8 / 111
やってきた薬師
やってきた薬師ー⑧
しおりを挟む
そこには真っ黒でオッドアイの猫がいた。右目は緑色、左目がライトブルーだった。
首に首輪はつけておらず野良猫に見えたがカナリヤはその猫に近づき
「ミーシャ、久しぶり。元気してた?」
頭を触って撫でていた。猫は気持ちよさそうに喉を鳴らしている。シャリングは二人をジーッと見ていた。
「カナリヤ、その猫って…」
「ああ、ミーシャは私が育てた猫。山菜取りに出かけた時山で怪我してるの見つけてね。手当をしたら懐いてきたの」
楽しそうにカナリヤとミーシャはじゃれあっていた。
「最初はビクビクしてたけど慣れていくうちにこんなにな仲良くなったんだ」
「へぇ、綺麗な猫だね」
「……」
カナリヤは何も言わず手が止まった。何かを見ているようだった。シャリングが覗こうとするとスっと立ち
「シャリング。先に行っててもらえない?」
「どうして?」
「お願い、一人にさせて」
シャリングの目を見ずにお願いした。シャリングはカナリヤを見なくてもカナリヤが何か震えているように見えた。
(ここは一旦待ってようかな。何かありそうだし)
「分かった。先行ってるね」
「この近くに湖があるからそこで集合しよ」
カナリヤはそのままミーシャを抱えどこかへ行ってしまった。
シャリングは言われた通り湖があるとされる方向へ進んだ。周りは木々ばかりで一向に湖なんて見えなかった。
道を間違えたかと思いさっきの場所に戻ろうと振り返った。するとそこには大きな角をした鹿がいた。
驚きバッグからナイフを取り出そうとしたが鹿は襲ってくる気配がない。シャリングは冷静になりナイフをしまい鹿を見た。
鹿もシャリングを見ていた。二人は何分が見つめ合っていた。
その時シャリングの耳になにか聞こえた。
(着いてきて)
周りを見ても誰もいない。いるのは鹿だけ。すると鹿がどこかへ歩いていく。
「あ、待って…」
鹿はどんどん歩いていく。しかしチラチラとシャリングを見ている。
「着いてこいということか?」
シャリングは黙って鹿に着いていくことにした。鹿はシャリングが着いてきているのを見てからまた歩き出した。
そして鹿はピタリと止まった。そこに何かあるのだと思い走って見に行った。そこには透明で綺麗な湖が広がっている。
「ここか…カナリヤが言っていたのは」
シャリングは鹿を見た。鹿はそのまま去ろうとしていた。
「待って、もしかして俺がここに来たいと思ってたから教えてくれたのか?」
鹿はうんともすんとも言わず黙ってシャリングを見つめている。
「ありがとう」
シャリングがお礼を言うと鹿は去っていった。
もう一度湖見た。水の中は魚が沢山泳いでいる。水上には蓮が咲いていた。
「綺麗だな」
湖に手を入れた。気持ちよかった。
少し休もうと思い木によりかかった。
「カナリヤ遅いな…」
別れてからもう一時間は経過しているだろう。それなのにカナリヤが来る気配がない。
(まさか俺をここに捨てて帰ったのか?)
