生徒との1年間

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顧問2年目07月

顧問2年目07月 21

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「えっ、本当にわかったのか?」
「なにがわかったんだよ!」
「チンポとパンツを弄っただけじゃねーか!」
「まぁ、待てって。安田の話を聞こうぜ」

 安田の宣言に騒ぎ立てる親父たち。だが、数名の親父は安田の発言に喧騒を収めようとしている。
 それはどこか、安田のことを信頼しきっているかのようだった。
 立成としては安田の言葉は恐怖しかなかった。

(わ、わかった、だと・・・!?何がわかったんだ?お、俺が童貞だってわかったのか・・・!?いや、そんなはずない!そんなはずは・・・大丈夫だ、どうせブラフだ。適当なことを言ってるだけだ。慌てるな・・・落ち着け、落ち着け・・・!)

 立成は内心はパニックになりながらも、それでも取り繕う。まるで安田が何を言おうが自分には関係ない、そんなことにはさらさら興味がないと言いたげな雰囲気を醸し出そうと必死に冷静さを演出する。まるで大人の男として最低限の経験はしているかのような、余裕のある佇まいだった。

(大丈夫・・・大丈夫だ。バレるなんてない。バレるはずがないんだ・・・)

 立成は己を戒める。そうだ、大丈夫なはずなのだ。今、安田にされたことといえば、むき出しになった裸を見られたことと、脱ぎ捨てられた自分の下着と丸出しの一物を箸で摘まれて弄られながらも観察されただけだ。何かを詰問されたわけじゃないのだ。そんなことだけでバレるはずがない。自分から口に出さなければ他人にはわかるはずがないのだ。自分の中で一番奥に閉じ込めた、あの忌まわしき秘密。絶対に暴かれてはならない呪のような秘め事。自分が汚れのない身であるという、目を向けたくないあの悍ましい事実を・・・
 
 この世界で自分以外でそれを知っているのは、生徒の筒井と、先月の県大会後のスナックにいたメンバーだけだ。
 筒井には3月に、新学期に向けた担任としての自己紹介の練習と称して学校の教室であるというのにスーツを脱がされて裸に剥かれ、体毛や一物、そしてコンプレックスのデカ尻をこれでもかと見せつけるようなことをさせられたのだ。立成の秘部をなぶられ、言葉で煽られ続けてしまったあまりに募り募った自身の官能がとうとう爆発してしまったあまりに、生徒に見本を見せる大人である教師であるというのにその己の最も恥ずべき部分を生徒に自ら包み隠さず白状してしまったのだった。
 先月のスナックでは、スナック嬢2人にからその逞しくも毛だらけの身体をからかわれた挙げ句、立成が見せるその初心な反応から嬢たちにソレを見抜かれてしまい、己のその身が清らかである事を高らかに宣言させられてしまったのだ。

 立成はそれ以外には誰一人にも打ち明けてはいないのだ。少なくとも30代になってからは誰にも、だ。
 そうだ。こんなこと、誰に話せというのだ。こんなものは、自分の心の中の奥の奥に、何重にもある扉、扉、扉・・・そんな奥深くの最深部にソレをしまっているのだ。立成の意地とプライドをかけてでも、ソレは明らかにしてはならないことだった。

 そんな立成の決意とは関係なく、親父たちの騒ぎが一通り落ち着いてから、安田は淡々とした口ぶりで語り始めた。

「よし、いいか・・・ちゃんと説明するから・・・そうだな。まずはこれ見てくれ。この先生のこのチンポを。根元から先端まで、全部すっぽりと包皮を被っているチンポだろ?」
「そんなのは見りゃわかるだろ」
「どこからどう見ても皮被りの包茎じゃねーか」
「分厚そうな皮だよなー!!」

(くそっ、この親父どもめが・・・!ひ、人のチンポを好き放題言いやがってっ!!)

