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「私はスタニスラス様推しなのっ。せっかく出会えたんだから攻略することは決定なのっ。何でだか分かんないけどスタニスラス様には魅了が効かないし、アンタみたいなモブ以下の女を抱きしめてるしっ!聞きたいんだけど、まさかアンタはスタニスラス様の婚約者とかじゃないでしょうね!?」
私が慌てて首を横に振ると、そうね、スタニスラス様に婚約者がいる設定なんか無かったから違うわよね、と言いながらもピンク頭さんは私を追求する姿勢を緩めない。なぜ、この人はこうも私を責めるのだろうか。初めましての挨拶すらしていない人で、今まで全く関わりの無い人だったのに。
「殿下は落ちてると思うのに、婚約者とも仲がいいし名前呼びを許してくれないし。婚約者は悪役令嬢してくれない。宰相の息子だってイベントこなして好感度はバッチリ上げてるのにイマイチ手応えないし、騎士団長の弟は脳筋のままで一向に甘い台詞を吐かないし、全然スチルが回収できないじゃないっ。他に転生者がいて私の邪魔をしているとしか思えないんだけど、モブ以下のアンタが裏で何かしてんじゃないでしょうね!?」
責められているのは分かるのだが、何を言っているのかさっぱり分からない。困って首をかしげると「反応がイマイチ。この子は転生者じゃなさそうね」とピンク頭さんは一人合点して頷く。
「そもそもアンタ誰よ!?」
えーと、妙な流れだけれど、ここで名乗るという事でいいのだろうか。
「私はリュドヴィック・コルベールの娘、カサンドラと申します」
「……コルベール?知らない家名だわ。ってことはたいした家じゃないわね。カサンドラって名前もゲームで出てきていないから、やっぱりモブ以下」
ピンク頭さんがブツブツと小声で話している声は聞こえるが、未知な言葉もあり意味不明だ。しかし、きちんと覚えておいてスタン様にお伝えしなければ、と決意する。
それにしても、やはりピンク頭さんは名乗らない。何と呼べばいいのだろう?ピンク頭さんと呼ぶのが失礼だという事くらいは重々承知だが、名乗らない彼女に呼びかける言葉が無い。
「とにかく。スタニスラス様から離れなさい。攻略の邪魔だから」
そんなことを言われて困る。私はスタン様に恩返しをするのだ。それに、ピンク頭さんに言われる筋合いは無いと思う。
返事をしない私に焦れたのか、ピンク頭さんは私に詰め寄って握りこんだ拳を私の顔の前に持ってきて更に言う。
「いいこと?私は光の聖女となるべきヒロインなの。アンタのようなモブ以下はスタニスラス様のおそばにいる資格なんてないの。それをちゃんと承知しておいて頂戴」
光の聖女は拳で何かを成すのだろうか。
「カシ、待たせたね」
スタン様が戻ってきた。良かった。ピンク頭さんとの会話は、彼女の言っている内容が理解できなくて疲れる。
「スタニスラス様!」
ピンク頭さんがスタン様の名を呼ぶ。さっきまでの苛立った形相が嘘のようににこにこして可愛らしい。握っていた拳は緩められて口元に持っていかれ、小首をかしげて上目遣いでスタン様を見つめている。体をくねらせているけれど、痒みでもあるのだろうか?ともあれ、私と話していた時とは別人だ。もしかして、これが光の聖女の力なのかな。何の役に立つのかよく分からないけど。
「何点か問題がある部分の朱を入れてある。ジェシカさんに差し戻しだと伝えてくれ」
「はい、わかりました、スタン様」
「急ぎだと言っていたから、また使いを頼まれるかもしれないがよろしく頼む」
「はい、スタン様」
渡された封筒を受け取り、スタン様のところにまた来られるかもしれないと考えて嬉しくなる。
「カシ、また近いうちに癒しの補充に行きたいから先生の不在の日を教えてもらえると嬉しいな」
「スタニスラス様、それはダメですよ。出入り禁止になります、きっと」
「それもそうか……」
スタン様が肩を落とすけれど、お父様がスタン様を出入り禁止にすることは無いと思う。お父様もスタン様の事が好きだから。
「スタニスラス様!癒しでしたら私が!いずれ光の聖女となる光属性の私が!癒やして差し上げます!それと、私もスタン様とお呼びしても宜しいでしょう?」
「テオ、カシを送ってくれ」
「畏まりました」
「カシ、また近いうちに訪ねていくからね」
