告白1秒前

@るむば√¼

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夢のまた夢ー3ー

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1時間目の授業が始まる前、A組の松原りみがB組の小野未来と話をしていた。

「ねえ、最近流星くんとぉ仲良くしてるぅ女子がぁいるみたいなんだけどぉ何かぁ知ってるぅ?」

「そうなの?知らないな」

「そっかぁ。私ねぇ高校入ってからぁずぅーっとぉ流星くんのぉ事がぁ好きなんだぁ。でもぉいきなりぃ現れてぇ軽い気持ちでぇ流星くんにぃ近づくようなぁ女はぁ、だぁぁいきらっいなんだぁ」

「そ、それはそうだよね。」

「だからさぁ、未来ちゃんにはぁそのぉクソ女のぉことをぉ調べて欲しいんだけどぉ…やってくれるよねぇ?」

「う、うん!も、もちろん!」

「じゃあ、よろしくぅねぇ!」

会話を終え、松原りみと小野未来はそれぞれの教室に帰って行った。
一方、何も知らないミヤは謎のドキドキに苦しんでいた。

ドキドキが止まらない。
どうしちゃったんだろう。
ミヤが自分の身体を心配していると、流星が教室に入ってきた。
その瞬間、ミヤのドキドキが激しくなっていったのを感じた。
木原くんだ。そうだ、昨日マシンガントークを浴びせてしまったことを謝らないと!
そう思い、ミヤは流星の席に向かった。
カバンの中から教科書を出して、授業の準備をしていた流星にミヤは話しかけた。
「木原くん」

「ん?おー篠原。おはよ!」

「おはよう。」

「なんか用?」

「あの、昨日の事なんだけど」

「あ!そうそう!これ、昨日混ざっちゃってたみたいで俺のバックの中に入ってたんだよ。」

そう言い、流星はカバンの中から1冊の本を取り出し、ミヤに差し出した。

「と、徳島浩史の新作!!!でも私、この本見覚えないよ?」

すると流星は口をミヤの耳元に近づけて、
「プレゼント」

と囁いた。
いきなり耳元で囁かれたので耳が擽ったかった。それと同時に更にドキドキが激しくなっていく。

「わっ!び、びっくりした。」

「ははっ!ごめん!ちょっとからかった。」

「やめてよ!でも、ありがと」

「おう!読んだら感想聞かせてな」

「わかった」

「で、篠原の話は?」

「あ。そうそう。昨日つい熱が入っちゃって木原くんにマシンガントーク浴びせちゃったの謝りたくて」

「あーなんだ。そんなこと気にしてたの。」

「うん。後々考えてみると小っ恥ずかしくて」

「あはは!篠原ってそういう感情あるんだな」

「どういう意味?!」

「怒んなって!意外と女らしいんだなって」

「意外とってなに」

「まあ、そこは気にするな」

「納得してないけど分かった。」

「まあ、また一緒に本読もうな!」

木原くんとの会話を終え、ミヤは席に戻った。
ミヤは流星から貰った徳島浩史の新作を取り出した。
新作が出てることは知ってたけどなかなか買いに行けなかったんだよね。
それをプレゼントしてくれるなんて有難い。ずっと読みたかった本だもん!木原くん、ありがとう!
ミヤはしみじみと流星に感謝しつつ、早速読んでみることにした。
また恋のお話か。
内容を簡潔に説明するとこうだ。
主人公のマナは産まれてから14年間ずっと孤児院で暮らしてきた。ようやく里親が見つかり、マナは孤児院を出て、里親と新しい生活を送ることに。学校も行き始めたマナだったが、同じクラスの瞬の事が気になってしょうがない。14年間孤児院で暮らしてきたマナにとって、その感情は初めてのもので未知だった。
やがて、瞬も実は孤児だということを知り、そこからお互いが知らなかったマナと瞬の深い繋がりが見えてくる。
という物語である。
あらすじを読んだだけでも面白かった。
早く結末を知りたいのでミヤは本編に入ろうとした。
するとその時
「ミヤ!おはよ!」

