝下に引っかかっていいたズボンを完全に下ろし、そのまま両脚から抜き取った。立成が見ていないことをいいことに、沼田はその後ろ姿を凝視する。若い頃にしっかりと鍛練したであろう背筋が見える広い背中。薄く毛が生えている腰周り。そしてその下にあるボクサーブリーフに包まれている、膨らみや割れ目がわかるほどに発達した臀部。そんな自分の妖艶な後ろ姿を沼田に対して披露してしまっていた。
 立成がボクサーブリーフ一丁とほぼ全裸になったタイミングで、またも沼田から問いかけられる。

「ですが、立成先生」
「何ですか?もうそろそろ時間が」
「そのボクサーブリーフの中に“アレ”を履いているということは?」
「?・・・なぁっ!何を言って・・・そ、そんなことは」
「確かにおかしなことではありますね。パンツの中にパンツを履くというのは。ただ、念のためですので」

 まさかの問いかけにたじろいでしまう。ぐいと沼田がにじみ寄り、背を向けている立成の尻の方へその両手を向けてきた。
 立成は慌ててその手を遮ろうとするが、あっさりと沼田にボクサーブリーフのゴムを掴まれてしまう。そのままグイッグイッと下ろそうとしてくる。立成のボクサーブリーフを脱がそうとしてくる。

(急に何だよっ!ってやべぇ!)

 立成はそれでも脱がされないよう必死になる。自身もボクサーブリーフをがっしりと掴み、沼田の手とは逆方向、上に無理やり引き上げる。毛の生えた太い肢をガバっとガニ股に開いて膝を曲げて抵抗した。
 
「なっ!何ですか!本当に!ちょっ!やめろっ!」
「随分慌てているようですね」
「あ、当たり前だっ、俺のパンツを、そんな・・・」

 2人の攻防は止まらない。上へ。下へ。立成のライトグレーのボクサーブリーフがビロビロになりそうなほどに強い力であべこべに引っ張られる。まるで小学生のいじめの現場のようだ。

(絶対にダメだっ!パンツを脱がされたら、俺は・・・)

 立成は混乱が止まらなかった。
 何なんだこいつは。
 異常だ。異常者だ。
 紳士的な男だと思っていた。
 人格者だと思ってしまった。
 そんなもの全くの間違いだった。

 立成は必死だった。声を荒げることも考えた。しかし、こんな道場で大声をだしたらどうなるか。
 既に道場には男たちが集っているのだ。自分が助けを求める。男たちが自分たちの周りに集まって来る。その目に映るは、初老の男にボクサーブリーフを脱がされまいと、腰を落としたガニ股で必死にパンツのゴムを引っ張り抵抗している、まるでいじめられているかのような自分の姿・・・
 何と言われるだろう。何と思われるだろう。
 
 そんな進展を想像した立成はぞっとして思わず腕の力が鈍ってしまい、そして・・・

「あぁっ!!」
「おやおおや。やっぱり」

 立成の必死の抵抗も空しく、沼田の手により無残にもボクサーブリーフがずり下げられてしまった。
 ライトグレーの布が取り払われたそこにあるのは立成の毛深い巨尻。その尻には、しっかりとケツ割れが履かされていた。
 ここまで沼田の追求を散々否定してきた立成だが、実際は沼田の推測通り、今日はケツ割れを履いてきたのだ。ただし、ボクサーブリーフの中にである。2月の昇段試験のときに更衣室でケツ割れを履いたデカ尻を披露してしまった赤っ恥の反省を生かし、下着を二重履きしていたのだった。
 そこまでしてケツ割れを履く意味はないはずだった。しかし昇段試験のときも袴の下にケツ割れを履いていたことで何とか1級に合格することができた。合格してしまったのだ。学生時代からゲンを担ぐのこと自体がルーティンとなっている立成にとっては、その姿を見られるのが恥ずかしいとはいえ、そのゲンを捨て去ることの方が気持ち悪かったのだ。

