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組織の調査1
恐ろしい男
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「さきほど長い間会っていないと言ったが、確かに会ってはいないな。だがオレはフブキがどこで何をしてどうやって生きていたのか知っている。ずっと、監視させていたからな。」
そんな台詞を聞いて、ヒサメならあり得そうなことなのにそれでもゾッとした。
この人ならやりそうだというのに、確かにその発想はなかった。
「子供であるフブキがたった一人で生きていくことが困難なのは当然だ。フブキが死ぬようなことがあればオレは耐えきれない。だから、フブキが子供のうちは見張る者を付けさせた。大人になってからは、定期的に見に行かせるようにしていたが、まさかそのいない間に命の危機に瀕するとは思ってもみなかった。それを救ったのがリビ殿だった。」
あの盗賊に襲われた時に丁度、見張り役がいなかったということか。
「見張り役は口下手で、フブキの様子を聞いても“生きてる”とか、“仕事してた”とか大雑把な回答しかよこさない奴でな。フブキに会えた時は本当に嬉しかったんだ。フブキに会えてようやく、見張り役の言葉は本当だったと信じることもできた。それまではあまり、信用すらしてなかったからな。」
シグレも言っていたようにヒサメは周りの者を信じていない。
だからこそ、フブキの姿を見るまでは生きているのか死んでいるのかすら分からなかったのだろう。
監視をさせていたとはいえ、真実を言っているのか疑っていたせいでフブキの心配する気持ちが減ることはなかったということだ。
「ここまで聞いて分かっただろう?オレがリビ殿に感謝してもしきれないという気持ちが。フブキを救った時点でオレを救っている。だから、リビ殿も彼を知っておいてほしい。」
ヒサメがそう言うと、白い翼を持つ人が目の前に現れた。
真っ白な髪と透き通る陶器のような肌、そして白い服。
本に出てくる天使のような姿に息を飲む。
すると、その白い彼はまた姿を消した。
「気配を消すのが得意なエルフだ。彼は希少な種族ゆえに白銀の国の兵士に捕まえられ閉じ込められていた。あのままオレが牢獄を壊さなければ貴族に売られていたかもな。オレのために働くことを条件に解放し、王族の隠密としてオレが特訓した。彼のことを知っているのはミゾレとオレだけだが、シグレは気付いている可能性もあるな。あいつは優秀だから。」
その言葉、シグレに言って欲しい。
そう思いつつ、やはりミゾレは一番ヒサメの近いところにいる者らしいということが分かる。
そう納得していたが、そういえばそれどころではない。
「あの、隠密を私に教えたら駄目じゃないですか?」
「何が駄目なんだ?ドクヘビの件しかり、リビ殿にはこれからもオレと行動してもらうことが増えるはずだ。緊急時、彼の存在を知っていない方が混乱をまねく。」
「しかし・・・。」
そんな重要なことを白銀の国の者ですらない私に教えるなんて危機管理がなっていないと思うのだが。
すると、ヒサメは腕を組んで流し見るように私を見た。
「ああ、リビ殿にとってオレは“仕事相手”、だからか?」
先ほどヴィントに言ったセリフだ。
「仕事相手程度の仲で重要な情報を共有すべきではないと言いたいのか?だが、オレの仕事相手であるシグレやボタンはオレのために命をかける存在だ。リビ殿の中で、仕事相手というのがどの程度の位置づけなのか知らないが、オレにとっては命をも預ける存在だ。その服を身に纏っている時点で、オレがそういう相手に選んでいると思わなかったか?」
白銀の国の騎士しか着ることの出来ない紺色の制服。
シグレやボタンが背負っているであろう誇りを持たずして、着てはいけない制服。
私が着ていては駄目だという気持ちと同時、そんな半端な気持ちで着ていた自分が恥ずかしい。
「ヒサメ様、私にはこの制服を着る資格が」
「オレが着ろと命じたものを簡単に脱げるとは努々思わないことだ。オレが選んだ者を否定することは誰にも許されない。本人でさえも。リビ殿はもう少し危機管理を学んだ方が良さそうだ。説明が省けるからという理由で、騎士しか着ることが許されないこの制服を渡すとでも?」
「え、違うんですか!?」
本気でそう思っていた私は思わず声を上げていて、ヒサメは耳をへにゃりと曲げて口元を緩めた。
そのまま堪え切れなかったのか、口元を隠してククッと笑い声が漏れる。
「そちらの世界の者は疑うことを知らないのか?怪しい者についていくなよ、オレと手を繋いでおくか?」
「からかわないで下さいよ!だいたい、こんな服渡されなくても仕事を放棄したりしないのに。」
「分かっていないな。簡単には逃げられないことを自覚してもらうためだ。彼の存在を教えたのも同じ理由なんだが。」
そういえば、エルフの彼はどうやってフブキの居場所を把握しているんだ。
つまりそれは、どこにいても見つけられるからなという脅しなのか?