 安田の観察結果の報告に沸き立つ親父たちの反応は、それでも立成を追い詰めるものだった。自分でもわかりきっている、包茎。33年間も付き合っている己の分身のことだ。わかっている。皮を被っていることなど。毎日見ているんだ。小便しているんだ。それでも、ここまで嘲るように言われてしまうと、それが事実だとしても頬を染めてしまうのだった。親父たちのそのあまりの言葉を選ばないその反応に、立成は羞恥を感じずにはいられなかった。

「まぁ、包茎なのは今はどうでもいいんだ。だが、ここ・・・この先っちょは、実はここには皮がないんだよ。少しだけだが中のアレが露出しているんだ。・・・ほら、こんな風にな」
「ひっ・・・」

 安田がまたも立成の一物を箸の先でいじくりだした。
 今度は自分が観察しやすいようにするためではなく、周囲の親父たちが見やすいように、立成のソレの先っちょを親父たちの方へと向きを変えている。
 それに応じるかのように、周囲の親父たちも立成のその一物の先端をよく見ようとにじり寄ってくる。

 親父たちはこれまで立成の一物のことを散々、包茎包茎と罵ってきたのだが、確かに安田が言うとおりのようだ。立成の一物その全てが包皮に包まれているわけではなかっだのだ。その先端。そこには確かに、僅かであるが露出した肉が垣間見えていた。

「へぇ~気が付かなかったな」
「本当だ、ちょっとだけだが見えてるな、中のあれが!」
「何だよ、ほんのちょっとじゃねえかよ」
「この先生は『完全包茎』じゃなかったんだな!」
「何だよ『完全包茎』って!」
「良かったな先生!『完全包茎』じゃなくってな!まっ、ほぼ包茎で良いようなもんだけどな!」
「カカカ!先生惜しいぞ!これからも頑張って毎日ムキムキするんだぞお!」
「見直したぜ先生!さすがは先生だっ!ちょっとは剥けるっちゃ剥けるんだな!まっ、これじゃあ包茎でしかないけどな!ギャハハハ!」

「ぐっ・・・くそっ!くそっ!!笑うんじゃねぇ!笑うな!人のチンポを笑うなぁぁっ!!やめろぉっ!!」

 誰かが言ったよくわからない単語、『完全包茎』ではないことを理解してもらったものの、馬鹿にされるのは変わらなかった。それほどにしっかりと立成の肉棒は皮に包まれているのだ。
 包茎であることがコンプレックスである立成ではあるため、ちょっとだけでも剝けているのはその自尊心を守るものの一つであったはずだ。しかし、その“ちょっとだけ”というのも、ここにいる親父たちからしたら鼻で笑うような可愛らしいものに過ぎなかったのだ。それを笑われ、子馬鹿にされてしまえば、立成は居ても立ってもいられなくなり、その厳つい顔を歪ませ芽をギュッと瞑るという窮地に陥った表情をしながらも口だけは一丁前に不毛過ぎる反論をしてしまうのだった。

「まぁまぁ、それくらいにしておいて・・・さて・・・これがこの先生の一物の真実なわけなんだか。これを見てお前らはどう思う?」
「どうって、別に」
「言ってもただの包茎じゃねーか?」
「包皮のことはもういいんだ。問題はその中身・・・かろうじて見えるこの亀頭の部分、随分と色素が薄いと思わないか?たしかにこの先生は包茎だ。もしかしたら露茎していない影響もあるかもしれない。・・・だが、それにしたって薄すぎるんだ」
「おお。なるほどな」
「そ、そうかも知れないな・・・」

「そ、そんな・・・」

 カーっと身体が熱くなるのを感じる。
 他人のチンポにそんなことを言う必要があるだろうか?
 安田のその言い方に、立成はあからさまに馬鹿にされる方がまだマシであるように思えてしまった。
 なぜそんな言い方をするんだ。なぜそんな事を言うのだ。
 それでも、分析課長である安田による、立成の一物の評価結果報告は続けられる。

