転生令嬢シシィ・ファルナーゼは死亡フラグをへし折りたい

柴 (柴犬から変更しました)

文字の大きさ
24 / 129
第二章

23 お茶会

しおりを挟む


 高熱を出したときに失った記憶は、一年近くたっても取り戻せていないが、特に困ったこともない。

 お父様とお母様と使用人のみんなと仲良く暮らしている。


 拾った時はやせっぽっちだったスピネルは、十分な食事をとった上で私と一緒に剣術の稽古をしているからか、大分肉付きも良くなった。背もぐんぐんと伸び、私と同じくらいだった筈の目線がいつしか見上げなくてはならないようになってしまった。私も伸びていると思うんだけどなー。スピネルの成長速度には敵わない。


 今日は、お母様と一緒に新しく作るドレスの相談をしている。

 なんでも近々開かれる王妃様のお茶会に招かれているそうな。


「シシィと同じ年頃の子息子女を集めてのガーデンパーティなの。お友達が出来るといいわね」

「うん。でも、私にはスピネルといっちゃんとそうちゃんがいるから、お友達よりもお城のお菓子の方が楽しみ」

「まぁ、シシィったら。我が家のシェフたちのお菓子だってとても美味しいのに」

「そうだね、お母様。私、アップルパイと薔薇のマドレーヌとカボチャのケーキが好き」


 我が公爵家のシェフが作る料理もお菓子も大好きだ。見た目も華やかで味は抜群で栄養バランスも考えられていて、太るのを心配しなきゃいけない位なのだ。

 食いしん坊は自覚している。


 でも、剣術の練習や魔法の勉強で体力も頭も使うし、いっちゃんとそうちゃんが始終遊びに来ては一緒に森で駆け回っているので、今のところお肉がぷにぷにしてきてはいない。


 あ、いっちゃんはユニコーンの、そうちゃんはバイコーンの名前だったりする。

 いっちゃんは”一角”そうちゃんは”双角”が正式名称。私が付けた名前に「随分と厳つい」と言っていたので第二候補である”ユニ子”と”バイ子”はどうかと聞いたら、最初の名前でいいという事になった。愛称呼びはいっちゃっんからのお願いだ。その方が親しいっぽくて嬉しいそうだ。


 いっちゃんたちの名前を横で聞いていたスピネルが「僕はスピネルで良かった……」と天を仰いでいた。そうかそうか、嬉しいか。みんな私が付けた名前を気に入ってくれているようで私も嬉しい。


「王子殿下もご参加なされるのよ」

「ふーん」

「あら、シシィは殿下に夢を見たりしないの?家格的にも年の頃合い的にも婚約者になってもおかしくてはないのに」

「ぶっ」


 お母様が余りにも突拍子もない事を言うのでお茶を吹いてしまった。マズい。テーブルに広げられているデザイン画にもかかってしまった。

 慌てて吹きだしてしまったお茶を拭いていると、お母様が呆れたようなため息をついた。


 や、だって、仕方ないよね?会った事もない王子様に憧れるなんて――ましてや将来の旦那様にだなんて考えたこともなかったし。


「私はずっとお父様とお母様の娘でこのお家にいるの」


 そもそも私は一人っ子だ。婿を取ってこの家を継ぐのだ。王子様の所に嫁ぐなんてとんでもない事だ。

 お父様もお母様もまだ若いしとても仲がいいから、弟妹がこの先に生まれる可能性もあるけど。


「シシィはまだまだ子どもね。可愛いわ」


 私を抱きしめたお母様に抱きつき返し「お母様もとっても可愛い」と言うと、ますます腕に力が入って少々苦しくなったけど、ぎゅっと抱きしめられるのは大好き。


 この幸せがいつまでも続くといいな。婿さんはお父様みたいな人がいい。

 お父様とお母様と私と婿さんとスピネルと、ずっと楽しく暮らしたい。





 ◇◇◇



「シシィ、準備はできていて?」

「はい、お母様」


 お茶会の日、私はピッカピカに磨かれて新しいドレスを着せられ、我ながら美少女っぷりが上がった状態でお母様と連れ立ち、初めての王宮にわくわくしながら馬車に乗った。


 お城ってどんな所だろう。

 ファルナーゼ家の屋敷だってとても大きいけれど、やっぱりお城はもっともっと大きいんだろうな。


 出される茶菓子にわくわく。綺麗なドレスでうきうき。お母様とのお出かけにハイテンション。


 落ち着きのない私を宥めるように、馬車で隣に座っているお母様が髪を撫でてくれた。お城の事を質問攻めにしていると、もうすぐに自分の目で確かめられるのだからと窘められる。

 うん、そうなんだけどね、わくわくしちゃって落ち着けないんだ。


 私がそわそわしている間に恙なく馬車は王宮に到着し、お母様、私の順に御者の手を借りて馬車から降りる。

 おおー、やっぱりお城って大きい。

 白を基調としていて屋根と尖塔が青。お伽噺でお城と言ったらこれ!というような佇まいだ。どこかで見た事があるような……と考えて、記憶を失う前にも城に来たことは無かった筈だと思い直す。


 通された庭は見事の一言だ。


 広がった芝生の上に、白いテーブルとイスがいくつも並んでいる。手前には美しいバラが咲き誇り、奥には樹木を刈り込み、鳥や動物を象ったものが見える。


 ファルナーゼのお庭も素敵だけど、この庭は流石王宮!といった感じだ。


 私は自然のままの森も大好きだけど、こうして計算して整えられた庭にも賞賛を贈ることは惜しまない。本当に綺麗だから。


 時間前に来たはずだけれど、庭にはすでに招待客が沢山いた。王妃殿下からのご挨拶を頂き、お茶会のスタート。


 さあ、何から食べようかなっと。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】転生したら悪役継母でした

