虐殺者の称号を持つ戦士が元公爵令嬢に雇われました

オオノギ

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革命編 八章:冒険譚の終幕

急報

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 アズマ国に赴いたケイルは、『みかど』と呼ばれている『白』の七大聖人セブンスワンを発見する。
 そして彼を天界うえへ連れて行く為に、アズマ国の剣術流派の当主である屈指の武士達サムライと相対した。

 それに加勢する師匠の武玄ブゲントモエ、更にシルエスカも並び立ち、クビアの転移魔術を用いて『みかど』を抑えようとする。
 しかしそんな時、ケイル達の目の前へ再び現れた映像は、聖域にて戦う母子ふたりの戯れに等しい戦いを見せられた。

 そうした中で行われた母子ふたりの会話を聞き、ケイルは驚愕の声を零す。

「――……アリアの持ってる創造神オリジン欠片かけらが、アイツメディアから与えられた権能モノだった……!? ……だったら、見つかってない欠片は二つってことかよ……ッ」

 微笑みながら話すメディアの言葉が真実であると仮定したケイルは、創造神オリジンの欠片を持つ者でまだ見つかっていないのが一つではない事を知る。
 現状でケイルが把握している欠片の持ち主は、『憤怒フォウル』『嫉妬自分』『色欲ユグナリス』『怠惰彼女』、そしてアルトリアに分け与えた『傲慢』の持ち主メディアだけ。

 七つの中で五つしか創造神オリジンの欠片しか発見できていないケイルは、残り二つの欠片を誰が持っているのか分からず思考を僅かに困惑させた。
 そして各々が戦いにもなっていない母子ふたりの映像に気を取られる中で、『雨』の当主に取り抑えられていたみかどがケイルの言葉に反応して声を発する。
 
「――……残り二つの居所持ち主は、余が知っている」

「えっ!?」

創造神オリジン欠片たましいは、ある特定の因子を持つ者にしか宿らぬ。過去に創造神オリジンの血を分けられた到達者エンドレスの一族、もしくは創造神オリジンの因子を持つマナのから生まれた『マナの実』の一族。そう限定されている」

「……じゃあ、残りの二人は……!?」

「一人は当代の『緑』と聞く、ログウェル=バリス=フォン=ガリウスだろう。『緑』は元来、『風』の到達者エンドレス一族に聖紋が宿るからな。今回の事態メディアに加担しているようだし、十中八九そうとしか思えん」

「!!」

「最初の映像も、声だけ聞かせても姿は見せなかった。間違いなく、『』の瞳に視られることを警戒してのことだろうな」

「……欠片を持ってる奴同士が組んでるのは、アタシ等だけじゃなかったってことか……っ」

 欠片同士が殺し合うという因果を抜け出した恩恵を受けていたのは、ケイル達だけではない。
 メディアとログウェルという欠片が共に同じ目的を共有し、今回の事態を引き起こしたのだとようやく理解するまでにケイル達は至れた。

 そして残り一つについても、ケイルは問い掛ける。

「残り一つはっ!?」

「余だ」

「!?」

「お主、向こうの『白』に会ったのだろう? ならば聞いているはずだ。余も『』の転生体として、創造神オリジンの欠片を持っている」

「……だからか。アンタ達がそのひとを、天界うえへ向かわせたくない理由は……!」

「……ッ」

 『白』の転生体であるみかどは、自身が創造神オリジンの欠片を持つ者であることを明かす。
 それを聞き到達者以外に弱い能力の帝が自分自身で天界うえへ赴く理由と、それを止める周囲の理由もケイルは納得を浮かべた。

 するとその言葉に対する返答を、代表するように『星』の当主が語る。

「――……帝様みかどまで天界うえへ赴き倒されれば、メディアなる者によって創造神かみの完全な復活が行われるやもしれん。そうなれば、もう誰も手が付けられん」

「だからって、このまま放置したら世界が滅ぼされちまうぞっ!?」

「それは無い」

「!?」

「メディアなる者の目的が欠片たましいの収集であるならば、それを持つ帝様が地上したるまま世界の破壊など考えん。……今回の事態を敢えてこうした形で知らせておるのは、欠片を持つ者達を全て天界うえへ誘き出す為。我等はそう睨んでおる」

