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5.推し活の民、襲来
しおりを挟む城のエントランスホールにて。
「はあ……姫が戻ってきちゃった…次はどうしようかしら」
熊鍋の下ごしらえを姫に任せた私は、ため息をつきながらも、
ようやく落ち着きを取り戻そうとしていた。
しかし、またしても嵐はやってきた——。
\ドカーン!!!/
突然、城の正門が爆音と共に開いた。
「ハイ・ホー! 女王さまーッ!!」
「白雪姫がいつまでも来ねえもんで、こっちから来ちゃいましたーッッ!!」
「いらっしゃいますか女王さまァ!!!」
……なんか来た。
森のはるか向こうから、わらわらと……
頭がでかい、足が短い、そしてやたら声がでかい。
七人の小人が、全力で走ってきていた。
しかも、バラバラの方向から。
なんか……ぜんぜん息が合ってない。
「あっ、そうですわお義母さま!」
姫の声が調理室から聞こえる。
「言ってませんでしたが、実は森の小人さんたちも……お義母さまの信奉者なんですの~!
うふふっ、布教の甲斐がありましたわ」
「はァ!? 何それ初耳よ!」
扉がバァンッ! と開いた。
小人その①(ゴツめのオネエ風)が叫ぶ。
「女王さまのおかげで、今日も鉱山に鉱石がたくさん湧いたのよ~~!!
もう推すしかないわ~!!!」
小人その②(ドルオタ風)がメモ帳を広げる。
「えっと、女王様の"最も美しいと思った瞬間"アンケート、みなさんご記入済みですね? 回収しま~す」
小人その③(テンション高めの訛り)が叫ぶ。
「なァ女王サマァ! 今度うちらの炭鉱見に来てくれへん!?
そんで、ツルハシ握ってるとこ写真撮らせてや!」
「……いや私、あんたたちの敵だからね!! もっと怖がりなさいってば!!」
小人その④(夢女子系)がポエムを読み上げる。
「いつか私が小人の王様になったら、女王様を王妃にいたします……」
「は???」
小人その⑤(やたらマッチョ)が私の前に片膝をつく。
「俺の筋肉、すべては女王様のために鍛えたッス!」
小人その⑥(幼女系口調)がドレスに抱きつく。
「女王にゃま~だいすきぃ~お胸ふわふわ~♡」
「……ええい、やめなさい! やめなさいっっ!!」
そして——
小人その⑦(唯一まともそうな)がにこにこと頭を下げた。
「女王さま。日々の密かなご尽力、誠にありがとうございます。鉱山は今日も繁盛です」
「……あ、まともな子いた。
――って、私が密かに魔法使ってたの、バレてるしィ!?」
姫が血塗れ包丁を持ったまま、可愛い笑顔で近づいてくる。
「お義母さまの評判、森の動物たちの口コミで広まってますの!
いま、森では“推せる王族No.1”ですの!」
「うそでしょ……」
「"女王さまを悪役にするな運動"も立ち上がりましたのよ。
署名も、リスからキツネまで合わせて98匹集まりましたの!」
「……ッ……誰も私の努力を悪役として評価してない件について」
……今日もこの城はカオスだった。
天井のカンペはもうボロボロだ。
床のセリフも削れて読めない。
ねえ……
もしかして物語、変わってる??
10
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