詩音が教室に入ってきた。
「詩音!今、いいとこなんだから静かに!」

「いい所って言ったって、まだ1ページも読んでないじゃない。」

「あらすじも含めていい所なの!」

「はいはい、ごめん」

詩音との会話を終え、本編を読もうと本編に目を移す。
ミヤは1行ずつ、丁寧に読み始めた。
するとその時、
「ミヤ、おっはよー!」

ミヤは思わず机に突っ伏した。
「どうして、みんな私の邪魔ばっかりすんのよー!」

「じゃ、邪魔って何のことや??」

「本!!読んでるでしょ?!集中してるの、見たらわかるでしょ!」

「あー。あはは、ごめんな。いや、今日の代表リレー練習の事について藤山さんも入れて話したくて」

「はっ!すっかり忘れてた。私、リレーの選手になっちゃってたんだった。」

「そうやで!今日が初めての練習やろ?!」

「そうだ。それも昨日先生から聞いてた。」
ミヤを一気に不安が襲う。
私だけ練習についていけなかったらどうしよう。
やっぱりあのタイムは間違いで私だけめっちゃ遅かったらどうしよう。
私が遅いせいで練習に支障が出たらどうしよう。
どうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしよう
どうし「ミヤ!」

「はっ」

「ミヤ、大丈夫?顔、めっちゃ強ばってるよ」

「う、うん大丈夫」

「練習が不安なんでしょ?」

「うん。」

「ミヤはいつもいつもネガティブに考えすぎなんだよ。少し考え方を変えればさ、練習で失敗したって、本番で失敗しなければ良いじゃない。その為の練習だし。それに、優一と、私と、木原くんもいるじゃない!1人で戦うんじゃないんだよ?」

「え?木原くん?」

「そう。木原くんもリレーの選手に選ばれたみたい」

「そう、だったんだ」

「ミヤの気が合う友達もいるし、幼なじみもいるし、ミヤの彼氏候補もいるし、これって最強チームだよ!」

「だから、彼氏候補じゃないって!」

「あはははっでもまあ、みんなミヤが困った時は支えてくれるはずだよ。」

「うん。そうだね。私もそうおもう。」

「よっしゃ!頑張ろ!」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
放課後になり、いよいよ代表リレーの練習が始まった。
ミヤと、詩音、優一、流星の4人は校庭に集まった。
他クラスのリレー選手は去年もリレー選手をやっていた顔見知りが何人かいた。みんな準備運動をしたり、もう走ったりしていたりと凄く速そうだった。
これが「ガチ勢」ってやつか。
めちゃくちゃ速そう。
そんな「ガチ勢」の中からミヤは数少ない友達を見つけた。
「りーちゃん??」

私の声で振り向いた彼女はやはり、ミヤが1年生の時に仲良くしていた松原りみだった。
2年生に進級し、クラスが離れてしまったのでなかなか話す機会がなかったがこの練習に友達がいるというのは物凄くミヤにとって有難かった。

「みーちゃん!」

「りーちゃんも選手になってたんだ!」

「うん、自分でもぉびっくりだよぉ!みーちゃんもぉリレー選手ぅなれたんだねぇ!」

「多分何かの間違いだけど」

「そっかぁでもぉ、またぁみーちゃんとぉ話せるようにぃなるってぇ思うとぉ嬉しいなぁぁ」

「私も嬉しいよ。」

「お互いぃ頑張ろうねぇぇ!」

「うん!」

りーちゃんこと、りみはとにかく可愛い。それに明るくて穏やかで、自分ことより他人を優先するような優しい性格だ。
去年入学して友達が出来なかった私と友達になってくれたのがりみで私はりみのことが大好きだ。
りみの方からお互いのことをりーちゃん、みーちゃんと呼び合おうと言われたので現在もそう呼び合っている。
ただ、りみの事が好きな人と嫌いな人にバッサリ別れることを私はいつも疑問に思っていた。こんなに良い子がどうして嫌われているのか。