「……確かに、可能性としちゃ大有りか……」

「『白』の七大聖人しちだいせいじん帝様みかどである事は、現状はフォウル国とアズマ国内の上層部うえにしか知られておらぬ。その帝様まで天界うえに赴いては、彼奴等きゃつらの思う壺だ」

「……ッ」

 『星』の当主はそう話し、創造神オリジンの欠片を持つみかど天界うえへ行かせない理由を明かす。
 それを聞いたケイルは苦々しい面持ちながらも納得を浮かべたが、再び目の前に投影される聖域の映像を視た。

 そこでは隠れていたアルトリアが発見され、左手を軽く薙いだメディアが巨大な木々を易々と破壊する光景と声が映し出されている。

『――……見つけたよ、アルトリア』

『クッ!!』

 薙ぎ倒された木々の茂みから飛び出したアルトリアを、メディアは赤い瞳で追いながら微笑みを浮かべている。
 それに反抗する為に、アルトリアは大量の気力オーラ魔力マナを混合させた弾を幾千も周囲に作り出した。

 それを連射しながらメディアへ襲わせながら、彼女アルトリアは距離を取ろうとする。
 しかしその砲撃は全て『魔王の外套スフィール』によって飲み込まれ、メディア自身が翳した左手がアルトリアに向けられた。

『練り込みが遅いね。砲弾コレは――……こう撃たなきゃ』

『!!』

 次の瞬間、メディアの左手から一瞬だけ光が走る。
 すると次の瞬間、アルトリアの左側を掠めるように何かが通過し、その背後にある聖域の森に巨大な爆発ひかりが発生した。

 それはメディアが放った光速の砲弾であり、それを防ぐ事も発射した瞬間すらも捉えられなかったアルトリアは、呆然とした表情を浮かべている。
 すると微笑みを絶やさぬメディアは、動きを止めたアルトリアに声を掛けた。

『かくれんぼは、もう終わりでいいのかな?』

『……ッ!!』

 遊び疲れた子供に対して言うように、メディアは遊びが終わりかを問い掛ける。
 それを良しとしないアルトリアは表情を引き締め直し、その場から転移して姿を消した。

 しかしそれを追えているかのように視線を動かしたメディアは、自身も転移させる。
 すると遥か上空を飛びながら離れていたアルトリアの目の前に、メディアが現れて立ち塞がった。

『!?』

『お母さんからは、逃げられないよ』

『……ァアッ!!』

 相手の転移を追跡できるメディアにとって、逃走が不可能である事をアルトリアは改めて理解させられる。
 だからこそ自身の両手を振り動かしながら生命力オーラの鞭を作り出したアルトリアは、それでメディアに攻撃を仕掛けた。

 すると迫る二本の鞭を、メディアは容易く両手で受け止めて見せてしまう。
 逆にその鞭を引き寄せ、アルトリアの身体を自身の正面まえまで引き寄せた。

『!?』

『さぁ、母親わたしの胸においで』

『クッ!!』

 引き寄せられたアルトリアは生命力オーラの鞭を素早く解除し、背中にある六枚羽を展開させながらメディアまで迫る自身の身体を急停止させる。
 更に大きく羽を羽ばたかせながら後退し、メディアとの距離を再び離しながら飛行での逃走を始めた。

 それを見たメディアは、溜息を漏らしながら呆れの微笑みを浮かべる。

『今度は鬼ごっこかい? いいよ、飽きるまで付き合ってあげるから』

「……あのアリアが、完全に遊ばれてやがる……っ」

 同じように凄まじい速度で飛行しながら追うメディアの映像を見て、ケイルは二人の実力差が明確である事を理解する。
 そして現状のまま事が推移すれば、疲れ果てたアルトリアがメディアに捕まり、その権能ちからを奪われるのは明らかに見えた。

