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南国編 一章:マシラ共和国
傭兵銀行
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ギルドマスターのグラシウスとの話を終え、リックハルトと共に部屋から出たエリクとアリアは、廊下を歩きつつリックハルトから話し掛けられた。
「アリア殿、エリク殿。今日まで御苦労様でした」
「いえ。リックハルトさんも、今までありがとうございます」
「いえいえ、私はこれが仕事ですからね」
「そうですか」
「……もし良ければ、御二人とも私の仕事を手伝いませんか? 勿論、傭兵として」
「仕事ですか?」
「私が商う商団で護衛をしつつ、各地を巡る仕事です。エリク殿は他者の気配読みがとても鋭い。アリア殿は魔法師として卓越している。正直な話、貴方達ほどの傭兵を手放すのは、勿体無いと思いましてね」
「ありがとうございます。……そうですね。まだ私達はここに着いたばかりで、右も左も分かりません。リックハルトさんの助けがあれば、大いに助かるでしょう」
「おぉ、それなら……」
「だからこそ、私達はしばらくこの首都に身を置いて、自分達で知識を蓄えつつ、自分がやれる事を広げていこうと思います。その際にリックハルトさんの商団の仕事を受ける事があったら、よろしくお願いします」
「なるほど、そうですな。唐突な誘いが過ぎたかもしれませんな」
「いえ、お誘いありがとうございます。また機会があれば」
「ええ、また機会があれば。私の名前で出している支店が、この首都にもありますので。何かあればいつでもお尋ね下さい。商売でも仕事のご都合でも、御相談でも取り合わせて頂きますよ」
「はい。ありがとうございます」
そうした短い誘いと断りを交えつつ、リックハルトと傭兵ギルド内で別れたアリアとエリクは、傭兵ギルドの受付で認識票を提示して更新を終えた。
そして今回の南の国までの護衛依頼の依頼金を、ギルド職員の女性から受け取った。
「こちらが、リックハルト氏の商団護衛依頼の報酬です。一人で金貨二十枚、二人で金貨四十枚となります」
「はい、確かに受け取りました」
「また、ポートイーストのギルドマスターであるドルフ氏から、追加報酬をギルド側で支払うようにと連絡が届いています」
「私達に、追加報酬?」
「アリア様とエリク様には、一人当たり金貨二百枚の追加報酬です」
「!?」
そうして護衛依頼の報酬の他に、麻袋に詰め込まれた金貨が渡されると、アリアとエリクは目を丸くしつつ疑問に思った。
その疑問を話すように、アリアは受付に聞いた。
「あの、何かの間違いでは?」
「いえ。ここのギルドマスターのグラシウス様も承認されている御報酬ですので、確かですね」
「そ、そうですか……」
「それと、グラシウス様から報酬を払う際に渡すようにと、お手紙も受け取っています。どうぞ」
「……は、はい」
受付から受け取った手紙の封を切り、その場で手紙の内容を速読したアリアは、そこに書かれている内容に驚きつつも、納得して手紙を懐に入れて受付に礼を述べた。
「分かりました。ギルドマスターには、アリアとエリクが感謝していたとお伝えください」
「はい。もし良ければ、金貨を御預かりしましょうか?」
「預ける?」
「傭兵ギルドでは、多額の報酬が払われる場合に、各個人で持ちきれない金貨などを預かり、必要な場合に引き出す事も行っています」
「そういえば、説明の時にそんな事を……。でも、銀行のような事をしているんですか? 傭兵ギルドって」
「ええ。傭兵ギルドでは各銀行と提携を結んでいます。傭兵ギルドほど安全な金貨の預け場所も存在しませんし、傭兵方だけではなく、商人や役人の皆様も多額の金貨を頂け、投資する事がありますね。勿論、為替なども行わせて頂いていますので、他国の傭兵ギルドで貯蓄額をそのまま、その国の通貨として扱えるように手続きも行えますよ」