スタン様もテオさんもピンク頭さんを無視しているけどいいんだろうか。ピンク頭さんは学院の生徒なのだから、スタン様にとっては教え子だろうに。困惑してスタン様を見ると、やれやれといった様子でやっとピンク頭さんに声を掛けた。
私が慌てて首を横に振ると、そうね、スタニスラス様に婚約者がいる設定なんか無かったから違うわよね、と言いながらもピンク頭さんは私を追求する姿勢を緩めない。なぜ、この人はこうも私を責めるのだろうか。初めましての挨拶すらしていない人で、今まで全く関わりの無い人だったのに。
「殿下は落ちてると思うのに、婚約者とも仲がいいし名前呼びを許してくれないし。婚約者は悪役令嬢してくれない。宰相の息子だってイベントこなして好感度はバッチリ上げてるのにイマイチ手応えないし、騎士団長の弟は脳筋のままで一向に甘い台詞を吐かないし、全然スチルが回収できないじゃないっ。他に転生者がいて私の邪魔をしているとしか思えないんだけど、モブ以下のアンタが裏で何かしてんじゃないでしょうね!?」
責められているのは分かるのだが、何を言っているのかさっぱり分からない。困って首をかしげると「反応がイマイチ。この子は転生者じゃなさそうね」とピンク頭さんは一人合点して頷く。
「そもそもアンタ誰よ!?」
えーと、妙な流れだけれど、ここで名乗るという事でいいのだろうか。
「私はリュドヴィック・コルベールの娘、カサンドラと申します」
「……コルベール?知らない家名だわ。ってことはたいした家じゃないわね。カサンドラって名前もゲームで出てきていないから、やっぱりモブ以下」
ピンク頭さんがブツブツと小声で話している声は聞こえるが、未知な言葉もあり意味不明だ。しかし、きちんと覚えておいてスタン様にお伝えしなければ、と決意する。
それにしても、やはりピンク頭さんは名乗らない。何と呼べばいいのだろう?ピンク頭さんと呼ぶのが失礼だという事くらいは重々承知だが、名乗らない彼女に呼びかける言葉が無い。
「とにかく。スタニスラス様から離れなさい。攻略の邪魔だから」
そんなことを言われて困る。私はスタン様に恩返しをするのだ。それに、ピンク頭さんに言われる筋合いは無いと思う。
返事をしない私に焦れたのか、ピンク頭さんは私に詰め寄って握りこんだ拳を私の顔の前に持ってきて更に言う。
「いいこと?私は光の聖女となるべきヒロインなの。アンタのようなモブ以下はスタニスラス様のおそばにいる資格なんてないの。それをちゃんと承知しておいて頂戴」
光の聖女は拳で何かを成すのだろうか。
「カシ、待たせたね」
スタン様が戻ってきた。良かった。ピンク頭さんとの会話は、彼女の言っている内容が理解できなくて疲れる。
「スタニスラス様!」
ピンク頭さんがスタン様の名を呼ぶ。さっきまでの苛立った形相が嘘のようににこにこして可愛らしい。握っていた拳は緩められて口元に持っていかれ、小首をかしげて上目遣いでスタン様を見つめている。体をくねらせているけれど、痒みでもあるのだろうか?ともあれ、私と話していた時とは別人だ。もしかして、これが光の聖女の力なのかな。何の役に立つのかよく分からないけど。
「何点か問題がある部分の朱を入れてある。ジェシカさんに差し戻しだと伝えてくれ」
「はい、わかりました、スタン様」
「急ぎだと言っていたから、また使いを頼まれるかもしれないがよろしく頼む」
「はい、スタン様」
渡された封筒を受け取り、スタン様のところにまた来られるかもしれないと考えて嬉しくなる。
「カシ、また近いうちに癒しの補充に行きたいから先生の不在の日を教えてもらえると嬉しいな」
「スタニスラス様、それはダメですよ。出入り禁止になります、きっと」
「それもそうか……」
スタン様が肩を落とすけれど、お父様がスタン様を出入り禁止にすることは無いと思う。お父様もスタン様の事が好きだから。
「スタニスラス様!癒しでしたら私が!いずれ光の聖女となる光属性の私が!癒やして差し上げます!それと、私もスタン様とお呼びしても宜しいでしょう?」
「テオ、カシを送ってくれ」
「畏まりました」
「カシ、また近いうちに訪ねていくからね」
スタン様もテオさんもピンク頭さんを無視しているけどいいんだろうか。ピンク頭さんは学院の生徒なのだから、スタン様にとっては教え子だろうに。困惑してスタン様を見ると、やれやれといった様子でやっとピンク頭さんに声を掛けた。
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