「ミヤ、こっちで準備運動しよ」

「あ。うん」

準備運動のあとは本格的なリレーの練習に入った。
ミヤは3走になった。
詩音⇒優一⇒ミヤ⇒流星
という順番でバトンを繋いでいく。
とりあえず、1回通しでやってみることにした。
ミヤは自分の位置に立ち、構えた。
まず、1走の詩音が走り出した。
そして優一にバトンが渡される。
優一がミヤに近づいてきた。
ミヤは今だと思った所で走り出した。
だが、タイミングが合わず、優一がミヤに激突してしまった。
ミヤは校庭にゴロゴロと転がった。
「ミヤ!ごめんな!スピード出しすぎてたわ」

「ん、うん、大丈夫だよ、私が悪いし」

「立てるか?」

ミヤは優一の肩を借りて立ち上がった。
「痛っ!」

「大丈夫か?」

「大丈夫大丈夫。すぐに治るから」

「ちょっと休んでたらどうなん?」

「うん、そうする。ちょっとね」

ミヤはのそのそとベンチの方まで行き、ドサッと腰を下ろした。
足首がズキズキ痛い。
ぶつかった時に捻ったからかな。
ミヤの足首は少し動かすだけで傷んだ。
何分か休憩をとり、再度足首の様子を見てみると、赤くなって腫れ上がっていた。
「これはまずい。」

ミヤはボソッと呟いた。
その日の練習はミヤは全く動けなくなってしまったので見学していた。
早速迷惑かけちゃった。私がタイミングどうりに走らないから。
優一、責任感じちゃうだろうな。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
練習が終わり、詩音と優一と流星がミヤの様子を見に来た。

「ミヤ、足首大丈夫?」

「ホンマにごめんな。俺のせいでこんな事になってもうた。」

「ううん、優一のせいじゃないよ。大丈夫。やっぱり神様が向いてないからやるなって言ってるのかな、ははっ」

「篠原、ヘラヘラすんなって。この世に神様なんて居ない。って徳島浩史がよく言ってるだろ。」

「木原くん…。」

「頑張れよ。早く治して俺と篠原のバトンパスも練習もしようぜ」

「うん。そうだね。迷惑かけてごめん」

「ミヤ、私達ミヤの回復待ってるからね!」

「みんな、ありがとう…!」

みんなが居なきゃ、私今頃泣いて逃げ出してるだろう。
友達の言葉って本当に大切だ。
ミヤは詩音や、優一に支えられながら帰った。

次の日。
ミヤが詩音と一緒に登校すると、B組の教室の前に人集りが出来ていた。
2人で行ってみると、そこには衝撃の光景が広がっていた。
顔は知っているが名前の知らない女子が去年同じクラスだった、きょうちゃんを殴っていたのだ。きょうちゃんの顔には無数のあざがあり、とても痛々しい。
それでもその女子はきょうちゃんを殴ることをやめようとしない。
ミヤはたまらず、大声で
「やめなさいよ!こんなにあざが出来てるじゃない!きょうちゃんが何かしたのか知らないけど、暴力より、話し合いで解決しなさいよ、暴力女ぁっ!!」

「り、りみ…!」
その暴力女は助けを求めるようにりーちゃんの名前を呼んだ。
どうして。りーちゃんの名前を?