「へぇ……。傭兵ギルドって、思った以上に凄い組織なんですね」
「はい。傭兵ギルドは現状、人間大陸の中では七割強の国に認められた組織でございますので。それで、金貨の御預かりはどうしましょうか?」
「それじゃあ、この金貨四百枚を、そのまま預けて頂ければ」
「分かりました。少々お待ち下さい。認識票も御預かり致します」
傭兵の認識票を渡した後に、受付が魔道具の機械を使って鉄の認識票に何かを刻むと、それを再び返却して説明した。
「この登録番号そのものが、御二人の預金番号となります。仮に認識票を紛失した際に引き出しは行えませんが、認識票を再発行した際や、二年後に再登録を行う際には預金を再開させて頂きますので御安心ください」
「分かりました、ありがとうございます」
「それでは、アリア様とエリク様の金貨二百枚をそれぞれ御預かりさせて頂きます。取引や売買で金銭が必要となる際には、またお越しください」
受付の丁寧な対応に感謝しつつ、鞄の中に金貨四十枚を詰め込み、アリアとエリクは礼を述べて傭兵ギルドを後にした。
そして外の馬車置き場を探しつつ、エリクはアリアに聞いた。
「さっきの手紙。何が書いてあった?」
「餞別金だって。私達の新たなスタートの為に支度金として今回の報酬から少し割いて、私達に渡してくれって頼んでたみたいよ」
「そうか」
「色々と癪に障る人だったけど。まぁ、元貴族であり元帝国魔法師の先輩としては、後輩思いの良い人だと思うわ」
「貰った金は、どう使う?」
「うーん。とりあえず大金は預け続けましょう。あれだけ金貨があれば、一年かそこ等は部屋を借りられるでしょうし。そこで私とエリクと、ケイルも一緒に住むの」
「ケイルもか?」
「ケイルは仲間なんだから、一緒の家や部屋の方が都合が良いでしょ。それに、もし嫌ならケイルの方から断るはずだわ」
「そうか、分かった。言う通りにしよう」
「最低条件は、お風呂と水洗トイレが付いた家か部屋を借りるのよ!」
「そ、そうか」
そんな事を話しつつ傭兵ギルドの馬車置き場に辿り着くと、共に辿り着いた傭兵達と一緒にケイルが待っていた。
傭兵達の中でリーダー役を兼ねていた男が、訪れたアリアとエリクに気付いて話し掛けた。
「よう。ここまで御苦労さん」
「ええ。貴方達も護衛、ありがとうございます」
「といっても、出発時に比べたら些細な事しか起きなかったからな。仕事内容にしては、報酬が法外過ぎて申し訳なく思うさ」
「それでも助かりました。貴方達が居てくれたおかげで、道中は馬車の中でも安心して寝られましたから」
「俺達も、色々と回復魔法やエリクの読みに助けられた。感謝するよ」
そうして挨拶を交わすと、アリアとエリクは他の傭兵達にも挨拶し、感謝を述べつつ仕事の達成を言葉で祝った。
そんな中でアリアは傭兵達に聞いた。
「皆さんは、これからどうするんですか?」
「しばらくはこの町に居るさ。報酬の金貨千五百枚で何年かやっていけるが、なんだかんだで仕事もやりながらな」
「そうですか。御武運をお祈りしています」
「こちらこそ。お前さん達が無事に傭兵をやっていける事を祈ってるよ」
同行者だった傭兵達が互いの健闘を祈ると、アリアはケイルに視線を向けて歩み寄った。
そして気軽に話し掛ける。
「ケイルも、報酬は貰った?」
「ああ。マジで千五百枚の金貨だ。これで当分は仕事せずに食っていけるな」
「傭兵ギルドに預けたのね」
「ああ。ああいうのは便利だよな。王国にはああいうのは無かったし」
「へぇ。……ちょっと羨ましい。私達は貯蓄合わせて、金貨五百枚くらいかしら」
「五百枚なんて、この町で拠点になる家を借りて家具やなんかを用意してたら、使いきりそうだな」
