告白1秒前

@るむば√¼

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夢のまた夢ー2ー

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え?ん?え?は?え?ん?
全く訳が分からない。どうしてこうなった。?全く訳が分からない。
中学の時はクラスで1番足が遅かったのに。
高校に入って少しは良くなったけど、それでもクラスで後ろから数えた方が早いくらいの足の速さだったのに。
どうして?タイム誰かと間違えてるんじゃないの?

ミヤは山下先生からなんとも不条理な現実を告げられる。

「篠原さん、あなたクラスで2番目に速かったから、体育祭の代表リレー、よろしくね!」

「はい????」

その時は一体何を言われたのか分からなかったがよくよく考えてみると....。そういうことだ。
誰かとタイムを間違えたのか、それとも先生が数え間違えたのかは知らないがこれは何かの間違いだ。

「先生、あの、代表リレーの事なんですけど、」

「何ですか?練習したいんですか?」

「いや、そうではなくて、私、た、多分誰かとタイム間違えられてます。」

「どうしてそう思うのですか?」

「だって、私去年まではとてつもなく足が遅かったんですよ?去年の計測結果をご覧になって頂ければ分かることです!」

「代表リレーの選手になったことが不安で仕方が無いのですね。しかし、不安がる必要は一切ありません。去年遅かったとしても、今年代表リレーの選手に選ばれたということは篠原さんがこの1年で成長したということです。自信を持って良いのですよ。」

「いや、ほんとに。違うんです。そんな1年でここまで速くなる訳ないですし、もし私が成長していたとしても、私は代表リレーの選手として、体育祭で走ることは出来ません。辞退します。」

「何を言うのですか。これはまたとないチャンスです。大いに利用しなくては。」

「無理です。足引っ張ります。」

「そうだとしてもあなたは1人で走る訳では無い。心強いチームメイトがいます。信じるのです。」

「そんな。無理です。先生」

「無理と言わず、立ち向かってみてください。きっと道は開ける。」

そういうと山下先生は廊下を歩いていってしまった。

そんな。どうして。

すると、山下先生が戻って来た。
気が変わったのかと思ったが、「あ、そうそう。練習日ですが、明日の放課後にありますよ、詳細は明日説明されるとおもいます。」

そう言い、再び廊下を歩いていってしまった。

無理に決まってる。先生の言った通り、心強いチームメイトがいたとしても、私が足を引っ張れば少しは必ず支障をきたす。
そんなのは絶対に嫌だ。
そんなことを延々と考えながら、ミヤは暗い気持ちで教室に戻った。
教室に戻るとミヤと佐久間くんが話しかけてきた。

「「ミヤ!」」

「何?詩音、優一。」

「代表リレー選ばれたんだって?!」

「ミヤ、凄いやん!」

「あー、やめてよ。」

「何言ってんの!あのミヤが凄いじゃない。」

「凄くないよ」

「凄いって!足速くなったんやろ?」

「それは...何かの間違い」

「そんな謙遜して!」

「ほんと違うよ。」

「自信持ちや!」

「だから違うって。辞退するつもりだから。」

「え?マジで言ってんの?」

「うん」

「もったいないで!せっかく選ばれたのに」

「私は相応しくないから」

「事実、速いから選ばれたんでしょ?相応しくない訳ない。」

「嫌だよ。私が足を引っ張れば負ける。そうなった時、チームメイトにどんな顔すればいいか。」

「負けるのが怖いだけじゃない。」

「そうだよ。怖い。」

「これは、ミヤが輝ける最高のチャンスなんだよ?そんな理由でチャンスを無駄にするなんて勿体なさすぎる。」

「とにかく!私は走らないから。絶対。同じチームの人に迷惑かけたくないし。ほっといてよ」

そう言い捨て、ミヤは足早に自分の席に向かった。
クラスの期待や声援を背負って走るなんて無理だ。
私には重すぎる。
でも、詩音と優一には言い過ぎたかもしれない。
詩音の言ってることは正しい。
せっかく、良いタイムが出て選手に選ばれて、先生や友達から期待されてるのに、負けるのが怖いからやりません。なんて笑ってしまうぐらいクソみたいな理由だ。
私にもっと自信があれば。
私にもっと余裕とやる気があれば。
やっぱり私はいつまで経っても、変われないの…?
本当は走りたい。チームメイトと喜びや悔しさを分かち合いたい。
そんな青春にミヤはいつしか憧れていた。映画やドラマ、徳島浩史の小説で何度も目にしたシーン。
いつだって登場人物は皆、積極的で明るくて優しい。
ミヤに無いものを持っている人達。
青春とは選ばれた者だけが出来るものなのかもしれない。


