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虚偽

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この「ロマ」という街のダンジョンは各地のそれと比べ、容易な部類に入る。国営ギルドが発表している情報を見て己もこの地へと赴いた。
が、容易といえどダンジョン内は常に変化していて出てくるモンスターもダンジョン内を構成してる材質も異なる。ダンジョンの機嫌によって生死が決まるとさえ言われている。
難易度の決定は、「モンスターの平均レベル」「構成物質」「平均クリアタイム」による。
一応、ギルド職員が中に入り実地調査を行っているが、危ない所には変わりない。

怪我をしている男を最後尾としてダンジョンに入る。剣士たる自分が一番前、弓使いらしい彼女が真ん中。基本的に一度倒した敵は復活しないので後方が一番安全といえる。


「お仲間さんは何処にいるんですか?もしかしたら会えないかもしれませんよ」
「仲間はボス前の水晶部屋にいる。ただ、本当に動けなくてな。俺も人を担げる状況じゃなかったんだ...」


彼女の問いに答える男。
水晶部屋とは文字通り水晶が置かれている部屋で、その水晶に触れればダンジョンの入り口に戻れる。この水晶部屋は気まぐれに現れるがボス部屋前には必ず一つある。が、高難易度になるとボスを倒すまで外に出られません、なんていうこともあるらしい。

石レンガ調の部屋や廊下は薄暗く、先がしっかり見えない。


「あ。前方やや右側に2体います。奥やりますね」


けれど彼女が知らせてくれるので怪我無くここまで来れている。
手慣れている様子から、「助言者」なのかもしれない。


「あ!あそこだ!水晶部屋だ!!」


半ば男に押され、光る部屋に入る。










「お人好しが。可哀想になぁ」


目の前の銀に光る刃に息をのんだ。数人の息遣いが聞こえる。瞳が、刃から離せない。


「...新人狩りですか?」
「あぁそうだぜ。いやぁ簡単に引っかかって幸運だなぁ。モンスターも結構狩ってくれてこりゃ報酬も期待できそうだ」
「おう。良いやつに声かけたぜ。ま、お前らはここで終わりだ。大人しくボス部屋に突っ込め」


_ボスを倒すなんて無理だ
新人も新人。数回ダンジョンに潜っただけの初心者。ボスなんて一度も倒したことはないし、その辺のモンスターにすら多少もたつく。
引いても死。向かっても死。ボスによって惨たらしく死ぬよりはまだこの場で__


「わかりました。さ、行きますよ」


首元のインナーを引っ張られ、引きずられる。同時に首も締まって思考が靄がかった。
扉が開くような音とともに目の前が真っ暗になった。
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