星に溺れるカーテンコール 〜これは愛か執着か? 今宵もきみに溺れる~

うまうま

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『8.悪夢の先の星空』

天才と秀才

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紅い瞳が、一瞬大きく見開かれる。 


――俺は……俺は何を言ってるんだ。
ただの当てつけじゃないか。 


そう思うのに、
言葉やいばが止まらない。  

「俺みたいな凡人の苦しみは、
お前には伝わらないだろう」

「天才」「一番星」という言葉に、
彼がどれほど苦しんできたのか
俺は知っている。

それこそ、自らを危険に
晒してしまったほどに――

それなのに俺は、
こんなことしか言えない男だ。 役者としても、人間としても、
ルシファーには何一つ及ばない。

――父さんの言うことは、
正しかったんだ。
すべてが、何もかも。

「お前には解らないだろう、ルシファー。
俺がどれだけ⋯⋯天才のお前と比較されては、あの人から否定され続けてきたか」  

紅い瞳は
俺を見つめ続けている。
そこには俺への反発や怒りではなく、ただ、
受け止める優しさが光っていた。

己の醜さが際立ち、
情けなくて視界がにじむ。

「⋯⋯どれだけ、己の才能の無さに絶望したか」

気付くと俺は、
言葉を無理やり遮断しゃだんするように
己の喉を掴んでいた。


黙って聞いていたルシファーは、
静かに口を開いた。  


「俺が天才に見えるなら⋯⋯それでいいよ。……でも、俺はあんたを、凡人と思ったことは一度もないんだ」  

その声はただ静かで、
いつもの軽さは鳴りをひそめていた。

「……あんたは子役時代、内心俺をライバル視してたよね。⋯⋯まあ、親父さんの影響だけどさ」  

 ルシファーは静かに歩み寄り、俺の隣へ跪いた。

「けど、俺には不思議だったんだ。あんたは舞台のどこでも、多彩に輝ける才能を持ってるのにって。まさに今、そうだろ? 俺のシリウス監督」

俺は言葉を失った。
ルシファーのきめ細かな指が
俺の黒髮を梳く。

紅い瞳は揺れ動かず、
ただ真っ直ぐに俺を見つめていた。

「俺は……あんたの苦しみをすべて理解できる訳じゃないけど⋯⋯でも、痛みに寄り添うことならできると思うんだ」

その瞳に宿るのは、
同情でも激励でもなく、
ただ傷へ寄り添うやさしさだった。

「⋯⋯今日はもう寝よう」

長い沈黙の後、
ルシファーにそっと手を引かれる。

ああ、そうだ⋯⋯
もう、今日は寝よう⋯⋯
強制的に、意識を遮断しゃだんして――
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