「俺らミヤに悪いこと言ってしまったかな。」

「ううん、ミヤは今一時的にああなってるだけ。大丈夫だよ。」

「そっか。なら良かったわ。」

「絶対後で謝りに来るよ。」

「なんで分かるん?」

「ん?いつもそうだから。」

「あはは!じゃあこんな事よくあったん?」

「あるある。もう何年一緒にいるか。家族みたいなもんよ」

「ええな。藤山さんみたいな友達。家族なんて言ってもらえるんや。ミヤは幸せやな。」

「佐久間くんにはそんな友達いないの?」

「俺の周りには誰もおらへん。」

「ちょっと、私達は??」

「ごめんごめん。!でも、ミヤが友達になってくれたことに俺はすごい感謝しとる。ミヤは優しいし、どんな事にも一生懸命や。俺も、良い友達持ったわ。」

「そうだね。あの子はいい子。私も大好きだよ。」

ーーーーーーーーーーーーーーー

一日の授業が全て終わった後、ミヤは詩音と優一のもとへ向かった。
2人は廊下で話していた。
親友にこんなに話しかけづらいと思ったのは久しぶりだ。
最近はしばらく喧嘩をしていなかった。
いつも悪いのは私だ。
で、私が勇気を振り絞って謝りにいく。いつものパターンだ。詩音もそれを分かっている。

「し、詩音、優一さっきはごめん。2人は私を勇気づけようとしてくれていたのに言い過ぎた。」

「いいよ。そんなこと」

「全然気にしてへんで!」

「そっか。2人ともありがとう。」

「やっぱり来たな!」

「当たり前だよ。いつもこの流れだし。ね?ミヤ」

「う、うん。まあね、悪いのはいつも私だし」

「じゃあ、一緒に代表リレー頑張ろうな!」

「え、一緒にって?」

「私達も代表リレー選ばれたの!だから、一緒に頑張ろう!」

「そうだったの!」

「そやで!」

「私達が一緒なら大丈夫!だから代表リレーやろ?」

「.......」
詩音と優一がチームメイトなのは凄く心強い。が、
私に本当に出来るだろうか。。
もし負けてしまったら.......

「負けてもええんや!勝ち負けは関係あらへん!1番は楽しむことや!一緒に良い思い出作らへん?」

「.......頑張ってみよう、かな?」

「やったぁー!!」

「ミヤ!!がんばろぅ!」

「う、うん!」

やれるか分からない。でも2人が一緒ならやれる気がする。
もしかしたら、「青春」出来るかもしれない。

その後、ミヤと詩音と優一は一緒に帰った。

「じゃあ、俺こっちだから。」

「うん、ばいばーい!」

「あ、詩音ごめん、私、図書館寄りたいから。」

「そっか。わかったーじゃあね!」

「うん、ばいばい。」

ミヤは図書館へ向かった。
あの2人がチームメイトなのはとても心強いが、やっぱりまだ少し不安だ。
ミヤは不安な時はいつも図書館で徳島浩史の小説を読む。
そうすると気が楽になるのだ。
図書館に到着し、すぐに徳島浩史の小説だけが置いてある本棚へ一直線に向かった。

今日は何を読もう。
あ、赤い白鳥でも読もうかな。
でもあんなに高いところにある。
踏み台はどこに。
辺りを見回しても踏み台は見当たらない。
どうしよう。
ミヤがつま先立ちで本に手を伸ばしていると誰かが本をひょいと取った。びっくりしてみると、木原くんが立っていた。