「たしかに女とヤリまくったからといってココが真っ黒になるってわけではないし、それが比例関係であるとは言えない。言えないんだが・・・・それにしたって、だろ?ここまで色素が薄いんだ。包皮がありすぎるからここからじゃあ少ししか見えないが、よく見てくれないか?随分と綺麗な色合いをしているんだ。ピンクなんてもんじゃない。薄ピンク色なんだ。これはつまり・・・」
「つまり?」
「この先生は、圧倒的に女経験が薄いと判断できる」

「なぁっ!?」

 唐突に断言されてしまった。
 立成にとってはガーンと頭を叩きつけられたような衝撃だった。ぎゅっと瞑っていたその両目を思わず見開き、発言者である安田に視線を向けてしまう。
 自分の一物をここまでも分析されてしまうと、男としてはとてもではないが冷静ではいられなくなってしまうのだ。
 
(く・・・くそっ・・・・何だこの男は・・・?こんな奴だったのか・・・?俺のチンポの色を分析しやがって!どんな色だってお前には関係ない無いだろうがっ!・・・まずい、慌てるな。ここで慌てたら、また怪しまれちまう・・・!)

 安田に言われた内容自体は、先月のスナックのときと同じなのだ。
 砲身の色味の薄さ。明らかに見て取れるような経験不足の男の証。体躯も良い筋骨逞しい厳つい見た目にそぐわない、まるで無垢な少年のような男根。
 たしかに安田の言うとおり、そこの色味は経験と比例関係であるとはいえない。持って生まれたものによるのも事実である。それは理解しているのだ。
 しかし・・・ここまで理路整然に分析され評価されてしまえば、何も言い返せない。本当にただソレを見ただけで、まるで自分の女性遍歴の無さを看破されているかのような気になってしまうのだ。

 それでも何とか見た目だけでも取り繕うと必死になる立成だ。
 時折自制心が効かずに反論してしまうが、それ以外は何もリアクションはしていないつもりだ。裸にされて恥ずかしがっているだけ、そう見えている、そう見られている。そう思っていた。

 しかし、何人かの親父たちは気づき始める。
 あからさまに呼吸を整えようとする立成のその様子。
 そして、これまでよりも一層深く刻まれる眉間の深い皺。この男は、何かを隠している。そして、何かに耐えているのだ、と。
 一体何に?何を隠している?
 そこから推測される、結論の推定。それは・・・

「へっへっ、いいぞぉ~」
「すげえな、そんな所まで見てたのか」
「さすが安田だ。俺たちとは違うなぁ」
「当たり前だ。実際のところ、うちの会社は安田がいないと成り立たないからな」
「何だかんだ、あいつが1番頭いいからなぁ」

 調子づいた親父たちの口々から漏れる安田への称賛の嵐。
 それに隠れて、ひそひそと囁かれる親父たちの会話。頷き合い、
 それでも安田による解析結果の説明は止まらない。安田はとある布を指さしながら話を続けた。

「・・・次にいくぞ。次は・・・・これだ」
「それはこの先生のパンツじゃねぇか」
「そのパンツがなんだってんだよ」
「この先生のパンツだ。お前らも言っていたが、ちょっとデザインが幼稚というか、なんというか・・・」
「中学生が履いてそうなパンツだよな!」
「これを30超えた男が履いてるんだもんなぁ」
「恥っずかしいなぁ~!!」
「俺の息子もこんなん履いてるぞ。小学生だけど」

「・・・くっ・・・たまたまだっ!たまたま、今日は・・・・」

(あぁもうっ!どうしてそんなことを言われる筋合いがある!?俺が・・・俺が、どんなパンツ履いていたってお前らには関係ないだろうがっ!!)

