ぜんぶ夏のせいだ

ハーミ

文字の大きさ
9 / 12

8. 兄弟

しおりを挟む
 僕は山の中に入り、詩帆の姿を探しに探した。弥にも一緒に探してもらい山の中を駆け巡った。

『詩帆~。どこにいるんだー?』

 これだけ探し回ってるのに見つからないなんて…
 もうここにはいないのかもしれない。もしかしたらすれ違いで家に帰っている可能性もある。

『………』

 いや最悪の事態を考えておこう。詩帆が高いところから落ちて動けなくなっていたりしたら大変だ。

 そして僕と渉は危険なところを中心に探し回ることにした。

    ✳︎

 それから小一時間ほど経っただろうか。渉の声が大きな声で叫んでる。僕は弥の声がする方へすぐに向かった。辿り着くとそこには渉と横たわっている詩帆がいた。

『詩帆!』

 詩帆の元へ駆け寄った。詩帆は目を瞑ったまま動かない。

『おい、詩帆! 大丈夫か。まさか死んだとか言うなよ』

 すると弥に肩を叩かれて、
『大丈夫だ。息はある。心臓も脈も動いている。気絶しているだけだ。多分上から落っこちて頭をぶつけたんだろう』

 僕は体の力がスッと抜けた。よかった。詩帆は無事か。

『でも医者には見せた方がいいだろう。診療所に運ぶぞ』

 僕は頷き、詩帆を背中に乗せて山を下りることにした。でもなぜ詩帆はこんなとこに来たんだ?女の子が来るようなとこではないんだけどな。
 ……まあ無事だったからいいか。結構上の方から落ちたみたいだけど、軽傷っぽいし本当に良かった。

 そして詩帆を担いだ僕と弥は山のから下りた。 

    ✳︎

 詩帆は診療所に来る途中で目が覚めて、何がなんだかという表情だった。僕は詩帆に一連の話をした。詩帆は申し訳無さそうに謝っていた。
 診療所に辿り着いた僕たちはすぐ詩帆を診てもらった。診察結果は頭の打撲と擦り傷程度の軽傷だった。

『大きな怪我がなくて良かったな。僕も弥も本当に心配してたんだぞ』

『お兄ちゃんごめんなさい…。弥さんも助けてもらってありがとうございます』

『いいよいいよ。無事でなによりだ。ところであんな山の中で何をしていたんだ?』

 それは僕もとても気になっていた。詩帆があんなとこに1人で行くなんてあまり考えられない。

『そうだな。何をやっていたか、兄ちゃんも知りたいな。トキツレ草で弥がイメージを見ていなきゃずっとあのままだったのかもしれないんだぞ』

 詩帆はうつむき、小さな声で話し始めた。

『そのトキツレ草を探していて…。志乃お姉ちゃんが落ち込んでいる姿を見たから…』

 もしかして詩帆も僕と同じことを考えていたのだろうか。

『トキツレ草で未来を見ればどうすればいいか分かるんじゃないかってことだよな?』

『…うん』

 そうか詩帆も同じことを考えていたんだな。兄弟で考え方は似るんだな。

『そうか。それを聞いたら志乃は少し元気になると思うぞ。…でも詩帆が危ない目にあったらそれは兄ちゃんもだし、弥、志乃、周りのみんなだって悲しむから、このようなことはせめて相談してから行ってくれよ』

『うん。分かった。心配してかけてごめんなさい』

 それから弥と別れて、いつもの畑が並ぶ道を通り家に帰って行った。

 …明日またトキツレ草のとこまで行こう。詩帆も連れて行った方が良いだろうな……


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

十三回目の人生でようやく自分が悪役令嬢ポジと気づいたので、もう殿下の邪魔はしませんから構わないで下さい!

翠玉 結
恋愛
公爵令嬢である私、エリーザは挙式前夜の式典で命を落とした。 「貴様とは、婚約破棄する」と残酷な事を突きつける婚約者、王太子殿下クラウド様の手によって。 そしてそれが一度ではなく、何度も繰り返していることに気が付いたのは〖十三回目〗の人生。 死んだ理由…それは、毎回悪役令嬢というポジションで立ち振る舞い、殿下の恋路を邪魔していたいたからだった。 どう頑張ろうと、殿下からの愛を受け取ることなく死ぬ。 その結末をが分かっているならもう二度と同じ過ちは繰り返さない! そして死なない!! そう思って殿下と関わらないようにしていたのに、 何故か前の記憶とは違って、まさかのご執心で溺愛ルートまっしぐらで?! 「殿下!私、死にたくありません!」 ✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼ ※他サイトより転載した作品です。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

さようならの定型文~身勝手なあなたへ

宵森みなと
恋愛
「好きな女がいる。君とは“白い結婚”を——」 ――それは、夢にまで見た結婚式の初夜。 額に誓いのキスを受けた“その夜”、彼はそう言った。 涙すら出なかった。 なぜなら私は、その直前に“前世の記憶”を思い出したから。 ……よりによって、元・男の人生を。 夫には白い結婚宣言、恋も砕け、初夜で絶望と救済で、目覚めたのは皮肉にも、“現実”と“前世”の自分だった。 「さようなら」 だって、もう誰かに振り回されるなんて嫌。 慰謝料もらって悠々自適なシングルライフ。 別居、自立して、左団扇の人生送ってみせますわ。 だけど元・夫も、従兄も、世間も――私を放ってはくれないみたい? 「……何それ、私の人生、まだ波乱あるの?」 はい、あります。盛りだくさんで。 元・男、今・女。 “白い結婚からの離縁”から始まる、人生劇場ここに開幕。 -----『白い結婚の行方』シリーズ ----- 『白い結婚の行方』の物語が始まる、前のお話です。

元恋人が届けた、断りたい縁談

待鳥園子
恋愛
シュトルム辺境伯の末娘ソフィに隣国の帝国第二皇子から届けられた『縁談』の使者は、なんと元恋人のジョサイアだった。 手紙ひとつで別れることになったソフィは、素直になれずジョサイアから逃げ回る。 「私に届けなければ、彼は帝国に帰ることが出来ない」 そう思いようやく書状を受け取ろうと決意したソフィに、ジョサイアは何かを言い掛けて!?

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

愛人を選んだ夫を捨てたら、元婚約者の公爵に捕まりました

由香
恋愛
伯爵夫人リュシエンヌは、夫が公然と愛人を囲う結婚生活を送っていた。 尽くしても感謝されず、妻としての役割だけを求められる日々。 けれど彼女は、泣きわめくことも縋ることもなく、静かに離婚を選ぶ。 そうして“捨てられた妻”になったはずの彼女の前に現れたのは、かつて婚約していた元婚約者――冷静沈着で有能な公爵セドリックだった。 再会とともに始まるのは、彼女の価値を正しく理解し、決して手放さない男による溺愛の日々。 一方、彼女を失った元夫は、妻が担っていたすべてを失い、社会的にも転落していく。 “尽くすだけの妻”から、“選ばれ、守られる女性”へ。 静かに離婚しただけなのに、 なぜか元婚約者の公爵に捕まりました。

処理中です...