告白1秒前

@るむば√¼

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両想いとお別れ

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やっと、やっと、会えるんだ。
また、ミヤと一緒に帰ったり、出掛けたり出来るんだ。

流星は飛行機の中でずっとわくわくしていた。
ミヤと同じぐらい、いや、それ以上に流星はミヤとの再会を楽しみにしていた。

会ったら、まず、アンナの誤解を解かなきゃな。
多分ミヤ、また勘違いしてる。
いや、勘違いさせちゃってるの間違いか。
とにかく安心させなきゃな。
明後日、俺が突然学校に来たら、どんな顔するかな、どう思うかな。
喜んでくれるかな、ミヤのことだし、泣いて喜んでくれたりするかな。それとも、怒るかな。

流星を乗せた飛行機はやがて空港に到着した。

「帰ってきた。」

ーーーーーーーーーーーーーーー

「じゃあ、流星の帰還と手術成功を祝して、カンパーイ!!」

「カンパーイ!!」

到着した次の日、流星は家族とお店で帰還と手術成功を祝った食事会をしていた。

家族みんな、流星が無事に帰ってきて安心した様子だった。

「流星、俺は分かってたよ、手術成功するって」

「いや、そろそろお前その予言者気取りやめたら?いくら顔整ってるからって痛いぞ?」

流星は兄のトワに冷たくそう言った。

「そんなこと言うなよ~あ、彼女から電話だ、はい、もしもし?あ、えみちゃん?どうしたの?あ、間違えた、あいりちゃんか。ごめん、ごめん」

また、クズいことやってんな。
流星がふと、視線を右に向けると、

あれ、ミヤ?
隣は早川?
あの男は誰だ?どういう状況なんだ?
まさか、合コン?

流星はいても立っても居られなくなり、すぐさま、ミヤがいるテーブルへ向かった。

なんでだ?なんで合コンなんてしてるんだ?
ミヤはそんな人じゃないだろ。


「ミヤ?!」

これが半年ぶりの再会になるなんて。

流星はミヤの腕を引っ張りながら考える。

早川に無理に連れてこられたのか?
いや、あの男達にナンパされて連れてこられたのかも。
それにしたって、ミヤは笑ってた。
たとえそれが愛想笑いでも、ナンパしてきた男に愛想笑い出来るほど、ミヤは器用じゃない。
きっと、怯えるか、緊張して言葉を発せなくなるかのどちらかだろう。
じゃあやっぱり、合コンしてたのか?
なんでだ?!
焦るな、焦るな。
何か理由があるはず。
俺とアンナの関係を勘違いして…?

流星は店を出た瞬間気付いた。

違う。そうじゃない。
ミヤは、幸せになろうとしてたんだ。
置き去りにしたのは俺だ。
俺がどうこう言える立場じゃない。
何を焦ってたんだ。
ミヤを引っ張って、何邪魔してんだ、俺。

ミヤを置き去りにして、挙句の果てにミヤの幸せを邪魔して…

俺最低じゃん。

「大丈夫か?」

「え?」

「合コンだろ?あれ、ミヤ、ああいう所大丈夫なのかなって思って。」

「あ、い、今、チャレンジしてるところ。」

やっぱり。俺が介入することじゃない。

「そっか、引っ張って来ちゃってごめんな。店入ろ。」

ミヤを振り回して、何やってんだ俺。


流星はため息を1つつき、店の中に戻った。
ミヤと別れたあとから、流星は家族との食事を上手く楽しめなくなってしまった。
あの男たちに笑いかけてるミヤの顔が頭から離れなかった。

明日学校行きたくないな。

どんなに行きたくないと思っても明日はきてしまう。
流星は憂鬱な気持ちで久々の学校に向かった。

学校につくと、俺の机と椅子は転校生の席に変わっていて、隣にはミヤが座っていた。
ミヤはなんだか、落ち込んでいる様子で、多分、合コンしている最中に俺が入ってきたから、罪悪感を抱いているんだと思う。
後で、気にしてないってことを伝えよう。
気にしてない訳じゃないけど、俺がそんなこと言えない。

ーーーーーーーーーーーーーーー
放課後になり、流星はミヤを探した。
だが、見つからなかったので廊下を歩いている転校生にミヤの居場所を聞こうと声をかけた。

「あのさ、席、ミヤの隣だよね?ミヤ、どこにいるか知らない?」

「は?ミヤ?屋上じゃね?」

え、なんか、露骨に嫌がられてる?
俺、なんかしたっけ。

「そ、そっか、ありがとな!」

「待てよ」

匡平は屋上に向かおうとした流星を呼び止めた。

「なに?」

「ミヤに会って、どうする気だよ」

「どうして、それを君に言わなくちゃいけないんだ?」

「お前がいない間、色んなミヤを見てきたよ。悲しそうなミヤも。あいつ、お前のことしか考えてなかったんだよ。」

「………そっか。でももう、そうじゃないみたいだから。」

「意味わかんねえ。」
匡平はそう吐き捨て、そそくさと立ち去ってしまった。

…なんだったんだ?