「そんなに物価が高いの?」
「ここは広いけど、人口も多いからな。軽く万単位の人間がこの町にいるんだ。土地も高いし、宿の値段も結構高いはずさ」
「じゃあやっぱり、家か部屋を借りるしかないのかぁ」
「安部屋だったら、贅沢しなけりゃ金貨五十枚くらいで部屋を一年くらい借りれるだろうな」
「うーん……。せめて、御風呂が付いた部屋を……」
「風呂だったら、公衆浴場を使えば良いんだよ」
「公衆浴場があるの?」
「ああ。天然の温泉ってワケじゃないけど、風呂場がある。そこで入れば安部屋でも良いだろ?」
「……そうね、それでいいわね。教えてくれてありがとう、ケイル。これで私達の部屋を探す目安が分かったわ」
そう楽しそうに話すアリアが零した、不意の言葉にケイルは噛み付いた。
「ちょっと待て。私達の部屋?」
「ええ。私とエリクと、そしてケイル」
「いや、お前。エリクはともかく、アタシも入れる気かよ」
「どうせだったら三人一緒の部屋か家を借りましょうよ。部屋の借り賃も三人で払えば安くなるでしょ?」
「アタシはいい。別の部屋を借りる」
「えぇー」
「えぇーじゃねぇよ。第一お前等、一応は男と女だろ。普通に同棲しようとしてるんじゃねぇよ!」
「だって、相手はエリクだし。ねぇ?」
「そういう事じゃねぇって――……」
そうした些細な事を揉めているアリアとケイルを見ていたエリクに、傭兵の男陣から肘を当てられつつ小言を聞かされた。
「羨ましいねぇ、エリクの旦那よ。両手の花って奴かい?」
「両手に花?」
「アリアのお嬢さんは将来、別嬪になるのは分かるからなぁ。ケイルも良い身体してるしさぁ。そんな二人に囲まれて今後はこの国で暮らせるとか。正直俺達からして見れば、羨ましいぜ?」
「そうなのか」
「えっ。だって、ほら」
「俺は、アリアを守れるならそれでいい」
素っ気無い態度でアリア達の所へ歩み寄って行くエリクを見て、傭兵の男衆は呆れたように首を横に振った。
こうしてアリアとエリクを伴った一行は、無事に南の国マシラに到着し、依頼を達成して報酬を得る事が出来た。
「アリア殿、エリク殿。今日まで御苦労様でした」
「いえ。リックハルトさんも、今までありがとうございます」
「いえいえ、私はこれが仕事ですからね」
「そうですか」
「……もし良ければ、御二人とも私の仕事を手伝いませんか? 勿論、傭兵として」
「仕事ですか?」
「私が商う商団で護衛をしつつ、各地を巡る仕事です。エリク殿は他者の気配読みがとても鋭い。アリア殿は魔法師として卓越している。正直な話、貴方達ほどの傭兵を手放すのは、勿体無いと思いましてね」
「ありがとうございます。……そうですね。まだ私達はここに着いたばかりで、右も左も分かりません。リックハルトさんの助けがあれば、大いに助かるでしょう」
「おぉ、それなら……」
「だからこそ、私達はしばらくこの首都に身を置いて、自分達で知識を蓄えつつ、自分がやれる事を広げていこうと思います。その際にリックハルトさんの商団の仕事を受ける事があったら、よろしくお願いします」
「なるほど、そうですな。唐突な誘いが過ぎたかもしれませんな」
「いえ、お誘いありがとうございます。また機会があれば」
「ええ、また機会があれば。私の名前で出している支店が、この首都にもありますので。何かあればいつでもお尋ね下さい。商売でも仕事のご都合でも、御相談でも取り合わせて頂きますよ」
「はい。ありがとうございます」
そうした短い誘いと断りを交えつつ、リックハルトと傭兵ギルド内で別れたアリアとエリクは、傭兵ギルドの受付で認識票を提示して更新を終えた。
そして今回の南の国までの護衛依頼の依頼金を、ギルド職員の女性から受け取った。
「こちらが、リックハルト氏の商団護衛依頼の報酬です。一人で金貨二十枚、二人で金貨四十枚となります」
