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第1章
ライオンの王子さま!?
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驚いて、顔を上げると、びっくりするくらいきれいな顔をした男の子と目が合った。
金色のたてがみみたいな髪は、太陽の光を吸い込んでいるみたいにきらきら。
耳はライオンみたいに丸く大きく、腰にはすらりとした長いしっぽが見える。
男の子はわたしを見下ろすと、まるで安心させるようにやわらかく微笑んだ。
「遅くなってごめん。だいじょうぶだった?」
問いかける声は、ふんわりやわらかい毛布みたいにやさしい。
「う、うん……」
(……このひとまるで、絵本に出てくるライオンの王子さまみたい)
「あなたは?」
「おれは、君のガーディアンだよ」
「ガーディアン?」
「君を守る役目のことを、この学園ではそう呼ぶんだ」
「わたしを守る役目?」
(なにそれ。どうしてわたしが守られなきゃいけないのかな……?)
「ニンゲンの君にとってこの学園は、危険がいっぱいだからね」
「え……どういうこと?」
「だって、肉食どうぶつのなかニンゲンがひとりだけなんて、どう考えても危ないだろ?」
「に、肉食どうぶつ?」
「サファリ学園は毎年1名だけニンゲンを入学させる。それが、特待生制度。そしてその特待生を守るのが、ガーディアンであるおれの役目なんだ」
サーッと、顔から血の気が引いていくかんじがした。
「ちょ、ちょっと待って! それじゃあ、この学園にニンゲンの生徒はわたしひとりってこと!?」
わたしはたまらずに男の子の言葉をさえぎる。
ニンゲンがわたしだけ!?
意味がわからない。だって、ニンゲンなら今私が話してるこの男の子だって……。
ふいに、男の子の頭のてっぺんから生えた耳に目がいった。
(……耳、と、しっぽ……)
「見て分かるでしょ? ここはどうぶつの子どもたちのための全寮制の学園なんだよ」
「…………」
「もしかして君、それを知らずに来たの?」
男の子が心配そうにわたしの顔を覗き込む。
「じゃ、じゃあ、あの男の子たちもニンゲンじゃないってこと?」
さっき、わたしを襲ってきた子たちを見た。みんな、わたしを助けてくれた男の子とおなじような耳やしっぽがある。
「そうだよ。ここにニンゲンがくるのは珍しいから、みんな君のにおいに興味津々なんだよね」
「う、うそ……!」
(じゃあ、ほんとうのほんとうにニンゲンはわたしだけってこと!?)
ぼうぜんとするわたしに、男の子が明るく言う。
「でも大丈夫! 不安だろうけど、おれが君を、ちゃんと守るから」
男の子は、わたしを抱き締める手に力を込めると、わたしを襲ってきた男の子たちをにらんだ。
「いいか、おまえら。この子を襲うってことは、ガーディアンであるおれに刃向かうってことだぞ」
まるでいかくするような低い声で、男の子が言う。
「これ以上この子に近づいたら、おれがようしゃしない」
びしっと言い切るその姿に、囲んでいた男子たちが身を低くしながらあとずさりはじめた。
「じょ、じょうだんだよ。本気で襲うわけないじゃん」
「ちっ、おれたちのエモノだったのに」
「おいだまれ。あいつにはかなわない。早く行くぞ」
男の子たちはそれぞれ口をとがらせたり、名残惜しそうにしながらも、すなおにその場を離れていった。
(た、たすかった……!)
ほっとした瞬間、我に返った。
(そういえばわたし、お姫さまだっこされちゃってる!?)
「お、おろして……! もう、だいじょうぶだから……っ!」
あわてて言ったのに、男の子は笑って首をふった。
「だいじょうぶそうには見えないよ。ほら、まだふるえてる。無理しないで」
「うぅ……」
たしかに。さっきはこわくて、声も出せなかった。足もまだ、ちょっとがくがくしてる。
(でも、だからといってずっとこのままなんて恥ずかしすぎる……!)
あたふたしているわたしに、男の子は小さく笑って「じょうだんだよ」と言った。
そして、やさしくわたしを地面におろすと、自己紹介を始めた。
「おれは、コハク。今日から、君を守る専属のガーディアンだよ」
「わたし、専属の……?」
「うん、そう。君、名前は?」
「わ、わたしは、弓屋メイ……」
「メイ。もう安心していい。これからは、ぜったい、ぜったいに――おれが君を守るから」
コハクくんの目はきりっとしているのにどこかやさしくて、あたたかい光をたたえている。
また、胸がどくんと鳴った。
「でも、あなたも……ニンゲンじゃないんだよね?」
「おれは、ライオンだよ。でもだいじょうぶ。おれはガーディアンだから、メイを襲うなんてこと、ぜったいしない」
「…………」
(ほんとうかな……)
「さて。それじゃ、おれが今から寮に案内するよ」
コハクくんはそう言って、さりげなくわたしのキャリーケースを持ってくれた。
(やさしいひと。うそを言っているようには見えない……)
少し歩いてから、コハクくんがふりかえる。
「ついてきて、メイ」
「あっ、う、うん!」
わたしは、急いでコハクくんのあとを追いかけた。
コハクくんの揺れるしっぽや耳を見つめる。
サファリ学園がまさか、どうぶつだらけの学園だったなんて……。
(これからのわたしの中学生活、いったいどうなっちゃうんだろう……!?)