「あの、エルフの人はどうやってフブキさんを」
「教えても良いがその話はまた今度な。どこへ逃げても無駄だと知っておいてくれればいい。」
上機嫌のヒサメとは裏腹に私は頭を抱える。
最近は怖くなくなってきたというのに、やっぱり怖い面があるのがこの男だ。
普段優しいぶん、時折見せるこの歪んだ執着が恐ろしい。
「安心しろ、フブキのように監視させたりはしない。」
「それはありがたいですが、当然ですよね。」
そんな会話をしながら歩き続けて到着したのは墓地だった。
そんな台詞を聞いて、ヒサメならあり得そうなことなのにそれでもゾッとした。
この人ならやりそうだというのに、確かにその発想はなかった。
「子供であるフブキがたった一人で生きていくことが困難なのは当然だ。フブキが死ぬようなことがあればオレは耐えきれない。だから、フブキが子供のうちは見張る者を付けさせた。大人になってからは、定期的に見に行かせるようにしていたが、まさかそのいない間に命の危機に瀕するとは思ってもみなかった。それを救ったのがリビ殿だった。」
あの盗賊に襲われた時に丁度、見張り役がいなかったということか。
「見張り役は口下手で、フブキの様子を聞いても“生きてる”とか、“仕事してた”とか大雑把な回答しかよこさない奴でな。フブキに会えた時は本当に嬉しかったんだ。フブキに会えてようやく、見張り役の言葉は本当だったと信じることもできた。それまではあまり、信用すらしてなかったからな。」
シグレも言っていたようにヒサメは周りの者を信じていない。
だからこそ、フブキの姿を見るまでは生きているのか死んでいるのかすら分からなかったのだろう。
監視をさせていたとはいえ、真実を言っているのか疑っていたせいでフブキの心配する気持ちが減ることはなかったということだ。
「ここまで聞いて分かっただろう?オレがリビ殿に感謝してもしきれないという気持ちが。フブキを救った時点でオレを救っている。だから、リビ殿も彼を知っておいてほしい。」
ヒサメがそう言うと、白い翼を持つ人が目の前に現れた。
真っ白な髪と透き通る陶器のような肌、そして白い服。
本に出てくる天使のような姿に息を飲む。
すると、その白い彼はまた姿を消した。
「気配を消すのが得意なエルフだ。彼は希少な種族ゆえに白銀の国の兵士に捕まえられ閉じ込められていた。あのままオレが牢獄を壊さなければ貴族に売られていたかもな。オレのために働くことを条件に解放し、王族の隠密としてオレが特訓した。彼のことを知っているのはミゾレとオレだけだが、シグレは気付いている可能性もあるな。あいつは優秀だから。」
その言葉、シグレに言って欲しい。
そう思いつつ、やはりミゾレは一番ヒサメの近いところにいる者らしいということが分かる。
そう納得していたが、そういえばそれどころではない。
「あの、隠密を私に教えたら駄目じゃないですか?」
「何が駄目なんだ?ドクヘビの件しかり、リビ殿にはこれからもオレと行動してもらうことが増えるはずだ。緊急時、彼の存在を知っていない方が混乱をまねく。」
「しかし・・・。」
そんな重要なことを白銀の国の者ですらない私に教えるなんて危機管理がなっていないと思うのだが。
すると、ヒサメは腕を組んで流し見るように私を見た。
「ああ、リビ殿にとってオレは“仕事相手”、だからか?」
先ほどヴィントに言ったセリフだ。
「仕事相手程度の仲で重要な情報を共有すべきではないと言いたいのか?だが、オレの仕事相手であるシグレやボタンはオレのために命をかける存在だ。リビ殿の中で、仕事相手というのがどの程度の位置づけなのか知らないが、オレにとっては命をも預ける存在だ。その服を身に纏っている時点で、オレがそういう相手に選んでいると思わなかったか?」
白銀の国の騎士しか着ることの出来ない紺色の制服。
シグレやボタンが背負っているであろう誇りを持たずして、着てはいけない制服。
私が着ていては駄目だという気持ちと同時、そんな半端な気持ちで着ていた自分が恥ずかしい。
「ヒサメ様、私にはこの制服を着る資格が」
「オレが着ろと命じたものを簡単に脱げるとは努々思わないことだ。オレが選んだ者を否定することは誰にも許されない。本人でさえも。リビ殿はもう少し危機管理を学んだ方が良さそうだ。説明が省けるからという理由で、騎士しか着ることが許されないこの制服を渡すとでも?」
「え、違うんですか!?」
本気でそう思っていた私は思わず声を上げていて、ヒサメは耳をへにゃりと曲げて口元を緩めた。
そのまま堪え切れなかったのか、口元を隠してククッと笑い声が漏れる。
「そちらの世界の者は疑うことを知らないのか?怪しい者についていくなよ、オレと手を繋いでおくか?」
「からかわないで下さいよ!だいたい、こんな服渡されなくても仕事を放棄したりしないのに。」
「分かっていないな。簡単には逃げられないことを自覚してもらうためだ。彼の存在を教えたのも同じ理由なんだが。」
そういえば、エルフの彼はどうやってフブキの居場所を把握しているんだ。
つまりそれは、どこにいても見つけられるからなという脅しなのか?
「あの、エルフの人はどうやってフブキさんを」
「教えても良いがその話はまた今度な。どこへ逃げても無駄だと知っておいてくれればいい。」
上機嫌のヒサメとは裏腹に私は頭を抱える。
最近は怖くなくなってきたというのに、やっぱり怖い面があるのがこの男だ。
普段優しいぶん、時折見せるこの歪んだ執着が恐ろしい。
「安心しろ、フブキのように監視させたりはしない。」
「それはありがたいですが、当然ですよね。」
そんな会話をしながら歩き続けて到着したのは墓地だった。
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