 安田が説明により再燃してしまった、己のパンツ事情。立成は思わず反論してしまっていた。
 その反論の内容自体は至極当然というか、他人にとやかく言われる筋合いは確かにないことである。
 だが、そんな立成の物言いに親父たちも黙ってはいない。

「たまたまぁ?たまたまって何だよ!」
「いかにも、普段はちゃんとしたパンツを履いてますって言いたげだなぁ?」
「・・・そうだっ!普段はもっと、こう・・・しっかりしたやつを履いてんだよっ!」
「ハハハッ!何だソレ!」
「なーにがしっかりだよ!」
「どうせそれも全部糞ダセェパンツなんだろうな!」
「センスが無いんだよなぁ!可哀そうによぉ!」

「くっ・・・畜生っっっ!!」

 あまりにも自分を馬鹿にする親父たちに、思わず意地になって言い返してしまう。
 それが火に油のような形でますます立成を貶める言葉が飛び交い、より屈辱を味合わされてしまうのだった。

「まぁまぁ、先生落ち着けって。たまたまかもしれないが、あんたがダッセぇおパンツ履いてんのは事実だろ?」
「ぐっ・・・」
「安田、続けてくれ」
「・・・独身だから自分で購入しているんだと思うんだが。そういうのに・・・ここでいう、自分が身につける下着のことだが、下着に頓着が無いのは男としては多数ではあると思うが、それにしたって、な。つまり、この立成先生はあまり下着のデザインに無精であると言うことだ。それは本人の気質によるものかもしれないが、それ以外にも可能性がある」
「・・・なんだよ?」
「下着のデザインにこだわる必要性がないってことだ。例えば・・・異性に自分の下着を見せる機会が全く無い、とかな」

「!!」

 核心を突かれてしまった。
 自分が履いている下着1つでそんな事を言われてしまうなんて思いもしなかった。

「ははっ!なんちゅうこと言い出すんだ!」
「安田のやつ、やべぇな」
「ちょっと想像力が豊かすぎじゃないか?」
「まぁ、1つの仮定にすぎないのは自覚しているよ・・・・だけどな・・・」

 騒ぎ立てる親父たちの様子をよそに、安田はなおも話を続けながらも、何ごそごそと手を動かす
 そして、両手に持った赤地に黒のチェック柄の生地の布を、親父たちに見せびらかすように広げて掲げた。
 そう、それは、立成のボクサーブリーフだった。まさに今、議論の渦中にあるものだ。一日頑張って働いた立成の身体を守っていたパンツだ。

「このパンツの柄を見ていると、そう言う風に思えてしまわないか?あまりにも無頓着すぎる。まぁ俺達くらいの年代ならこういうパンツも履くかもしれない。バンツなんて嫁にしか見せないしどうでもいいかろな。でもこの先生は独身だろ?・・・もしも、だ。もし彼女がいたとして、今どきの女性が彼氏にこういうのを履かせるものだろうか?そんなのも気にしなくなるほど長年の付き合いならばあるかもしれないし、その彼女が派手好きな可能性もあるが・・・どうしても俺にはこの先生にそんな女性がいるとは思えないんだ」
「そ、そんな・・・」
「だからこう思う。このパンツは、いい年になっても彼女ができないあまりにそれを諦めきった、哀れな男の象徴なんじゃないかってな」


「なぁっ・・・!・・・そんな・・・・!!」

 愕然とする立成。
 直接的なことはも言われていない。だが、もはや正解を出されているのと同じだった。
 そんなことまで言われてしまって良い訳が無い。
 反論だって山ほどある。完全に決めつけているとしか思えない。しかし、だからこそ、余りの滅茶苦茶な論理でありすぎるため、安田の言っていることに対して今の立成で突くべき点が見つけられなかった。

 あんなに隠していたのに。必死に守っていたというのに。
 何重にも防護していたはずの、男としてのプライドをかけてはぐらかしていたあの秘密が、こんなにも呆気なく、これほどまでに攻略されてしまうなんて。

「ははぁっ、なるほどぉ!」
「確かに説得力あるな!」
「安田ぁ!それはつまりぃ!?どういうことだぁ!?」

「くそっ、くそっ・・・!」

(ふざけやがってっ!!絶対、認めない!絶対に認めねえぞ!こいつの言ってることなんて全部妄想じゃねえかよ!)