金色のたてがみみたいな髪は、太陽の光を吸い込んでいるみたいにきらきら。
耳はライオンみたいに丸く大きく、腰にはすらりとした長いしっぽが見える。
男の子はわたしを見下ろすと、まるで安心させるようにやわらかく微笑んだ。
「遅くなってごめん。だいじょうぶだった?」
問いかける声は、ふんわりやわらかい毛布みたいにやさしい。
「う、うん……」
(……このひとまるで、絵本に出てくるライオンの王子さまみたい)
「あなたは?」
「おれは、君のガーディアンだよ」
「ガーディアン?」
「君を守る役目のことを、この学園ではそう呼ぶんだ」
「わたしを守る役目?」
(なにそれ。どうしてわたしが守られなきゃいけないのかな……?)
「ニンゲンの君にとってこの学園は、危険がいっぱいだからね」
「え……どういうこと?」
「だって、肉食どうぶつのなかニンゲンがひとりだけなんて、どう考えても危ないだろ?」
「に、肉食どうぶつ?」
「サファリ学園は毎年1名だけニンゲンを入学させる。それが、特待生制度。そしてその特待生を守るのが、ガーディアンであるおれの役目なんだ」
サーッと、顔から血の気が引いていくかんじがした。
「ちょ、ちょっと待って! それじゃあ、この学園にニンゲンの生徒はわたしひとりってこと!?」
わたしはたまらずに男の子の言葉をさえぎる。
ニンゲンがわたしだけ!?
意味がわからない。だって、ニンゲンなら今私が話してるこの男の子だって……。
ふいに、男の子の頭のてっぺんから生えた耳に目がいった。
(……耳、と、しっぽ……)
「見て分かるでしょ? ここはどうぶつの子どもたちのための全寮制の学園なんだよ」
「…………」
「もしかして君、それを知らずに来たの?」
男の子が心配そうにわたしの顔を覗き込む。
「じゃ、じゃあ、あの男の子たちもニンゲンじゃないってこと?」
さっき、わたしを襲ってきた子たちを見た。みんな、わたしを助けてくれた男の子とおなじような耳やしっぽがある。
「そうだよ。ここにニンゲンがくるのは珍しいから、みんな君のにおいに興味津々なんだよね」
「う、うそ……!」
(じゃあ、ほんとうのほんとうにニンゲンはわたしだけってこと!?)
ぼうぜんとするわたしに、男の子が明るく言う。
「でも大丈夫! 不安だろうけど、おれが君を、ちゃんと守るから」
男の子は、わたしを抱き締める手に力を込めると、わたしを襲ってきた男の子たちをにらんだ。
「いいか、おまえら。この子を襲うってことは、ガーディアンであるおれに刃向かうってことだぞ」
まるでいかくするような低い声で、男の子が言う。
「これ以上この子に近づいたら、おれがようしゃしない」
びしっと言い切るその姿に、囲んでいた男子たちが身を低くしながらあとずさりはじめた。
「じょ、じょうだんだよ。本気で襲うわけないじゃん」
「ちっ、おれたちのエモノだったのに」
「おいだまれ。あいつにはかなわない。早く行くぞ」
男の子たちはそれぞれ口をとがらせたり、名残惜しそうにしながらも、すなおにその場を離れていった。
(た、たすかった……!)
ほっとした瞬間、我に返った。
(そういえばわたし、お姫さまだっこされちゃってる!?)
「お、おろして……! もう、だいじょうぶだから……っ!」
あわてて言ったのに、男の子は笑って首をふった。
「だいじょうぶそうには見えないよ。ほら、まだふるえてる。無理しないで」
「うぅ……」
たしかに。さっきはこわくて、声も出せなかった。足もまだ、ちょっとがくがくしてる。
(でも、だからといってずっとこのままなんて恥ずかしすぎる……!)
あたふたしているわたしに、男の子は小さく笑って「じょうだんだよ」と言った。
そして、やさしくわたしを地面におろすと、自己紹介を始めた。
「おれは、コハク。今日から、君を守る専属のガーディアンだよ」
「わたし、専属の……?」
「うん、そう。君、名前は?」
「わ、わたしは、弓屋メイ……」
「メイ。もう安心していい。これからは、ぜったい、ぜったいに――おれが君を守るから」
コハクくんの目はきりっとしているのにどこかやさしくて、あたたかい光をたたえている。
また、胸がどくんと鳴った。
「でも、あなたも……ニンゲンじゃないんだよね?」
「おれは、ライオンだよ。でもだいじょうぶ。おれはガーディアンだから、メイを襲うなんてこと、ぜったいしない」
「…………」
(ほんとうかな……)
「さて。それじゃ、おれが今から寮に案内するよ」
コハクくんはそう言って、さりげなくわたしのキャリーケースを持ってくれた。
(やさしいひと。うそを言っているようには見えない……)
少し歩いてから、コハクくんがふりかえる。
「ついてきて、メイ」
「あっ、う、うん!」
わたしは、急いでコハクくんのあとを追いかけた。
コハクくんの揺れるしっぽや耳を見つめる。
サファリ学園がまさか、どうぶつだらけの学園だったなんて……。
(これからのわたしの中学生活、いったいどうなっちゃうんだろう……!?)
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