流星は腑に落ちないまま、ミヤがいる、屋上に向かった。
屋上の前まで到着し、扉を開けたが、ミヤの姿は見当たらなかった。
まだ来てない、か。

しばらく待っていると、暗い表情をしたミヤが階段を上がってきた。

「流星…?」

「お、ミヤ。やっと来た。」

「なんでここにいるの?」

「伝えたいことがあってさ。」

ミヤは眉間にシワを少し寄せて、流星を見つめている。

これで、もうおしまいだ。
流星は覚悟を決め、口を開いた。

「俺さ、手術、無事成功したんだ。それで、リハビリも順調にいったから、家でのリハビリも許可されて、予定より、ずっとはやく帰って来れた。」

「そっか。良かった。おめでとう」

ミヤは少し微笑んで言った。

「それに、俺言ったよね、ミヤには幸せになって欲しいって。だから、遠慮しないで、1歩踏み出して欲しい。」

「え、どういうこと?」

「昨日の合コンだって、今から会いに行こうとしている人だって、みんな良い人だと思う。だから、俺はなんの心配もないよ。そもそも、俺が置き去りにしたんだから、俺がどうこう言える事じゃないしね。だから、幸せを掴もうとしているミヤを応援するよ。本当に俺は大丈夫だから。」

「つまり、彼女を置き去りにした罪悪感を抱いて、彼女が幸せを掴もうとしているのをただ黙って応援すると。」

「うん。他の人にいっていいって言ったのは俺だし。」

「………………」

「今まで本当にありがとう。」

「なんでそんな無責任なの?!テレビ電話では浮気するなとか言っといて、自分は他の女の子と浮気して、いきなり帰って来たと思ったら私の幸せを応援するとか言って、自分は浮気しちゃってるから、彼女が他の男にいこうとしてるのは好都合だとか思ってるかもしれないけど、私は全然そんなつもりじゃない!私は流星に振り回されてばっかの自分が嫌で、待てって言っておけばずっと待ってる犬みたいに思われていたら嫌だった。だから、見返そうとした。嫉妬させようと……そんな自分が嫌だ。私は、酷いやつだ……」

そんな理由だったのか…?
別の幸せを掴もうとしてた訳じゃなかった。
それに、浮気ってなんだ?
やっぱりアンナとの関係を勘違いしてたのか?

ミヤ、泣いてる…!?

「待てって、泣くなよ。浮気ってなんのことだ?アンナか?!」

「しらばっくれないでよ」

「本当にアンナとはなんともなくて、本当だよ!」

何か、何か、証明出来るものは無いか。

流星があたふたしていると、屋上の扉が突然開いて、匡平が出てきた。

「ミヤ、何やってんだ。大丈夫か?」

匡平はミヤを心配そうに見つめている。

「きょ、匡平くん!」

「お前!さっき屋上確認した時はいなかったのに」

「お前の目は節穴か。何泣かせてんの?」

匡平は鋭い目付きで流星を睨みつけている。

「匡平くん!違うの、私が勝手に泣いただけで、」

「こいつが何かしなきゃ、ミヤは泣いたりしないだろ」

「本当になんもないんだよ、アンナとは」

「お前いい加減にしろ」

そう言いながら一瞬、匡平は流星の胸ぐらを掴もうとするが、手をピタっと止め、1度深呼吸をした。

「ここじゃなんだから、屋上でゆっくり話そうぜ、3人で。」

そう言いながら、屋上の方へ親指を向ける。

「さ、3人はちょっと」

「わかった。」

「えぇ!」

ーーーーーーーーーーーーーーー
何この状況……

めちゃくちゃ気まづい…
流星がアンナさんの名前を出しちゃったから、火に油を注ぐようなことになっちゃった。
どうしよう、話すって言ったってさっきからずっと無言なんだけど。
匡平くんは屋上に入ってから流星を睨みつけてるし。

