サファリ学園〜わたしのガーディアンはケモ耳男子！？〜

第4章

ガーディアン選抜試験、開始！

　ガーディアン再選抜試験の告知から、あっという間にいくつかの日がすぎた。

　わたしたちは今、テーマパークにやってきている。

　その名も、リバーレ・ワンダーランド。
　ここは、ニンゲン界でいちばんおおきなテーマパークなんだ。

　光あふれるメリーゴーランドやショーがメインの人気エリアに、キャンディ観覧車やチョコレートの滝、ポップでかわいいスイーツでつくられたお城などがあるエリアなど、楽しめるエリアがたくさん。

　すべてがカラフルで楽しくて、まるで『夢』がそのままかたちになったような場所。

　でも――わたしたちは今日、ここに遊びに来たわけじゃない。

　じつは、今日はサファリ学園・ガーディアン選抜再試験の日。

　このリバーレ・ワンダーランド全体が、試験会場になっているのだった。


　＊＊＊


　わたしがかようサファリ学園には、大きなヒミツがある。

　それは、わたし以外の生徒がみんな肉食どうぶつってこと！

　どうぶつであるかれらとニンゲンのわたしがいっしょに生きていくのは、とっても大変。

　なぜなら、どうぶつたちにとって、ニンゲンは弱くて甘い匂いのする魅力的な存在だから。

　だから、ニンゲンであるわたしには、特別な護衛ごえいの男の子がついてる。

　それがガーディアンっていうシステムなんだけど……残念ながら、今、わたしを守ってくれるガーディアンは不在。

　もともとわたしのガーディアンだったコハクくんが、いろいろあって資格を失ってしまったんだ。

　ふつう、ガーディアンが選ばれるのはランキングが決定する半年に1度だけなんだけど、今回はガーディアンの席が空いちゃったから、特別。

　この選抜試験で1位になればランキング外だった生徒でもガーディアンになれるんだって。

　さて、話は戻って、舞台はニンゲン界のテーマパーク――リバーレ・ワンダーランド。

　いよいよ、試験がはじまる時間になった。

　入場ゲートの前で、先生たちが参加者であるわたしたち全員に試験の説明をはじめる。

　選抜試験のお題は、『じぶんの本能に打ち勝ち、さらに本物の願いを見つける』こと。

『じぶんが、なにを守りたいと思っているのか』  
『じぶんが、どうなりたいと願っているのか』  

　心の奥にある本音を見つけ、行動で示すことが重要らしい。

　そして、大切なことがもうひとつ。

　このテーマパークには、ニンゲンの子どもたちも遊びに来ている。
　そのため、ニンゲンにじぶんたちの正体がバレないように気をつけないといけないのだ。

　今日、コハクくんたちはみんな、学園から貸し出されたペンダントをつけていて、ニンゲン仕様。

　このペンダントを身につけると、すがたかたちが一時的にニンゲンになり、耳やしっぽも見えなくなるんだ。

　けれど――内側の本能までは消せない。

　つまり、本能のままにふるまえば、ニンゲンを傷つけてしまうかもしれない。

　だから、安全管理のために、園内にはいたるところに監視スタッフがいて、ひそかにわたしたちを見守っているらしい。

　つまり、本能の片鱗へんりんを少しでも見せたら、即・失格！
　厳しい試験なんだ。

　今回わたしは見守り係として、コハクくんたち参加者をサポートする役割になっているのだけれど……。

　試験が始まり、入場ゲートをくぐったわたしたちの目の前に広がっているのは、美味しそうなにおいをただよわせるフードワゴンのお店たち。

　ぐるぐるソーセージにはちみつチキン、炭火焼バーガー。

「肉だ！」
「美味そう！」

　ゲートを抜けたとたん、まわりの生徒たちは食べ物のにおいにつられて、目をキラキラ……というより、ギラギラさせている。

　なかには、本能に負けてさっそく監視スタッフに捕まっている生徒もちらほら。

（コハクくんたちも少しつらそう……）

　どうやら、フードコートのにおいは、どうぶつのみんなにとっては、かなり本能をくすぐってくるものらしい。

「みんな、平気？」
「さすがにこのくらいなら平気だよ。でも……」

　コハクくんは答えながら、ちらりと周囲を見た。

「一般の生徒たちには、少しキツい試験だったみたいだな」

　次々と脱落していく生徒たちを見ながら、アサヒくんがつぶやく。

「さて、おれたちも行こう。制限時間内に各エリアを回りきらないと、たとえ本能に打ち勝っても失格になってしまう」

　すると、

「あっ、はいはい！　それならおれ、ここ行きたい！」

　レイくんがはしゃぎながらパンフレットを見せてくる。

「インフェルノ・ストリートってとこ！　ここ、めちゃくちゃ早いジェットコースターあるんだって！」

　インフェルノ・ストリートは、炎とスピードがコンセプトのスリル特化型エリア。レイくんらしいチョイスだ。

「じゃあ、そこから回ろう。その次はとなりのメルティ・カーニバルな」

　こうして、わたしたちの勝負の1日がはじまったのだった。