 だが、それでも立成は諦めない。
 それもそのはず。大人になってから10年以上隠していたことなのだ。そんなことを、面白半分で言えるだろうか。それも、こんなはしたなくデリカシーのない15人もの親父たちに、赤裸々に言えるだろうか。そんなこと、あってはならないのだ。立成はただただ呻くことしかできなかった。

「そして最後だ。これは特段大した理論はないんだが・・・この先生の顔だ」

 びくっと立成の身体が震える。
 唐突に言われた、自分の顔について。思いもしなかった、自分の顔に関する意見。
 ここまで手厳しい意見を出してきた安田から、今度は自分の顔について、ひどいことを言われてしまうのか。
 そう思うと、まるど捕食者に狙われてしまったかのように思わずひるんでしまったのだ。

(お、俺の顔だと・・・?そんな・・・顔で何がわかるってんだよっ!)

「・・・?顔がどうしたんだよ?」
「俺たちだってずっと見てるじゃねぇか」
「だからなんだよ」

「それはな、つまり・・・」

 そう言ったきり、安田は一呼吸を置く。まるで重大発表をするときのプレゼンテーションのように。
 
 思わず観衆たちは息をのむ。
 何を言うんだ?どんな分析をしたっていうんだ?
 そう思うのは立成だけではない。親父たちも同じだ。

 一瞬の静寂。
 そして、安田からの一言。

「この顔、見るからに『童貞』って顔をしているよな」

「「「「「はぁぁぁぁぁっ!?」」」」」」

「なぁっ・・・・!」

(な、なんてこと言うんだこいつ・・・!お、俺の顔が童貞だと・・・?)

 安田の分析・・・いや、暴言と言っても良いレベルの発言に、立成も親父たちもそのときだけは言葉を失った。
 これまでの理知的すぎる推測を述べて来た男と、同じ男の発言とは思えない余り、頭が理解に追いついて来なかったのだ。

「ガハハハ!ひでえな!」
「顔が童貞ってどういうことだよ!」
「えげつねえこと言うな、あいつ」
「以上、陰茎の色素の薄さ、下着へのあまりの無頓着さ、そして顔の造形、これらからこの先生は、女性との性行為未経験男である童貞だと俺は推測する」

「なっ・・・そんな・・・」

 嗚呼、なんてことだろうか。
 とうとう正解を出されてしまった。
 あんなにも隠していたというのに。あんなにも必死に否定していたのに。

 立成は己の全てを曝け出されてしまったように感じていた。
 ずっと親父たちの手により裸に剥かれてしまっていたというのに。
 身ぐるみを全て剥がされてしまったように感じてしまう。

 この逞しく毛深い身体。その中の奥の奥。身体の、心のずっと奥。何重もの扉で誰も近づけないように用心しておいたというのに。
 開けられた。開けられてしまったのだ。こんなにも簡単に。容易く。
 開けられたくない扉を、無理やり開けられたのだ。

「おいおい!最後が雑すぎねぇか!?」
「一気に話のレベルが落ちたな!笑えるぜ!」
「でも、安田の分析だと、この先生は童貞らしいな」
「そんなことあるかぁ!?だって30超えてんだぜ!」
「こんな厳ちい先生だしな!これで童貞はやべぇだろ!!」
「おいっ、先生!うちの課長の検査の結果、あんたは童貞だって結果だったぜ!」