 今日の朝を思い返す。筒井が来訪したことで時間が無いと勘違いして慌てて身支度した。それでも、大会に必要なものは昨晩のうちに備えていたため事なきを得たのだ。しかし、その用意していた衣服の中に、ケツ割れまでも準備していたのだった。
 大した規模でもない大会だ。順位などあってないようなものだ。それだというのに昨晩の立成は念のためにとクローゼットから引っ張り出していたのだ。明日の朝の気分で履くかどうか決めよう、と。多分履かないでいいだろうけどな、と。軽い考えだった。それが、朝の射精寸前までやってしまったクッション擦りつけオナニーと筒井の出迎えというドタバタの中、判断力が鈍ったのもありそのまま目の前にあったケツ割れを手に取り、足を通してしまっていたのだった。
 立成はそれを履いた後に思いついてしまう。今日の大会は更衣室はどうなっているだ?まさか、2月の二の舞になるのではないか?ケツ割れを諦めるも考えたが、ゲンを捨てるのも何だか気持ち悪い。部屋で袴まで身に着けてしままうにしても、帯を巻く必要があるため筒井を待たせ過ぎてしまう。そのとき・

・・・そうだ、この上に普通のパンツを履けば・・・

 そう思った立成は、干してある洗濯物から履きなれたライトグレーのボクサーブリーフをもぎ取り足を通したのだった。

「いやはや。これはこれは」
「べ、別にいいじゃないですか!何なんですかさっきから」
「先生なのに嘘はいけませんな?立成先生」
「う、嘘なんて、そんな、くっ」
「履いてないと言えば履いているし。一体どういうことなんでしょうな?」

 暴かれてしまった。おそらく今、この世界で一番嫌な相手に。
 自分の下着事情をあっさりと見破られた立成は、まるで捕食動物の鋭い目に睨まれて獲物とされた小動物のように動けなくなる。たかが下着を見られただけだというのに。それでも、自分がケツ割れを履いている、おまけにそれを恥じてボクサーブリーフで隠してしまっていることまでを看破されたことで立成は、自分の全てを見透かされたような気分に陥っていた。どうすればいいかなんてわからなくなるほど頭も回っていない。おまけに、見られた相手があの時と同じ男だなんて。
 そんな立成の様子を沼田はまじろがずに見つめてくる。なんとかこの場をやり過ごそうとする付け焼刃の立成の言葉を無視し、恥を上塗りするかのような問いかけにより心理的に逃げ場を無くしてくる。その言葉の威力により、精神的に立成は追い詰められた気分になった。
 そんな精神状態の立成が動くことができないことをいいことに、捕獲者の言動はさらに大胆に、そして露骨になっていく。その少し皺がつき年齢を感じさせる沼田の両手が、全く布に覆われていない立成の生尻へと伸びた。

「ちょっ・・・何を・・・」
「全く、破廉恥な先生ですな」
「あんた、ケツは・・・」

 中肉中背の沼田が相手なのだ。長身の立成なら簡単に抵抗できるはずであるというのに、身体がたじろいでしまう。流れるような整えられた銀髪だが、それは老齢を感じさせずむしろ貫禄に繋がっている。
 沼田の手が肉感的で柔らかそうな臀部をさする。愛おしい愛玩動物を愛でるような手付きだ。尻タブ表面が黒い毛に覆われたその尻は確かに獣のそれのようではあった。
 思いもよらない沼田の行動に動揺した。先ほどまでの談笑していたときとは全く異なるのだ。立成は振り返ることすら躊躇っていた。背後にいる自分の尻を撫でている沼田を恐ろしく感じたからだ。
 そんな沼田から発せられる圧に負けてしまったのだろう。立成はバランスを崩してしまい思わず道場の壁に手を突いた。頭の中までフラフラとしてしまい上体も壁に預けてしまう。背後にいる沼田にケツ割れだけを履いた恥ずかしい巨尻を捧げたような形になってしまった。立成の体勢の変化でより、沼田の手つきがさらに大胆になる。

(なっ・・・ここは柔道場なんだぞ?人が大勢がいるんだぞ!こんなとこで・・・!!)