カナリヤを疑った。しかしカナリヤはそんなふうにするやつとは思えない。冷たいヤツだがそこまでする奴とは相当思えない。
冷たいが内心優しい奴だ。
しかし、あの時のカナリヤは苦しそうだった。
シャリングは夜中見回りでカナリヤの部屋に行った。カナリヤはベッドに寝ていた。
しかしよく見るとカナリヤは泣いていた。ずっと「ルリス」と言いながら。それが苦しそうに見えた。
シャリングはカナリヤの手を握った。
初めてカナリヤを見た時綺麗な子だと思った。同い年であるのにみんなのために必死に働いている。
そんなカナリヤにシャリングは憧れていた。しかし、カナリヤはいつも笑っていた。だけどシャリングから見れば本当に笑っているようには見えなかった。
なにか重い荷物を背負っているように見えた。それなのに苦しい姿は見せずいつも明るく振舞っている。
シャリングはカナリヤの事が気になり話しかけようと何度も試みたが話しかける勇気がなく何ヶ月もたった。
そんなある日王からカナリヤの付き人になってほしいと来た。最初は疑ったが、そんな国王が嘘をつくはずないだろうと思い引き受けた。
そしてカナリヤの部屋へ向かった。恐る恐るドアを開けるとカナリヤはいつものカナリヤではなく別人のように見えた。
前までの元気な顔は消え冷たい目をしていた。入りづらくドアの前でオロオロしていたが、勇気をだしてドアを叩いた。
出てきたのはさっきの冷たい目をしたカナリヤではなかった。
いつもの笑顔のあるカナリヤだった。
それからシャリングはカナリヤを守りたいと思うよになったのだ。なぜだかシャリングにも分からなかった。
(多分俺はカナリヤに惹かれたのだろう)
首に首輪はつけておらず野良猫に見えたがカナリヤはその猫に近づき
「ミーシャ、久しぶり。元気してた?」
頭を触って撫でていた。猫は気持ちよさそうに喉を鳴らしている。シャリングは二人をジーッと見ていた。
「カナリヤ、その猫って…」
「ああ、ミーシャは私が育てた猫。山菜取りに出かけた時山で怪我してるの見つけてね。手当をしたら懐いてきたの」
楽しそうにカナリヤとミーシャはじゃれあっていた。
「最初はビクビクしてたけど慣れていくうちにこんなにな仲良くなったんだ」
「へぇ、綺麗な猫だね」
「……」
カナリヤは何も言わず手が止まった。何かを見ているようだった。シャリングが覗こうとするとスっと立ち
「シャリング。先に行っててもらえない?」
「どうして?」
「お願い、一人にさせて」
シャリングの目を見ずにお願いした。シャリングはカナリヤを見なくてもカナリヤが何か震えているように見えた。
(ここは一旦待ってようかな。何かありそうだし)
「分かった。先行ってるね」
「この近くに湖があるからそこで集合しよ」
カナリヤはそのままミーシャを抱えどこかへ行ってしまった。
シャリングは言われた通り湖があるとされる方向へ進んだ。周りは木々ばかりで一向に湖なんて見えなかった。
道を間違えたかと思いさっきの場所に戻ろうと振り返った。するとそこには大きな角をした鹿がいた。
驚きバッグからナイフを取り出そうとしたが鹿は襲ってくる気配がない。シャリングは冷静になりナイフをしまい鹿を見た。
鹿もシャリングを見ていた。二人は何分が見つめ合っていた。
その時シャリングの耳になにか聞こえた。
(着いてきて)
周りを見ても誰もいない。いるのは鹿だけ。すると鹿がどこかへ歩いていく。
「あ、待って…」
鹿はどんどん歩いていく。しかしチラチラとシャリングを見ている。
「着いてこいということか?」
シャリングは黙って鹿に着いていくことにした。鹿はシャリングが着いてきているのを見てからまた歩き出した。
そして鹿はピタリと止まった。そこに何かあるのだと思い走って見に行った。そこには透明で綺麗な湖が広がっている。
「ここか…カナリヤが言っていたのは」
シャリングは鹿を見た。鹿はそのまま去ろうとしていた。
「待って、もしかして俺がここに来たいと思ってたから教えてくれたのか?」
鹿はうんともすんとも言わず黙ってシャリングを見つめている。
「ありがとう」
シャリングがお礼を言うと鹿は去っていった。
もう一度湖見た。水の中は魚が沢山泳いでいる。水上には蓮が咲いていた。
「綺麗だな」
湖に手を入れた。気持ちよかった。
少し休もうと思い木によりかかった。
「カナリヤ遅いな…」
別れてからもう一時間は経過しているだろう。それなのにカナリヤが来る気配がない。
(まさか俺をここに捨てて帰ったのか?)
