身体強化って、何気にチートじゃないですか!?

ルーグイウル

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第5章 森王動乱

兆候

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「感謝する。お主達がいなければ同胞達は帰ることはなく、結界も破られていただろう。里は間違いなく窮地に陥っていた」


 モーロ率いる監視隊と魔物の群れとの戦闘、壊滅寸前の彼らの元に、音と気配でそれを察知した隆人達がギリギリで到着し、救った。


 そして里へと戻った隆人達だったが、騎士団長シルヴィアに連れられて再び里長の間へと通される。そして開口一番の感謝の言葉と共に里長が頭を下げる。


「私からも言わせてくれ。3人共、私の大切な部下を、仲間を助けてくれて感謝する」


 里長に続くようにシルヴィアも頭を下げる。それを受ける隆人はなんとも言えない表情である。
 戦いの気配を察知してやってきたのは事実であるが、このような展開を予想して行動したわけではない。それでこのような反応をされては何やら気恥ずかしくなる。
 それに、このエルフとの一件以降、何やらこのような展開を何度も見ている気がする。感謝されるのは嫌ではないが、やはりこう幾度とされると困惑してしまう。


 ティナ達はそんな事とは関係なく恐縮しっぱなしなのであるが。

 
「これが俺たちのやるべき事だからね。でも、感謝の言葉は受け取らせてもらうよ。それに、わざわざ呼び出したって事は、要件はそれだけじゃないんだよね?」
「うむ、お主達を呼んだのはもちろん感謝の意を伝える事が最大だがそれだけではない。ここへ来てもらったのは依頼について伝える事があるからだ」
「依頼について?何かな」


 そう尋ねる隆人、その答えは里長ではなく隣に控えていたシルヴィアによってもたらされた。
 

「それについては私から話す。先の戦闘にも関係ある話だ。我々騎士団のモーロ隊への合流が遅れた理由、先ほど、捜索に出ていた騎士団の分隊の1つが魔物達の本陣らしき群れを発見した。里の東、10キロほど離れたところにおよそ数万の大群を翡翠眼で捉えたとの情報でな、その情報を確かめる為、騎士団のいくつかが向かったのだ。そしてその結果その情報が真実だと判明した、だがその結果皆の意識は里の東側へと向いてしまった。そのせいでモーロ隊の報告の対応が遅れてしまった」


 モーロ達が戦い、隆人達が向かったのは里の北西側の結界の端。本隊がいたのは里の東側、流石に逆側ともなれば連絡が届くのも遅くなるだろうし不意をつかれた騎士団の動きが鈍ったのは仕方なかったのかもしれない。
 

「なるほどね、でも魔物の大群が発見されたのと同時刻にその逆側で魔物の奇襲があったっていうのは偶然とは思えないね」
「儂もシルヴィアも同意見だ、恐らく狙っての事だ。北西を襲ったのは魔物達による奇襲といったところだろう、奴らは大量の魔物という手札があるからな」


 隆人の頭に例の魔物の事がよぎる。敵側の頭であるオーガの淘汰種、魔物には本来ないはずの知能を有すかの魔物なれば、奇襲というを取ってきたのも頷ける。


「俺たちが相手をしているのは魔物であって魔物でない存在。その事をもう一度再確認する必要がありそうだね」
「知能を持つ魔物、これまでとは違った戦いになりそうですね」
「ロロノもたたかうのです」


 知能を持つ強大な魔物と大群。改めて理解したがそれで止まる事ではない。むしろこれから始まるであろう戦いに思いをはせる。
 

「それで、どうなのかな?その魔物の本陣っていうのは」
「あぁ、そうだな。実際に確認していくつかわかったことがある」

 
 シルヴィアが確認によって判明した情報達を話す。


「まず、現在魔物達は動きを止めている。だが何もしていないというわけではない。大森林の各所から続々と魔物が集まってきている。その数は少しずつ増えており、元の予測であった五万を越えようかという勢いです」
「敵の戦力は増えているんだね。しかも種別はバラバラだろうし厄介だな」
「中には恐らく先ほどのブラッドパンサーのようなAランクの魔物も混ざっているでしょうしね、強力な個体はそれだけで脅威です」
「いえ、不幸中の幸いというべきか増加分には強力な魔物の姿は確認できませんでした」



 元より大きな差が開いている戦力において、更にその差が広がったというのは、隆人達にとっては負報である。
 しかし、強力な魔物は増えていないというのは大きい、弱い魔物であればエルフ達の魔物でも十分一掃できる。増加による脅威は遥かに小さい。


「それともう一つ、群れの中には奴は確認できなかった。どこかに姿を隠しているのか周囲含め発見は出来なかった。だがすぐに合流すると思われる」


 その言葉を受けて、隆人が先の戦闘を思い出す。全ての敵を討伐した直後に感じた強烈な殺気の波動。隆人すら背筋を身じろぎする殺気の主、遠かった為に姿までは見えなかったが、恐らくその主がかのオーガなのだろう。


「後、これは情報と言うには弱いが大群の中に妙な魔力を醸すものがいる、と監視隊の中で魔力感受性の高い者が言っていた。一応報告しておこう」
「妙な魔力……か」


 他愛もない情報のようであったが、隆人はその妙な魔力を醸す者というのが気になった。しかしそれ以上何かわかる訳でもないゆえ一度保留にして棚上げする。


「本格的な開戦も近そうだね」
「あぁ、今はまだ群れ自体に動きは見られないがそれも長く続くとは思えない。まもなく、魔物達の進行が始まると予想される」


 そう言って神妙な顔つきを増すシルヴィア。予想を超える大群、この先に控える戦いは確実に死地になるだろう。今回の戦闘のように死傷者0という都合のいい結果にはならないだろうと容易に予想がつく。


「開戦前に範囲攻撃で叩くっていうのはどうかな?エルフ達は魔法も得意なんだし」
「不可能ではないが、難しい。まだ魔物達は増加中というのもあるが、その数ゆえかなり広範囲に群れが広がっている。魔法による攻撃では遠距離部隊の総力を駆使してもその群れ全てを範囲に収める事はできない上に、敵には魔力耐性の高い魔物も多く存在する。群れに大きなダメージを与える前にこちらの魔力が尽きる方が早いだろう。地の利を生かした防衛戦と小隊単位で奇襲を行い少しずつ削っていく作戦で進めるつもりだ」


 たしかに、魔法で先制攻撃というのは有効な手段であるが、それは奇襲としての効果が得られる場合に限った話である。たしかにエルフの総力を駆使すればある程度の被害を与えられるであろうが、火力と人員が致命的に足りていない。
 騎士団の作戦は状況から見れば妥当なものであった。


 隆人はシルヴィアの話を聞き、考え込むような仕草を見せた。


「とにかく、開戦は間近だ、森の空気も変わってきているしな、リュート殿達もしっかりと休息を取って、戦いに備えてくれ」
「うん、わかったよ」


 そう言葉を交わして、隆人達は里長の間を後にした。


(実は本章はこれまでの各章に比べて、初期のストーリー展開から色々と調整が入っています。こうしたらいいんじゃないかとか、ただそのせいで毎回ズレがないかビクビクしながら書き進めてます汗)
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