身体強化って、何気にチートじゃないですか!?

ルーグイウル

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第3章 獣人少女ロロノ

竜殺し

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(読み直しているとやはり同じような言葉で表現しがちだなぁとか思ってしまいます)




「ぐるぅぅぅぅ」


 喉を鳴らしながら突進し、凄まじい速度とパワーで飛竜を吹き飛ばしたロロノ。肥大化した分厚い手足には鋭く爪が伸び地面をがっしりと掴む。
 可愛らしい口からは似合わないような鋭く伸びた牙が覗く。


 その目は赤く血走っており、真っ直ぐに飛んでいった飛竜を見据える。


「ロ、ロロノ……?」
「がるぁ!」


 その異様に対して怪我でふらつきながらも弱々しく再び名前を呼びかけるティナ、しかしロロノはその声に反応することはない。手に持つ銀羽槍を力強く握り飛竜を追う。


 分厚く変異した足から生み出される脚力はロロノの速度をどんどんと高めていく。その動きは隆人の域にすら近づいており、ティナの目に映るロロノの姿がぶれる。
 対する飛竜も地に着くや否や体勢を整えて、その巨腕で迎え撃つ。


「ギャオォォォォォ!!」
「がるぅぅぅぅぅぅ!!」


 その速度そのままでロロノは飛竜に突撃する。ズゴンという重たい音が響き、衝撃が波紋する。勢いのまま突き出された銀羽槍の一撃と飛竜の攻撃がぶつかる。
 先程はその膂力で一瞬で弾き飛ばされたロロノであるが、太く変異したロロノの腕はその筋力も高めているのか2人の威力は拮抗する。


 だがやはり体格差もあってか徐々に押され、防ぎ飛ばされる。数メートル程後退する。
 

「がぅ!」


 しかしロロノの突進はそこで止まらない。後退し地に足が着いた瞬間に真横に地を蹴る。体重移動で勢いを上手く利用しさらなる加速を得る。
 ロロノの姿が再びブレて今度は左側から飛竜へと迫る。


 腹部へと突き刺さる直前に飛竜がその槍を迎撃、吹き飛ばされる。


 ロロノの猛攻が続く。飛ばされては着地と共に角度を変えてすぐさま槍を突き出す。
 飛四方八方から突き出される槍の一撃、一つ一つが驚異的な威力を持っているそれを、飛竜は持ち前の動体視力の高さゆえに視認しその尽くを叩く。
 しかし弾いても弾いてもすぐさま迫り来る弾丸のごとき攻撃の嵐に少しずつ傷が付いて行く。



 その様子を意識が安定してきてティナが驚愕の表情で見つめる。ロロノが戦っているうちに、事前にポーチに少しだけ入れて置いた回復アイテムを全て使い切り、なんとか動けるだけ傷は癒えている。


「あれは、まさか『獣化』……?」


 飛竜に連続突貫をしかけるロロノ、彼女の身に起きている変化にティナが思い当たったかのように呟く。


「でも、獣化は本来上位獣人のみが使える固有スキルのはずです。しかもあれは身体の1部分しか獣化していないようですし……」

 
 ロロノの姿に当たりを付けたティナだが、その顔は確信と言うには遠い。


 そもそも獣化というのは獣人族という種族のみがもつ固有スキルというものに分類されるスキルである。
 自らのうちに眠る獣の力を解放する事で獣の姿に変異するというスキルである。獣人の知性を持つままに獣の力を振るう強力なスキルだ。


 しかしその獣化というスキルは獣人が誰しも使えるものでは無い。獣人という種族の中でもほんの限られた少数の才ある者のみが発現させることができるというスキルなのである。
 そしてもう1つ、獣化を発動した場合、その姿は獣そのものになる。狼の獣人なら狼の姿に、ねこの獣人なら猫の姿に変化するはずである。


 しかしロロノは変異しているのは手足と牙くらいであり、その姿はほとんどロロノのままである。未熟なだけ、とも取れるがそのような話聞いたこともなかった。


「がるぅぅぅ!」
「グギャァァァ」


 ティナがそんな思案をしている中、ロロノと飛竜は何十度目になる激突をする。空気を震わせ、弾かれてら突貫する。そんな光景が続く。

 
「まずいですね、ロロノは正気を失っているようです」


 ロロノの様子を見ながらそう呟くティナ。先程からロロノの攻撃は直線的に攻撃をしてはまたはじかれるが続いている。まさに力づくの攻撃である。
 高い戦闘技能と技を持つロロノの戦い方とはかけ離れたものであり、その血走った目からも正気を失い本能のまま攻撃しているのがわかる。


