5 / 15
噂の吉田くん
5
しおりを挟む*
「えー、一応初めましてと言っておく。本日付けでお前らの担任になった神楽坂 祐也(かぐらざか ゆうや)だ。
担当科目は数学。まぁ受験も無いんで気楽に過ごしてても大丈夫だと思います」
担任のやる気の無さそうな自己紹介に、クラスの男子達が「神楽坂テキトー過ぎっ」と笑う。
それに神楽坂はうっとおしそうに「うっせえ。お前らトイレ掃除にすっかんな」と気怠げに告げた。
更に悲鳴が上がった男子達を放っておいて、改めてクラスを見渡す。
「まぁ、卒業までこのクラスな訳だから、仲良くしましょう。
トラブルなんか起こさないように。絶対にトラブルなんか起こさないように」
(二回言った……)
彰は思わず苦笑いし、それがこの先生なんだよなぁと思った。
神楽坂はまだ二十代という若さに加えて、程よいユーモアと脱力したスタンスが生徒達にウケている。
おまけにルックスも良いので、憧れの対象にもなりやすい。
きちんとするべきことはけじめをつけ、しっかりと指導してくれるし、意外に面倒見もいいので、彰も神楽坂のことは好きだった。
(楽しくなりそうだな)
彰は内心ほくほくと笑みを浮かべ、これから先のことを考えわくわくした。
*
新しいクラスにはすぐに慣れた。
元々彰は社交的で人懐こいタイプであり、グループの中に入っていくのは別に難しくない。
始めはぎこちなかったクラスメート達も、だんだんとお互いに慣れ始め、僅か3日ほどで大分馴染んだ。
それなりに楽しい学校生活を送り、特に何の問題もない。
──ここまでは、良かった。
しかし、数日後のホームルーム、係決めが、彰の運命の分岐点だった。
この時の彰は、それを知る由もない。
2.
「──川、相川……」
誰かが彰を呼んでいる。彰はぽかぽかと暖かい春の日差しの中、心地良く寝入っていた。
「……相川、相川?」
「んー……」
むにゃむにゃと返事なのかよくわからない言葉を発している彰は、完全に熟睡している。
「……いい加減起きろ相川ぁっ!」
「ぅえっ!?」
突然大声で怒鳴られた彰は、反射的にびくりと顔を上げた。
無理やり覚醒させられた意識ははっきりとしていない。
「?、!?」
「相川ぁ、テメ、新学期早々おねむとは良い度胸じゃねえか。もう一回眠るか?」
教卓の前で拳をバキバキと鳴らしているのは、物凄い形相をしている神楽坂。周りで笑っているクラスメート達。
(うわ……、俺、いつの間に寝て)
「つうか吉田も。ホームルーム中にくらい漫画閉じろ。俺もその漫画は好きだが。特に主人公の妹がいいよな」
(おい神楽坂ぁぁぁあ!!)
彰は心の中でツッコミを入れ、吉田の方を振り返り見る。
案の定、吉田は机の上に堂々と漫画を広げ、相変わらず表情が見えないほどもっさりとしていた。
(うわぁ……)
何度見ても見慣れないインパクトに、彰は若干引く。
神楽坂はふぅと一息つくと、さらりと言った。
「と、いうことで、相川と吉田。お前ら、明日から放課後の教室掃除な」
「は!?」
思わず頓狂な声を上げると、神楽坂は当然の様に言う。
「いや、居眠りしてた罰だから。吉田は、漫画」
「えー!」
「えー、じゃない。安心しろ。一ヶ月間だけだから」
全然安心できない。
最高にめんどくさそうな顔をしている彰を無視し、神楽坂はわざとらしく爽やかに笑う。
「はい、ということで決定。相川と吉田、よろしくな」
(Sだ……)
心の中で神楽坂を呪い、ちらりと吉田の方に目を向けてみる。
相変わらず何を考えているかわからない。
彰は、はぁと溜め息を吐いた。
8
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
月弥総合病院
御月様(旧名 僕君☽☽︎)
キャラ文芸
月弥総合病院。極度の病院嫌いや完治が難しい疾患、診察、検査などの医療行為を拒否したり中々治療が進められない子を治療していく。
また、ここは凄腕の医師達が集まる病院。特にその中の計5人が圧倒的に遥か上回る実力を持ち、「白鳥」と呼ばれている。
(小児科のストーリー)医療に全然詳しく無いのでそれっぽく書いてます...!!
怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人
こじらせた処女
BL
幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。
しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。
「風邪をひくことは悪いこと」
社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。
とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。
それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
【完結】 男達の性宴
蔵屋
BL
僕が通う高校の学校医望月先生に
今夜8時に来るよう、青山のホテルに
誘われた。
ホテルに来れば会場に案内すると
言われ、会場案内図を渡された。
高三最後の夏休み。家業を継ぐ僕を
早くも社会人扱いする両親。
僕は嬉しくて夕食後、バイクに乗り、
東京へ飛ばして行った。
男子高校に入学したらハーレムでした!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
ゆっくり書いていきます。
毎日19時更新です。
よろしくお願い致します。
2022.04.28
お気に入り、栞ありがとうございます。
とても励みになります。
引き続き宜しくお願いします。
2022.05.01
近々番外編SSをあげます。
よければ覗いてみてください。
2022.05.10
お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。
精一杯書いていきます。
2022.05.15
閲覧、お気に入り、ありがとうございます。
読んでいただけてとても嬉しいです。
近々番外編をあげます。
良ければ覗いてみてください。
2022.05.28
今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。
次作も頑張って書きます。
よろしくおねがいします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる