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革命編 七章:黒を継ぎし者
魂の欠片達
しおりを挟む創造神の肉体に介在する『黒』の意識に触れたアリアは、今まで謎の深かった彼女の行動理由を知る。
それは望まぬ生死を繰り返す創造神を救う為に、世界の命運すらも変える事が出来る存在を見つけ、天界に導く事だった。
それによって選ばれたのは、創造神の魂を持つ生まれ変わりであるアリアと、その血筋を引くウォーリスの二名。
自分達が創造神の運命を変える為に導かれた事が明かされたアリアは、驚愕を浮かべながら『黒』の意識に問い質した。
「――……私とウォーリスが、世界の変革者ですって……。しかもそれで、創造神が救われるって……どういうことよ?」
『それは、私にも分からないの』
「は?」
『黒は繰り返される転生の中で、ある未来を視た。そしてその未来で、貴方とウォーリスが共に天界に立つ姿が視えた』
「!?」
『でも、それ以上の未来が黒には見えなかった。そしてそれ以上に、その未来までの道筋がとても複雑で、普通の方法では辿り付けない事が分かっていた。――……だから黒は、貴方達をこの未来まで導けるように転生を繰り返したの』
「……ちょっと待ちなさいよ。それって、初めから……黒が私やウォーリスと出会う前から、こんな未来にするよう仕組んでたって言うの……!?」
『そうだよ』
「……私達が体験した、螺旋の未来。アレもアンタが仕組んで、私達をこの未来に引き釣り込んだってことなの!?」
『そうだね』
「何が起こるのか分かった上で、全て進めてたってこと……。……なんて奴なのよ……!!」
アリアは嫌悪の表情を強めながら、周囲から響く『黒』の意識に悪態を零す。
しかしそうした嫌悪を否定するように、『黒』は自分の思考を伝えた。
『何が起こるかは、全ては分からなかったよ』
「え?」
『黒は、創造神の肉体に蓄積された意識。だから、断片的だった未来の予知を統合して視れる。……でもそれは、生まれ変わり続ける黒には視えない未来でもあった』
「……『黒』の集合意識であるアンタだからこそ、『黒』達が断片的に見ていた未来の予知を把握できてるってこと?」
『そう。だから貴方達と出会った黒は、全ての未来を視えていたわけじゃない。……でも、辿り着くべき未来がある事を知ってはいたの』
「それが、創造神の救済ってことね。……そしてアンタは、その役目として私とウォーリスを選んだ。でも、その救済方法までは予知で確認できていない。そういうことね」
『その通り』
「つまり全部、私達に丸投げって事じゃないのよ。……何なの、その計画性があるようで無いような行き当たりばったりな感じは?」
呆れるような物言いを見せるアリアは、辟易とした様子を見せる。
すると今度は否定しない『黒』が、渋るような声色で語り掛けた。
『ごめんね。君達にとって今までの出来事は、とても辛い体験ばかりだったのに』
「……まぁ、別にいいわ。そもそも、黒が私達に色々と仕組んでいたとしても。結局その選択をし続けたのは私達で、そこを責任転嫁して『黒』だけを責めたりする気は無いし」
『!』
「ただそういう話なら、前もって説明しとけとは思うわ。この土壇場の状況でいきなりそんな話をさせられても、どうすればいいか私自身には分からないもの」
『……ごめんね』
「それも黒の制約なんでしょ? だったら、別にいいわ。……それで、具体的にどうやって創造神を助けるの? 殺しても転生を繰り返す存在を、どうやって死なせられるわけ?」
今までの出来事に対して『黒』を責めるような態度を失くしたアリアは、改めて生死を繰り返す創造神を助け出す方法を尋ねる。
すると少し間を置いてから、『黒』は幾つかの方法を提案して見せた。
『一つ目の方法が、最も簡単。残り一本のマナの大樹を破壊してしまうこと。だけど、それをやってしまうと下界とそこに暮らす者達が一緒に世界は滅びてしまう』
「循環機構そのものを破壊してしまうと、世界も滅びるってパターンね。なら却下よ」
『二つ目が、創造神を完全に復活させてから、殺すこと。でも、それは今は難しいと思う』
「完全に復活?」
『創造神の肉体に、下界に存在したマナの樹と同数の創造神の魂を集める。そうすれば、創造神は完全な形で復活する』
「ちょ、ちょっと待ちなさい。それじゃあ、今の創造神はどういう状態なのよ?」
『肉体を満たす為の魂が足りないせいで、元の人格を形成できていないの。だから自我がほとんどないまま、肉体に蓄積している瘴気の影響で暴れ回ってしまうんだよ』
「じ、じゃあ……今起こっている創造神の世界破壊の計画を止める為には、私達を含めてあと六つの創造神の生まれ変わりを見つけて集めろってこと!?」
『そうだね。天界で今起きている状況は、五百年前に創造神の七つの魂と肉体が合わさって、完全に復活した事で起きた計画だから』
「……この計画自体を止める事が、不可能じゃないのよ……」
創造神を用いて世界を破壊しようとする計画を停止させようとしていたアリアだったが、この話を聞きそれが不可能である事を悟る。
すると表情を顰めながら、深い動揺の面持ちを浮かべて『黒』に問い掛けた。
「私達以外の六つの魂、その持ち主が誰か知ってるの?」
『知ってるよ』
「誰っ!?」
『でも、駄目なの。そのうちの一人は、ずっと眠り続けているから』
「眠ってる……!?」
『五百年前に復活した創造神を止めた子。彼女は今も、魔大陸のある場所で眠り続けている。……だから、全員を集めるのは不可能なんだよ』
「……なら、完全に復活させなくてもいい。せめて世界の破壊を停止させる事が可能な魂は、幾つ必要なの?」
『……また止めるだけだったら、四つの魂があれば』
「四つね。だったら、その四つも今すぐ創造神へ集めてやるわ。……もう集めてるんでしょ? 黒は、天界へ」
『うん。こうなる状況までは、分かっていたから』
「なら教えなさい。私達と同じように、分けられた創造神の魂を受け継いだ残り三人を」
『……分かった、教えるね。君以外に、創造神の魂を受け継いだのは――……』
「――……はぁっ!?」
『黒』が明かす創造神の生まれ変わり達の名を聞いたアリアは、その表情に驚愕の色を浮かべる。
そしてその三名の人物こそ、アリアが良くも悪くも最も知る存在だった。
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