「・・・くそっっ!ち、違うっ!!違うっっ!!俺は童貞じゃねぇっ!」

 それでも立成は必死に否定する。
 虚を突かれることは多々あった。それでも認めるわけにはいかなかった。

「本当か?」
「怪しいぞ~?」
「ま~た嘘ついてじゃねえのか?ん??」
「ケツが綺麗だって嘘ついてたもんな」

「そ、そんなわけねぇ!童貞じゃねぇ!童貞じゃねぇって!!」

 それでも親父たちからの
 仕事に置いて信頼のあるからだろうか。安田の妄言のような分析結果であるにもかかわらず、親父たちからは異論の声はなかった。口々に立成へのそれまるで、凶悪犯人への取り調べのようだった。
 しかし、立成は認めない。自分の犯行はしらばっくれるしかない。壊れた人形のように否定するしかない。
 絶対に認めない。絶対に言ってはならない。親父たちから嘲られるほど、その決意は固くなる。

(そうだ、俺は『童貞じゃない』・・・!『童貞じゃなない』んだ・・・!)

 まるで己をマインドコントロールするかのように、心の中でも自分に言い聞かせながらも、絶え間なく叩きつけられる童貞取り調べの怒号は増す一方だたった。

(大丈夫・・・・!大丈夫だ・・・!わかるはずねぇっ・・・・!)

 そんな同じことが繰り返される中、急に前に出てきた男がいた。小太りで頭髪が薄い男であり、今こんな状況になってしまったきっかけを作った男でもある、柏田だった

「さっさと白状しろよ、『童貞先生』よぉ!」
「なっ・・・!」

 柏田に言われた言葉。彼本人としては何の変哲もない言葉だったのだろう。
 だが、その一言で、抑え込まれているそのその体の背筋に稲妻が走った。
 静まり返っていた己の身体に揺らめくものが現れてしまう。
 鎮火したはずの炎が再度燃焼を始めてしまったのだ。

(あ、あ、ど、童貞、先生・・・??俺、どうていせんせい・・・?)

 これだけ長時間、立成は耐えに耐え抜いてきたのだ。
 人生で最も屈辱の時間と言っても良いだろう。

 子供にいいように使われる馬の道化をやらせられて。
 普通なら見せない下着まで見られて。
 尻を散々引っ叩かれて。
 恥ずかしい下着をずり下されて尻を丸出しにされ。
 肛門の皺までも暴かれ。
 衆人環視のもとでの放尿姿までも見られ。
 そしてあげくに、最大の屈辱である、童貞であると詰め寄られ。

 こんなことまでされるいわれなどないのだった。
 疲弊していた。困憊だった。

 そんな中で与えられた、己のプライドを抉るような言葉。先月のスナックでの出来事がまたしてもフラッシュバックしてしまう。
 そうだというのに、立成の本能は、柏田の言葉を餌付けされた動物に与えられたデザートであるかのように受け取ってしまったのだ。

(あ、あ、・・・・だ、だめ・・・だめだ!意識すんな!すんなって!駄目だ!駄目だぁっ!)

 わかっている。散々、わかっている。
 それでも、もう、駄目だった。

 頭では静止しても、身体が止まらない。
 立成のその身は、本人の制止を振り切って官能の海へと飛び込んでしまったのだ。

「おい、見ろよ!」
「えっ」
「何だぁ?」

(やめろやめろやめろやめろおおぉぉぉっっっ!)

 必死に脳内で制止する。
 しかし、動き出したものはもう止まらない。誰にも何もできないのだ。それは立成自身もよくわかっている。それでも念じずにはいられない。
 
 もう、身体が言うことを聞かない。
 理性だとかそういうものも関係ない。

 きれいな水面に垂らした一滴の墨汁が全体を濁らせることと同じように、立成の身体に生まれた疼きが振動となり、波紋となり、そして快楽の大きな波へと成長して全身に行き渡ってしまう。それはもやは疲弊した身体が受け取るにはオーバードーズと呼べるほどのものだった。

 とてもじゃないが、隠してしまいたい。だがそんなことは無理だ。
 両腕を羽交い絞めで拘束され自由なのは肘から先の部分だけだ。両肢は左右から抑えられ、おまけにM字開脚のおっぴろげ状態。
 こんな状態で、隠すことなど、出来るはずもない。
 立成がこれまでこの場において親父たちに隠していた本当の自分の本性が花ひらいた瞬間だった。