入魚ひえん@発売中◆巻き戻り冤罪令嬢◆
恋愛
聖女を優先する夫に避けられていたアルージュ。 その夜、夫が初めて寝室にやってきて命じたのは「聖女の隠し子を匿え」という理不尽なものだった。 しかも隠し子は、夫と同じ髪の色。 絶望するアルージュはよろめいて鏡にぶつかり、前世に読んだウェブ小説の悪妻に転生していることを思い出す。 記憶を取り戻すと、七年間も苦しんだ夫への愛は綺麗さっぱり消えた。 夫に奪われていたもの、不正の事実を着々と精算していく。 ◆愛されない悪妻が前世を思い出して転身したら、可愛い継子や最強の旦那様ができて、転生前の知識でスイーツやグルメ、家電を再現していく、異世界転生ファンタジー!◆ *旧題:転生したら悪妻でした

魔法師団長の家政婦辞めたら溺愛されました

iru
恋愛
小説家になろうですでに完結済みの作品です。よければお気に入りブックマークなどお願いします。 両親と旅をしている途中、魔物に襲われているところを、魔法師団に助けられたティナ。 両親は亡くなってしまったが、両親が命をかけて守ってくれた自分の命を無駄にせず強く生きていこうと決めた。 しかし、肉親も家もないティナが途方に暮れていると、魔物から助けてくれ、怪我の入院まで面倒を見てくれた魔法師団の団長レオニスから彼の家政婦として住み込みで働かないと誘われた。 魔物から助けられた時から、ひどく憧れていたレオニスの誘いを、ティナはありがたく受ける事にした。 自分はただの家政婦だと強く言い聞かせて、日に日に膨らむ恋心を抑え込むティナだった。 一方、レオニスもティナにどんどん惹かれていっていた。 初めはなくなった妹のようで放っては置けないと家政婦として雇ったが、その健気な様子に強く惹かれていった。 恋人になりたいが、年上で雇い主。 もしティナも同じ気持ちでないなら仕事まで奪ってしまうのではないか。 そんな思いで一歩踏み出せないレオニスだった。 そんな中ある噂から、ティナはレオニスの家政婦を辞めて家を出る決意をする。 レオニスは思いを伝えてティナを引き止めることができるのか? 両片思いのすれ違いのお話です。

記憶喪失の私はギルマス(強面)に拾われました【バレンタインSS投下】

かのこkanoko
恋愛
記憶喪失の私が強面のギルドマスターに拾われました。 名前も年齢も住んでた町も覚えてません。 ただ、ギルマスは何だか私のストライクゾーンな気がするんですが。 プロット無しで始める異世界ゆるゆるラブコメになる予定の話です。 小説家になろう様にも公開してます。

有能女官の赴任先は辺境伯領

たぬきち25番
恋愛
お気に入り1000ありがとうございます!! お礼SS追加決定のため終了取下げいたします。 皆様、お気に入り登録ありがとうございました。 現在、お礼SSの準備中です。少々お待ちください。 辺境伯領の当主が他界。代わりに領主になったのは元騎士団の隊長ギルベルト(26) ずっと騎士団に在籍して領のことなど右も左もわからない。 そのため新しい辺境伯様は帳簿も書類も不備ばかり。しかも辺境伯領は王国の端なので修正も大変。 そこで仕事を終わらせるために、腕っぷしに定評のあるギリギリ貴族の男爵出身の女官ライラ(18)が辺境伯領に出向くことになった。   だがそこでライラを待っていたのは、元騎士とは思えないほどつかみどころのない辺境伯様と、前辺境伯夫妻の忘れ形見の3人のこどもたち(14歳男子、9歳男子、6歳女子)だった。 仕事のわからない辺境伯を助けながら、こどもたちの生活を助けたり、魔物を倒したり!? そしていつしか、ライラと辺境伯やこどもたちとの関係が変わっていく…… ※お待たせしました。 ※他サイト様にも掲載中

転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。

琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。 ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!! スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。 ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!? 氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。 このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。

ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。 前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。 ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。 「この家は、もうすぐ潰れます」 家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。 手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。

混血の私が純血主義の竜人王子の番なわけない

三国つかさ
恋愛
竜人たちが通う学園で、竜人の王子であるレクスをひと目見た瞬間から恋に落ちてしまった混血の少女エステル。好き過ぎて狂ってしまいそうだけど、分不相応なので必死に隠すことにした。一方のレクスは涼しい顔をしているが、純血なので実は番に対する感情は混血のエステルより何倍も深いのだった。

ワンチャンあるかな、って転生先で推しにアタックしてるのがこちらの令嬢です

山口三
恋愛
恋愛ゲームの世界に転生した主人公。中世異世界のアカデミーを中心に繰り広げられるゲームだが、大好きな推しを目の前にして、ついつい欲が出てしまう。「私が転生したキャラは主人公じゃなくて、たたのモブ悪役。どうせ攻略対象の相手にはフラれて婚約破棄されるんだから・・・」 ひょんな事からクラスメイトのアロイスと協力して、主人公は推し様と、アロイスはゲームの主人公である聖女様との相思相愛を目指すが・・・。

処理中です...