「りーちゃん…?」

「や、やぁだぁ、未来ちゃん、お、女の子のぉ顔をぉそんなにぃ殴っちゃ、か、可哀想じゃない。」

「え…?りみ、これはあんたがやれって」

「はいはいはいはい!もうお話はぁ
お・わ・り!未来ちゃんもぉ早く教室にぃ戻りなってぇ!」

「で、でもどうして」

するとそれまでニコニコしていたりみの表情が一気に鬼の形相に変わり、

「早く行けよ、クソブスが。」

その一言でその場は凍りつき、野次馬はバラバラとそれぞれの教室に帰って行った。

「りーちゃん…?」

「はっ!み、みーちゃん!どうかしたぁ?」

「い、今のって何?」

「あ、あー未来ちゃん酷いよねぇ。好きなぁ男の子とぉきょうちゃんが仲良くしてただけでぇあんなことしたんだよぉ。」

「でも、その子りーちゃんがやれって言ったって」

「違うってぇ!私がそんなことぉ言うはずないでしょぉ!人のせいにするんだよぉ!未来ちゃんはぁ!」

「ねぇ?私がやれって言ったってぇ思ってるのぉ?友達じゃない。ずっとぉ」

「そ。そうだよね。りーちゃんがそんなことするはずないよね!」

「そうだよぉ!私はそんなことしないぃ!」

「疑ってごめん。」

「いいってぇ!みーちゃんも教室にぃもどりなぁ」

「うん。じゃあね」

「ばいばぁい」


「けっ、未来のやつ言いやがって。ミヤも邪魔すんなよ。マジウザイ。」


教室に戻るとみんな、さっきの出来事の話をしていた。
「あれ結構やばくね?」

「女ってほんと怖いわ」

「てか、篠原怒らせない方が良いぞ。あいつキレたら何するかわかんねぇ、人殺すかも」

「ちょっと!ミヤはそんなことしないから。大体ミヤは正しいことを言っていたのになんで馬鹿にされなきゃいけないの?見てるだけのあんたよりよっぽど優しくて人間らしいわよ」

「詩音、そんなに言わなくても良いって」

「ミヤ、だってこいつら」

「詩音が怒ってどうすんのよ」

「ごめん。」

「詩音は優しいね。」

「全然、てか、あの未来って子許せない!殴るなんて酷すぎだよ!」

「そうだね。私も許せない。でもあの子だけが悪いって訳じゃない気がするの。」

「どういうこと?」

「いや、ちょっと気になる事があってね」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
その日の放課後
ミヤは図書館に来ていた。
流星の姿はなかったので、1人で流星から貰った徳島浩史の新作を読んでいた。
ミヤはしばらく本に熱中した。
どれくらい経っただろうかミヤはいつの間にか眠ってしまっていた。しかも、場所は図書館から公園に移動していた。
いや、図書館に行ったこと自体夢だったのだろうか。ミヤが混乱して考え込んでいると誰かが話しかけていた。

「あ、やっと起きた?」

驚いて見ると、そこにはペットボトルを2本持った流星が立っていた。
「き、木原くん!」

「篠原図書館で寝ちゃっててさ閉館時間になっても起きなかったからここまで背負ってきたんだよ。」

「え、あ、そうだったの。ごめんね。迷惑かけて」

「全然大丈夫だよ、てか迷惑かけてごめんってよく言うよな。そんなに自分が迷惑かけてると思ってるのか?」

「誰だって嫌じゃない?迷惑かけられたら。不安だよ。それで嫌われたりしたら」

「篠原って過去になんかあったの?」

「そんなにズバッと聞く?まぁいいけど。いじめられてたの。過去に何かあるってよく分かったね。」

「え?」

「中学校3年間。あれは私にとってまさに地獄だった。」

「どんなことされたの?」

「最初は軽いことだった。上履きが無くなったり、黒板に落書きされたり。でも段々エスカレートしてって、お前の次は詩音だって言われて、そんなのは絶対に嫌だった。わたしの問題なのに詩音に迷惑かけるなんて」

「酷いな」

「でも、今は全く気にしてないから大丈夫。」

「早く忘れろよそんなこと」

「うん」

「てか」

「何?」

「篠原って軽いのな。背負った時びっくりしたよ」

「ちょっと!女の子の体のことを言わないでよ!」

「一応褒めてるぞ」

「それは、そうかもしれないけど」

「素直になれって、な?」

そう言って木原くんは私の頭を撫でた。
びっくりしたけど何だか嬉しかった。
「からかわないでよ」

「からかってないよ?」

ミヤもやり返そうと流星の頭に手を伸ばしたが、流星の方が背が高いのでミヤには届かない。

「なんか俺ら、身長差カップルみたいだね」

唐突な流星の言葉にミヤは思わずフリーズする。
し、身長差か、か、カップル?!
自分には程遠い言葉No.1だ
「な、何いきなり?!」

「ははっ!別に」

その2人の楽しそうな様子を物陰から小野未来がしっかりと目に焼き付けていた。
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