 しかし同じ映像を見ていたナニガシは、全く異なる感想かんがえを述べる。

「――……まるで不慣れなははと、それを嫌うじゃな」

「!」

実力ちから異常アレで、普通の母子と比べるのはむずかしかろうが。儂には、そう見える」

「……不慣れな、母親……」

 メディアの様子を見ながらそう述べるナニガシに、その場の全員が改めて映像を見据える。

 今までメディアの言動は聞いていた者達は、それがアルトリアに対する挑発や侮りのにしか思えない。
 しかしナニガシの指摘を踏まえた上でメディアの言動をなぞると、確かにそうした意味に見えなくもなかった。

 そして今も、メディアは余裕の表情を保ちながらアルトリアをもてあそぶように飛行の追走を続けている。
 本気そのきになれば格下のアルトリアを捕らえて権能ちからを奪うことも造作の無いように見えるメディアに、改めてケイルは訝し気に呟きながらナニガシに声を向けた。

「……本当に、遊んでいる……。……いや、遊んでやってるだけ?」

「そうじゃろうな」

「……でもこんな状況にしておいて、自分の娘アリアと遊んでるって……どういうつもりなんだ……?」

「そこらへんは、ほれ。そこに聞けばいいじゃろ」

「!」

 ナニガシはそう言いながら、みかどに視線を送る。
 するとその場に居る全員が同じように視線を集めると、かれは腕を組みながら自信満々の様子で話を始めた。

あの者メディアは、純粋なのだ」

「純粋……?」

「純粋過ぎるがゆえに、人類ひとを要らぬ存在モノだと考えている。しかしその考えを覆せる存在モノもまた、期待して待っておるのだ」

「……!」

「そもそも、汝等うぬらは前提が間違っている。循環機構システムを掌握できる程まで強まった権能ちからを既に身に宿してるのに、他の欠片かけらを必要とはせんだろう。……あの者メディアは、余や他の欠片ものたちを集める為に今回の出来事を起こしたのではない」

「……じゃあ、なんで……」

「それこそ、ログウェルだろう」

「!」

あの者メディア人間大陸ここに戻したのは、ログウェルのようだ。であれば、そちらこそが真の目的を持っている」

 目の前に浮かぶ映像を視るみかどは、彼女自身メディアに欠片を集める目的が無い事を語る。
 そしてメディアを動かした人物ログウェルこそが、今回の事態を目論んだ首謀者であると語った。

 するとその語りを終えた時、大広間全体に覆われていた結界が突如として解かれる。
 それに気付いた帝以外の全員が周囲を見渡すと、ケイル達の背後で閉まる襖の扉が開かれた。

 更にそこから二人の人影が踏み込み、ケイル達はアズマ国の当主達は驚愕を浮かべながら声を走らせる。

「……あ、アンタ達は……!?」

「げぇっ、お姉ちゃんっ!?」

「――……何がげぇや、この阿保アホタレ!」

「……取り込み中のようだったので、勝手に入らせてもらった」

 大広間に踏み込んで来たのは、クビアの姉であり干支衆の『戌』を冠する妖狐族タマモ。
 更にその隣には『牛』バズディールが立ち、互いに素足で踏み込んで来た。

 突如として現れたフォウル国の干支衆ふたりは、奥に見えるみかどに声を向ける。

帝殿みかどよ。巫女姫様の願いを伝えに来た」

「!」

「至急、天界うえへ向かってくれやて。その迎えとして、うち等が寄越されたんや」

「なっ、何を勝手な……!」

 唐突に告げる干支衆ふたりの要求に、各当主達は動揺の声を漏らす。
 しかしその反論を遮るように、バズディールは更なる言葉を加えた。

「先程、あの天界ばしょ到達者エンドレスが生まれた」

「!?」

「しかもそれは、我々が危惧していた男でもある。同じ七大聖人セブンスワンとして、対処を願いたい」

「……まさか、到達者エンドレスになったのは……!?」

「『緑』の七大聖人セブンスワン、ログウェルだ」

 『牛』のバズディールはそう語り、『白』であるみかどに急報を持ち込む。
 それはメディアを引き連れこの状況を作り出した老騎士ログウェルが、突如として到達者エンドレスに至ったという情報だった。

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