「はい、確かに受け取りました」
「また、ポートイーストのギルドマスターであるドルフ氏から、追加報酬をギルド側で支払うようにと連絡が届いています」
「私達に、追加報酬?」
「アリア様とエリク様には、一人当たり金貨二百枚の追加報酬です」
「!?」
そうして護衛依頼の報酬の他に、麻袋に詰め込まれた金貨が渡されると、アリアとエリクは目を丸くしつつ疑問に思った。
その疑問を話すように、アリアは受付に聞いた。
「あの、何かの間違いでは?」
「いえ。ここのギルドマスターのグラシウス様も承認されている御報酬ですので、確かですね」
「そ、そうですか……」
「それと、グラシウス様から報酬を払う際に渡すようにと、お手紙も受け取っています。どうぞ」
「……は、はい」
受付から受け取った手紙の封を切り、その場で手紙の内容を速読したアリアは、そこに書かれている内容に驚きつつも、納得して手紙を懐に入れて受付に礼を述べた。
「分かりました。ギルドマスターには、アリアとエリクが感謝していたとお伝えください」
「はい。もし良ければ、金貨を御預かりしましょうか?」
「預ける?」
「傭兵ギルドでは、多額の報酬が払われる場合に、各個人で持ちきれない金貨などを預かり、必要な場合に引き出す事も行っています」
「そういえば、説明の時にそんな事を……。でも、銀行のような事をしているんですか? 傭兵ギルドって」
「ええ。傭兵ギルドでは各銀行と提携を結んでいます。傭兵ギルドほど安全な金貨の預け場所も存在しませんし、傭兵方だけではなく、商人や役人の皆様も多額の金貨を頂け、投資する事がありますね。勿論、為替なども行わせて頂いていますので、他国の傭兵ギルドで貯蓄額をそのまま、その国の通貨として扱えるように手続きも行えますよ」
「へぇ……。傭兵ギルドって、思った以上に凄い組織なんですね」
「はい。傭兵ギルドは現状、人間大陸の中では七割強の国に認められた組織でございますので。それで、金貨の御預かりはどうしましょうか?」
「それじゃあ、この金貨四百枚を、そのまま預けて頂ければ」
「分かりました。少々お待ち下さい。認識票も御預かり致します」
傭兵の認識票を渡した後に、受付が魔道具の機械を使って鉄の認識票に何かを刻むと、それを再び返却して説明した。
「この登録番号そのものが、御二人の預金番号となります。仮に認識票を紛失した際に引き出しは行えませんが、認識票を再発行した際や、二年後に再登録を行う際には預金を再開させて頂きますので御安心ください」
「分かりました、ありがとうございます」
「それでは、アリア様とエリク様の金貨二百枚をそれぞれ御預かりさせて頂きます。取引や売買で金銭が必要となる際には、またお越しください」
受付の丁寧な対応に感謝しつつ、鞄の中に金貨四十枚を詰め込み、アリアとエリクは礼を述べて傭兵ギルドを後にした。
そして外の馬車置き場を探しつつ、エリクはアリアに聞いた。
「さっきの手紙。何が書いてあった?」
「餞別金だって。私達の新たなスタートの為に支度金として今回の報酬から少し割いて、私達に渡してくれって頼んでたみたいよ」
「そうか」
「色々と癪に障る人だったけど。まぁ、元貴族であり元帝国魔法師の先輩としては、後輩思いの良い人だと思うわ」
「貰った金は、どう使う?」
「うーん。とりあえず大金は預け続けましょう。あれだけ金貨があれば、一年かそこ等は部屋を借りられるでしょうし。そこで私とエリクと、ケイルも一緒に住むの」
「ケイルもか?」
「ケイルは仲間なんだから、一緒の家や部屋の方が都合が良いでしょ。それに、もし嫌ならケイルの方から断るはずだわ」
「そうか、分かった。言う通りにしよう」
「最低条件は、お風呂と水洗トイレが付いた家か部屋を借りるのよ!」
「そ、そうか」
そんな事を話しつつ傭兵ギルドの馬車置き場に辿り着くと、共に辿り着いた傭兵達と一緒にケイルが待っていた。
傭兵達の中でリーダー役を兼ねていた男が、訪れたアリアとエリクに気付いて話し掛けた。
「よう。ここまで御苦労さん」
「ええ。貴方達も護衛、ありがとうございます」
「といっても、出発時に比べたら些細な事しか起きなかったからな。仕事内容にしては、報酬が法外過ぎて申し訳なく思うさ」
「それでも助かりました。貴方達が居てくれたおかげで、道中は馬車の中でも安心して寝られましたから」
「俺達も、色々と回復魔法やエリクの読みに助けられた。感謝するよ」
そうして挨拶を交わすと、アリアとエリクは他の傭兵達にも挨拶し、感謝を述べつつ仕事の達成を言葉で祝った。
そんな中でアリアは傭兵達に聞いた。
「皆さんは、これからどうするんですか?」
「しばらくはこの町に居るさ。報酬の金貨千五百枚で何年かやっていけるが、なんだかんだで仕事もやりながらな」
「そうですか。御武運をお祈りしています」
「こちらこそ。お前さん達が無事に傭兵をやっていける事を祈ってるよ」
同行者だった傭兵達が互いの健闘を祈ると、アリアはケイルに視線を向けて歩み寄った。
そして気軽に話し掛ける。
「ケイルも、報酬は貰った?」
「ああ。マジで千五百枚の金貨だ。これで当分は仕事せずに食っていけるな」
「傭兵ギルドに預けたのね」
「ああ。ああいうのは便利だよな。王国にはああいうのは無かったし」
「へぇ。……ちょっと羨ましい。私達は貯蓄合わせて、金貨五百枚くらいかしら」
「五百枚なんて、この町で拠点になる家を借りて家具やなんかを用意してたら、使いきりそうだな」
「そんなに物価が高いの?」
「ここは広いけど、人口も多いからな。軽く万単位の人間がこの町にいるんだ。土地も高いし、宿の値段も結構高いはずさ」
「じゃあやっぱり、家か部屋を借りるしかないのかぁ」
「安部屋だったら、贅沢しなけりゃ金貨五十枚くらいで部屋を一年くらい借りれるだろうな」
「うーん……。せめて、御風呂が付いた部屋を……」
「風呂だったら、公衆浴場を使えば良いんだよ」
「公衆浴場があるの?」
「ああ。天然の温泉ってワケじゃないけど、風呂場がある。そこで入れば安部屋でも良いだろ?」
「……そうね、それでいいわね。教えてくれてありがとう、ケイル。これで私達の部屋を探す目安が分かったわ」
そう楽しそうに話すアリアが零した、不意の言葉にケイルは噛み付いた。
「ちょっと待て。私達の部屋?」
「ええ。私とエリクと、そしてケイル」
「いや、お前。エリクはともかく、アタシも入れる気かよ」
「どうせだったら三人一緒の部屋か家を借りましょうよ。部屋の借り賃も三人で払えば安くなるでしょ?」
「アタシはいい。別の部屋を借りる」
「えぇー」
「えぇーじゃねぇよ。第一お前等、一応は男と女だろ。普通に同棲しようとしてるんじゃねぇよ!」
「だって、相手はエリクだし。ねぇ?」
「そういう事じゃねぇって――……」
そうした些細な事を揉めているアリアとケイルを見ていたエリクに、傭兵の男陣から肘を当てられつつ小言を聞かされた。
「羨ましいねぇ、エリクの旦那よ。両手の花って奴かい?」
「両手に花?」
「アリアのお嬢さんは将来、別嬪になるのは分かるからなぁ。ケイルも良い身体してるしさぁ。そんな二人に囲まれて今後はこの国で暮らせるとか。正直俺達からして見れば、羨ましいぜ?」
「そうなのか」
「えっ。だって、ほら」
「俺は、アリアを守れるならそれでいい」
素っ気無い態度でアリア達の所へ歩み寄って行くエリクを見て、傭兵の男衆は呆れたように首を横に振った。
こうしてアリアとエリクを伴った一行は、無事に南の国マシラに到着し、依頼を達成して報酬を得る事が出来た。
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