 尻を揉まれていた。立成の生肌の尻がその宛がわられた掌に刻まれた皺を感じてしまうほどに強く、激しく揉みしだかれていた。立成の臀部に蓄えられたたっぷりの脂肪。逞しさと豊満さを象徴しているかのようなそれを全て味わいつくすのではないかというほどだった。
 信じられなかった。自分が何をしたというのか。なぜこんな目に合うのか。そんなことばかりが頭に浮かんでしまうも気持ちだけが焦る。筒井には何度もされている行為ではあるものの、立成はこんな現実は受け入れられるものではなかった。無理もないことだった。

「ぐっ・・・そんなっ・・・」

 まるで重工な門を開くかのようにグイグイッと押し広げられた。尻タブを開かれてしまっていた。
 その肉厚な尻肉がどかされた後に残るものは他でもない。割れ目に生い茂っている黒く長い陰毛の中にうっすらとではあるが、わずかに立成の肛門が見えていた。
 沼田の手が何の躊躇もなくそのケツ毛をかき分けた。渦状に生えたケツ毛の中心にある、立成の赤黒く皺だらけの肛門がしっかりと沼田の目に焼き付けられてしまっていた。
  
(なぜ・・・?そこまでする・・・?この男は何なんだ・・・?沼田、こいつは、まさか・・・)
「ほお、これは・・・なるほどな」

 自分のケツの穴を見て“なるほど”とは?何を言っているのかわからなかった。
 こいつは男好きなのだろうか?だから自分が裸に剥かれている?
 そうであっても理解できない。会ったばかりの自分になぜここまで?
 立成の全身に鳥肌が立つ。身体が動かず、ただひたすら道場の壁をさすってしまう。
 羞恥よりも恐怖で嫌な汗が流れる。脇の汗腺からあふれる汗水はその量の多さから腋毛すらもすり抜け、ダラダラと立成の横腹まで流れ落ちていた。

「そろそろ開会式ですよ~!」

 大会の係員が更衣室である柔道場に声をかけていた。
 小さい道場であるというのに、この現実感のない現場にいる立成にとっては、まるで遠くから聞こえてきたかのようだった。自分が世界と切り離されたような感覚だった。
 談笑していた男たちがぞろぞろと引き戸に向かって行った。
 
(まずい!このままだとこいつと2人きりに・・・!)

 重度往生に静寂が訪れる。その場にいるのは沼田と立成の2人だけだ。 
 そんな場所で、ボクサーブリーフを無理やり下げられ、ケツを揉まれ、肛門までも晒されたのだ。
 このままでは、次は、この男に・・・

 恐怖だった。
 柔道場の壁に額を付けながら立成は必死に祈ってしまう。
 やめてくれ。
 本当にやめてくれ。
 そう願っていた。それだというのに。

 ゴクリ

 舌から溢れ出てくる唾をのんでいた。


 グググッ

 ケツ割れの中の肉も突き上がり、硬くなってしまっていた。



「はっはっはっ、それじゃ立成先生、お互い今日は頑張りましょうかね」
「ぐぅっ」

 沼田が驚くほどに明るい調子で言った。明らかに声のトーンが違っていた。
 あれだけ執着していたというのにあっさりと立成の尻から手を離し、沼田は去っていった。
 先ほどまでの問い詰めるような雰囲気からは、打って変わったものだった。まるで人格が変わってしまったかのようだった。

 1人残された立成。
 去っていく沼田の背を呆然としながら見つめる。肩が上下するほど息が上がってしまっていた。

(あいつは・・・あの男は、何なんだ・・・?)

 立成は周囲を見るが、立成の方を見ている者はいなかった。幸運なことに、先ほどまでの椿事は周囲のロッカーにより遮られていたようだ。
 不幸中の幸いにほっとしながらも心の中に引っかかる何かを感じながら、立成はバタバタと鞄から胴着を取り出した。

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