「うわっ、チンポが勃ってきてるぞ!!」
「ギャハハハ!!すげぇっ!」
「おいおい、みるみると・・・・」

「み、見るな!見るなあああああああああっっ!!!」

 咆哮。
 こんな屈辱があるだろうか。
 もはや拘束されているというのも忘れ、身体全体を揺さぶり抵抗する。顔もブンブンと振り、その表情は悲痛そのものだった。

 そうだというのに。
 こんなにも嫌がっているというのに。
 こんなにも止めようとしているのに。

 立成の一物は、まるで彼のその叫びに呼応するかのように成長していく。
 かつてフニャフニャでデロンと垂れていた、排尿にしか使えないだろうものから、まるで樹齢1000年の大木かのようにムクムクと起き上がる。

 こんなもの、見るなと言っても、見ない方が変だ。
 そこまでに立派な、まさに勃起とよべるものだった。
 立成は放尿姿だけではなく、己の分身である一物が力を持つまでのその全ての様子を、親父たちに披露してしまったのだった。

「おおおおおおおっっっ!!!」
「すげえっ!」
「やべえええぇぇっ!」

 みるみるうちに育ってゆく立成の股間にある雄の分身。いつの間にか亀頭もぷっくりと肥大化し、陰茎はその体躯に見合ったがっしりとした太さとなり、ところどころ血管が浮き出るほどになっている。それでも、ここまで立派に隆起しているというのに、まるで人間が服を着ているのと同じであるかのように先端まで包皮に覆われているのは変わらなかった。

 親父たちの歓声を聞けば聞くほど、人前で淫らに勃たせていることを感じてしまう。はしたないことをしていることを実感してしまう。こんな場所でこんな大勢の前でやっていいことではないと十分にわかっているというのに。
 それなのに、どうして止められないのか。どうしてこのチンポは止まらないのか。

「くそぉっ!くそおっ!くそおおおおっ!!!!見るなよぉっ!見るなぁっっ!」

 しっかりと『勃起』してしまっていた。
 そして、しっかりと親父たちに見られてしまったのだ。
 大人の男の『勃起』という生理現象。その始まりから終わりまでの様子、その全てを余すことなく、立成のこの純潔な身体一つで、15人の親父たちへ講義してしまったのだった。

「勃起したぁっ!完全に勃起したぞぉっ!」

「見るなぁ!見ないでくれ!あぁ!見るなよっ!」

「しっかし、何で勃起してんだ?」
「急に勃たせたよな」
「さあな、でもなんかきっかけがあるんじゃね?」
「そういや、柏田のやつ、先生になんて言ったっけ?さっきなんて」
「あぁ?えぇっと・・・」

 親父たちはが話している内容は真っ当だ。理由もなしに、一人前の男がこんなことになるなんてあるだろうか。きっと理由があるに違いない。そう思った親父たちは、考え込み、そして思い当たる。そう、立成の真実に。

「おいっ!まさか、柏田のやつが『童貞先生』って言ったからか!?」
「そういや言ったな!!それじゃあ・・・」
「決まりだ!この先生は童貞だっ!!マジもんの童貞だっ!マジで童貞だったんだ!それなのに童貞なことを隠してやがった!!」
「おまけに童貞バレして興奮しやがった!とんでもねぇ奴だ!」
 
 もしこれが授業であったならば、100点満点の回答だった。
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邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ

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鍛えられた肉体、高潔な魂―― それは選ばれし“供物”の条件。 山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。 見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。 誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。 心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。

寮生活のイジメ【社会人版】

ポコたん
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田舎から出てきた真面目な社会人が先輩社員に性的イジメされそのあと仕返しをする創作BL小説 【この小説は性行為・同性愛・SM・イジメ的要素が含まれます。理解のある方のみこの先にお進みください。】 全四話 毎週日曜日の正午に一話ずつ公開

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