「あ、あのさ、」「単刀直入に聞くが、アンナをどうやって誑かしたんだよ。」

ミヤが勇気を振り絞り、第一声を放ったが、それはあっけなく、匡平に遮られてしまった。

「誑かした?!だから、本当にそういう関係じゃないんだよ。」

「じゃあどういう関係だ?そういう関係じゃない証拠はあんのか?」

「…ないよ。ていうか、アンナとどういう関係だ。」

「俺はアンナの彼氏だよ」

「え、そんなことってあるのかよ、」

「都合悪かったか?」

「だから、違うんだ!」

「証拠は?」

「…っ…!」

流星が黙り込んでしまった所をミヤは悲しい表情で見つめていた。

「りゅーせー!」

「…………」

「りゅうせーい!」

「……………」

「ねえ!流星ってば!」

「りゅーせーい!」

「ねぇ、さっきから声聞こえない?流星って呼んでる声。」

「聞こえねーよ、幻聴だろ」

「ほんとだって!」

「りゅーせい!」

「ほら!」

「確かに、どっからだ?」

3人は辺りを見渡してみたが、誰の姿も見当たらなかった。

「下じゃない?」

ミヤはそう言いながら、屋上から校庭を見下ろす。

そこには、流星とのテレビ電話中にみた、アンナが立っていた。

「アンナさん?!」

「アンナ…!」

「あぁ!流星、やっと気付いた!今からそっち行くから!」

「アンナ?!なんでここに!?」

流星も心底驚いた様子だ。

ーーーーーーーーーーーーーーー
数分後

「わぁ!流星!来ちゃった!」

「アンナ、なんで来たんだよ!」

「流星に会いたくなっちゃってさー」

アンナはそう言いながら、屋上にどすんと腰を下ろした。

アンナさん、画面越しで見るよりずっと可愛い…!
目が緑色で凄く綺麗だし、髪の毛もサラサラで金色の髪の毛が夕日に当てられて更に美しさが増してる。

ミヤは思わずアンナに見とれてしまった。

「アンナ、来るなら連絡してくれよ。」

匡平がアンナの元へ行き、そう言った。

「誰ですか、あなた。」

「は?何言ってんだよ」

「私、こんな人知りません」

アンナはキッパリとそう言い、匡平から顔を背けた。

「お前が浮気なんて絶対ないだろ、なんでだよ。」

匡平はアンナの言葉に動じず、話し続ける。

「こいつに何されたか知らねーけど、戻ってこいよ、頼むから。」

アンナはその言葉を聞いた途端、匡平を怒鳴りつける。

「さっきからの匡平の言葉、そっくりそのままおかえしする!猫にヒンドゥー語で語りかけるぐらいナンセンスだよ。」

アンナさん例えが独特過ぎてピンと来ない…

「お返しするってなんのことだよ。」

「匡平も浮気してんじゃん!」

「え、匡平くん、そうだったの?」

「そうだったの?じゃない!相手はあなたでしょ!」

そう言い、アンナは剣を振りかざすように鋭くミヤを指さした。

「え、私?!」

「私、この学校に来るの、2回目なの。」

「え、そうなの!」

「どうりで、迷わず校庭から屋上に来れた訳だ。」

「匡平がどんな風に生活してるか見に来たの。サプライズで。そん時、見ちゃったんだ。匡平がその子押し倒してるとこ」

嘘…。
彼女さんに絶対見られちゃダメなとこだよね…
やっぱり、あの距離感のおかしさはろくな事にならない。

「確かに、私はハーフだし、アメリカにも長く住んでたから、日本人より異性との距離も近いかもしれない。だけど、私と付き合ってから私が異性と接してる時の距離感が移ったって言ったって、さすがにエスカレートしすぎだよ。」

「ごめん、俺、もともと上手く距離感が掴めなくて…」

「私には接近してきてくれないのに?」

「本当に好きな人には出来ないもんなんだよ。俺だって一応思春期男子だぞ。」

「どうだか。それで嫌になって、流星に私が一方的に近付いたの。そうしたら、まさか流星の彼女が匡平が押し倒してた子だったなんて。ほーんと偶然!」

アンナは両手の平を上へ向け首を傾げた。

「え、じゃあ、流星とアンナさんは」

「付き合ってないよ。なにもなかった。」

じゃあ、浮気なんて無かったんだ。
本当にただの友達だったんだ。

「私たちも本当に、本当に何もないんです!匡平くんには相談乗ってもらってただけで。匡平くん、アンナさんの話もよくしてたし、私を初めて見た時、アンナさんに似てるって」

「ばか、それを言うなよ」

「そうだったの?」

「…ああ。アンナと居れないのが寂しくて、ミヤをアンナだと思って、押し倒したりしてた。ミヤごめんな。」

「そうだったんだ。いや、全然大丈夫だよ」

「はぁ。それを本人にやってくれないかな~」

「お望みなら。」

そう言うと匡平は勢いよくアンナを押し倒し、少しの間もなくキスをした。

「あっ!え、ちょ!」

ミヤが思わずキャッキャッと騒いでいると流星が後ろからミヤの口を塞いだ。

「静かに」

「りゅうせ、あ、ごめん」

「行こっか」

「行くってどこに?」

「2人だけになれるとこ」

「え、それって」

ミヤは流星に手を取られ、2人を残し、屋上から出ていった。

「ここなら、誰も来ないよな。」

流星とミヤの2人は美術室に来ていた。

「この教室、懐かしいよな」

「うん、りみと色々あった時によくここにきたよね」

「楽しかったなあ。」

「そうだね。」

「ねえ、あの頃に戻らない?」

「やり直そうってこと?」

「うん、やり直そうって言っても、俺ら別れたわけじゃないけど、」

「あはは、確かに」

「もう1回、次ならきっと上手くやっていけるし、今以上にミヤのこと大切するよ。本当に。」

「うん、上手くやっていけるよ。きっと大切にして貰える。」

「じゃあ、」

流星の前に立つミヤは瞳に涙をたくさん溜めて流星を見つめている。

「でも、もう次はないの。」

ミヤの両目から涙が流れた。
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