「はい、これ」

「き、木原くん?!」

「よう!」

「本ありがとう」

「おう。いつも図書館来てるのか?」

「時々。」

「そうなんだ、徳島浩史の小説を読みに?」

「うん、逆に他にはあまり興味がわかなくて」

「俺も!こっちで一緒に読もっか?」

「え、あ、うん」

ミヤは赤い白鳥を手に持ち。木原くんに連れられ、椅子に座った。木原くんは私の隣に座った。
木原くんは恋然るべき時を取り出して本をひらいた。

「恋然るべき時、最近読み返してみたんだ。」

「何度読んでも飽きないよね。」

「うん、ねえ、知ってる?主人公の服装について毎章ごとに説明されるでしょ?あれ、私、なんでだろう。変わった書き方だなって思ってたんだけどね、最近知ったの、主人公の服装のスタイルや色がこれから起こる出来事を予告しているんだって!例えば、服装がモノトーンだったり、暗い色の時は良くないことが起こるって予告してたり、明るい色の時は良い事が起こるとか。普通ならそんなことやらないし、まず思いつかないよね!!でも、それに閃いてしかもそれを自然な形でお話に溶け込ませるなんてやっぱり徳島浩史は他の小説家とはひと味違うよね!あとね!徳島浩史が書いている小説の全てのお話は繋がっているっていう説があって、確かに桜と恋然るべき時のこの部分似てるでしょ?本当だったら壮大なお話になるよね!凄すぎ!」

「ほ、ほんとに徳島浩史の小説が大好きなんだね」

「うん!徳島浩史はもともとすっごく人と関わるのが苦手だったんだって。でも、本を書くことによって沢山の人に自分を知ってもらえて人と関わるのが好きになったんだって。インタビューで本は私の命の恩人だって答えていたのをみてハマっちゃったんだよね。
人と関わるのが苦手な自分と徳島浩史が重なって感動しちゃったんだ。」

「そうなんだ。俺も知らない徳島浩史を篠原さんはよく知ってるんだね。」

「うん。気付いたら徳島浩史に夢中になってた。」

「それわかる。」

それから2人は図書館が閉館するまで本を読み続けた。
「あの、もう閉館なので退館して頂けますか?」

「あ、ごめんなさい。分かりました。」

ミヤと流星は慌てて図書館から出た。辺りはすっかり暗くなっていた。本に熱中しすぎて体が火照っている。その体を夜風が冷やしてくれる。
2人はそれに浮かぶ月と星を眺めながら夜風に冷やされた。
ミヤは本に出てくる情景と重ねてうっとりしていた。

「楽しかったね。」

「うん!色々話が出来たし。」

「俺ももっと徳島浩史の事勉強しないと篠原さんに追いつけなくなっちゃうよ。」

「あはは。うん。そうかもね。もっと話したいから勉強してきてよ。」

「了解。頑張る」

なんだかこの何時間かで木原くんとの距離がだいぶ縮まった気がする。前よりずっと話も弾むし、何よりお互いよく笑ってる。

「ねえ、また一緒に本を読んでくれる?」

木原くんが突然言った。

「え?うん。もちろん。」

「そっか。良かった。」

「じゃあ、そろそろ帰らなきゃ」

「そうだな。俺も行かなきゃ。」

「じゃあね。」

「おう、また学校で。」

そう言い交わし、2人は別れた。
こんなに親しくなった男の子は木原くんがはじめてだ。
男の子と話すことさえ難しかった私が図書館で一緒に本を読むなんて.......!
よくよく考えてみるとすごいことしていたのかも。
それに、木原くん、また一緒に本を読んでくれる?って言ってたよね。
私がつい、木原くんにマシンガントークを浴びせてしまったのを木原くんは気にしてない?嫌がってない?
それについては明日にでも学校で謝ろう。
久しぶりに徳島浩史好きの同士と語れて幸せだった。
木原くん、ちゃんと勉強してきてくれるかな?
もっと語りたいこともあるし。
楽しみだなぁ

ーーーーーーーーーーーーーーー
次の日

学校に着いてからどうも様子がおかしい。
いや、着く前からか?
どうおかしいかと言うと、

木原くんの事が頭から離れないのだ。
ついでに昨日あった図書館での出来事も。

きっと昨日あんまり楽しかったのでその興奮がまだぬけてないだけなんだろうが学校に着いてから気付くと木原くんの方を見てる。
時々ふいに目が合うのだが目が合うと心臓がバクバクするのだ。
おかしい。どうしてだろう。
まさか。いや、そんなことは無い。いやでも。
もしや、これは.......!


不整脈?!?!

どうしよう。私、死んじゃうの?!




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