 いくら筋力や速度が上がったとは言え、竜種ーー飛竜を圧倒できるような身体スペックはロロノは持ち合わせていない。
 力任せの攻撃ではやはり被弾は避けられず飛竜に与える以上にロロノは傷をおう。


「しかも先程よりも速度が落ちている。限界でしょうか」


 見ると波状攻撃するロロノだがその速度はじわりじわりと遅くなっている。元々獣化は制限時間のあるスキルであるがそれにしても早い。恐らく中途半端な発動になっているのが原因だろう。
 ティナもそれを確認したところで急いでロロノの元に向かう。




 百に届くのではないかというほど銀羽槍の攻撃をしかけ続けるロロノだが大きなダメージには繋がっていない。
 むしろ自らのおった傷の方が多いようである。


 だが本能のまま攻撃し続けるロロノは全くそのような思考に至ってはいない。
 ロロノの速度が下がり始めてもそれは変わらない。見るとロロノの膨張していた手足が少しずつ萎んで来ているのだ。
 速度が低下した事で飛竜が反応できるようになったことでロロノの攻撃に遅れるず、ロロノの傷をおう頻度がさらに増える。


 だがそんな事気にもとめずロロノは突貫する。そして、

  カキィーン


 乾いた甲高い音がなる。ロロノの姿は完全に元に戻り、その攻撃が飛竜に防がれたのだ。
 今度は拮抗ではなく完璧に力で上回った飛竜は追撃を敢行し、軽く吹き飛ばされたロロノは空中で死に体となる。


「はぁっ!」


 そこに割り込む人影、回復し向かってきたティナが追撃に割り込む。振り下ろされた狂刃を剣によって横からずらす。その目にはスキル「天眼」が発動し光を放っており、寸分の狂いもなく攻撃を見きっている。


 そこでティナ達の後ろがピカッと明るくなる。背中に感じる物凄い熱量まるで太陽のようである。そして更にもう1つ魔力特有の淡い輝きが後からより照らす。
 だがむしろ飛竜の方にこそ影響が出る。突然の光を目に受けたことによって視力が奪われる。


「(リュート様ですね)」


 魔力の光を見て、この光が隆人によるものだと確信したティナはすぐにロロノを連れ離脱する。
 目をやられた飛竜は離脱を許してしまう。


「がる……ティナさまなのです?」
「ロロノ!元に戻ったのですね!」


 そこでロロノの正気が戻り、2人はひしっと抱き合う。
 そしてすぐに飛竜の方へと体を向けた。ついでにロロノがポーチから自分用の回復アイテムを一気に使う。


 ロロのがアイテムを使い切ったと同時に飛竜も視力を取り戻したのかこちらを向く。


「いけますか、ロロノ?」
「もちろんなのです」
「では、終わりにしましょう!」


 飛竜は全身に傷を受け満身創痍であり、ティナとロロノも動ける程度には回復したものの受けたダメージは大きく、今にも崩れ落ちそうである。


 三者が無意識にこれが最後だと確信する。


「いきます」
「いくのです」
「グァァァァ!!」
 

 3つの影が同時に地面を蹴り、走る。まず足の早いロロノと飛竜が激突。ロロノが槍で受け流すが爪の先が足をかすり血が出る。
 その裏から飛び出たティナがロロノと入れ替わりで剣を振り、回避しようとした飛竜の肩を浅く切り裂く。カウンターで放たれた尻尾の一薙ぎがティナの胴を払う。


 それを後方移動でいくらか軽減したティナ2メートル程離れた所で着地しそこから炎弾を3つ作り放つ。


 近距離で素早く放たれた火の玉が爆発しその間に再びティナが接近していく。
 とそこで飛竜が首をグルンと180%回転させる。その方向にはロロノが上空から迫っている。


「きづかれたのです!?」


 極限に追い込まれた生命の虫のしらせのようなものか、背後からの奇襲に反応した飛竜は口をガバッと開ける。そして大きく息を吸う。
 中は火がちりちりと音を立てる。


 流石に近距離に寄ったとはいえ空中ではブレスは避けられない。


「まだです!はぁっ!」


 しかしティナは諦めない。左手を前に出し叫ぶ。すると飛竜の身体がガクンと一瞬力を失ったように揺れる。ブレスは中断され飛竜はすぐに再開しようとするが、既に遅い。


「ロロノ!」
「これでおわりなのです!」
「魔力剣!!」「魔力槍なのです!!」


 生まれた隙。2人が執念でこじ開けたその一瞬にティナとロロノは全てをかける。
 残りわずかなMPの全てを己が得物に注ぎ込む。そして一撃が決まると同時に全てを放出した。


 轟音、そして静寂。


 飛竜を中心にすれ違うように武器をふり抜いたティナとロロノ。そして、飛竜の体が崩れ落ちた。
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