カナリヤを疑った。しかしカナリヤはそんなふうにするやつとは思えない。冷たいヤツだがそこまでする奴とは相当思えない。
冷たいが内心優しい奴だ。
しかし、あの時のカナリヤは苦しそうだった。
シャリングは夜中見回りでカナリヤの部屋に行った。カナリヤはベッドに寝ていた。
しかしよく見るとカナリヤは泣いていた。ずっと「ルリス」と言いながら。それが苦しそうに見えた。
シャリングはカナリヤの手を握った。
初めてカナリヤを見た時綺麗な子だと思った。同い年であるのにみんなのために必死に働いている。
そんなカナリヤにシャリングは憧れていた。しかし、カナリヤはいつも笑っていた。だけどシャリングから見れば本当に笑っているようには見えなかった。
なにか重い荷物を背負っているように見えた。それなのに苦しい姿は見せずいつも明るく振舞っている。
シャリングはカナリヤの事が気になり話しかけようと何度も試みたが話しかける勇気がなく何ヶ月もたった。
そんなある日王からカナリヤの付き人になってほしいと来た。最初は疑ったが、そんな国王が嘘をつくはずないだろうと思い引き受けた。
そしてカナリヤの部屋へ向かった。恐る恐るドアを開けるとカナリヤはいつものカナリヤではなく別人のように見えた。
前までの元気な顔は消え冷たい目をしていた。入りづらくドアの前でオロオロしていたが、勇気をだしてドアを叩いた。
出てきたのはさっきの冷たい目をしたカナリヤではなかった。
いつもの笑顔のあるカナリヤだった。
それからシャリングはカナリヤを守りたいと思うよになったのだ。なぜだかシャリングにも分からなかった。
(多分俺はカナリヤに惹かれたのだろう)
0
あなたにおすすめの小説
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
復讐のための五つの方法
炭田おと
恋愛
皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。
それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。
グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。
72話で完結です。
悪役令嬢に仕立て上げたいなら、ご注意を。
潮海璃月
ファンタジー
幼くして辺境伯の地位を継いだレナータは、女性であるがゆえに舐められがちであった。そんな折、社交場で伯爵令嬢にいわれのない罪を着せられてしまう。そんな彼女に隣国皇子カールハインツが手を差し伸べた──かと思いきや、ほとんど初対面で婚姻を申し込み、暇さえあれば口説き、しかもやたらレナータのことを知っている。怪しいほど親切なカールハインツと共に、レナータは事態の収拾方法を模索し、やがて伯爵一家への復讐を決意する。
【完結】あなたに知られたくなかった
ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。
5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。
そんなセレナに起きた奇跡とは?
【受賞&書籍化】先視の王女の謀(さきみのおうじょのはかりごと)
神宮寺 あおい
恋愛
謎解き×恋愛
女神の愛し子は神託の謎を解き明かす。
月の女神に愛された国、フォルトゥーナの第二王女ディアナ。
ある日ディアナは女神の神託により隣国のウィクトル帝国皇帝イーサンの元へ嫁ぐことになった。
そして閉鎖的と言われるくらい国外との交流のないフォルトゥーナからウィクトル帝国へ行ってみれば、イーサンは男爵令嬢のフィリアを溺愛している。
さらにディアナは仮初の皇后であり、いずれ離縁してフィリアを皇后にすると言い出す始末。
味方の少ない中ディアナは女神の神託にそって行動を起こすが、それにより事態は思わぬ方向に転がっていく。
誰が敵で誰が味方なのか。
そして白日の下に晒された事実を前に、ディアナの取った行動はーー。
カクヨムコンテスト10 ファンタジー恋愛部門 特別賞受賞。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
【完結】ひとつだけ、ご褒美いただけますか?――没落令嬢、氷の王子にお願いしたら溺愛されました。
猫屋敷 むぎ
恋愛
没落伯爵家の娘の私、ノエル・カスティーユにとっては少し眩しすぎる学院の舞踏会で――
私の願いは一瞬にして踏みにじられました。
母が苦労して買ってくれた唯一の白いドレスは赤ワインに染められ、
婚約者ジルベールは私を見下ろしてこう言ったのです。
「君は、僕に恥をかかせたいのかい?」
まさか――あの優しい彼が?
そんなはずはない。そう信じていた私に、現実は冷たく突きつけられました。
子爵令嬢カトリーヌの冷笑と取り巻きの嘲笑。
でも、私には、味方など誰もいませんでした。
ただ一人、“氷の王子”カスパル殿下だけが。
白いハンカチを差し出し――その瞬間、止まっていた時間が静かに動き出したのです。
「……ひとつだけ、ご褒美いただけますか?」
やがて、勇気を振り絞って願った、小さな言葉。
それは、水底に沈んでいた私の人生をすくい上げ、
冷たい王子の心をそっと溶かしていく――最初の奇跡でした。
没落令嬢ノエルと、孤独な氷の王子カスパル。
これは、そんなじれじれなふたりが“本当の幸せを掴むまで”のお話です。
※全10話+番外編・約2.5万字の短編。一気読みもどうぞ
※わんこが繋ぐ恋物語です
※因果応報ざまぁ。最後は甘く、後味スッキリ
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる