腹黒薬師は復讐するために生きている

怜來

文字の大きさ
24 / 111
マリヤの思想

マリヤの思想ー①

しおりを挟む
「シャリング、なんであんな所で寝てたの」

「君が調合室で寝てたから見守ってたんだよ。そしたら寝ちゃってた」

「なによ、見守るって。気持ち悪」

「はぁ?!君の安全を配慮してやったんじゃないか!」

「誰がいつ安全を配慮しろと言った!あんたの勝手な行動でしょ?!」

朝からカナリヤとシャリングの言い合いが始まっていた。

昨日の夜シャリングはカナリヤに毛布を被せたあとまたカナリヤの命が狙われないように近くの椅子に座っていた。

しかしついウトウトしてしまいそのまま寝てしまったのだ。

朝起きてシャリングはギリギリ倒れないくらいの体制で寝ていてそれを見たカナリヤがドン引きしているということだ。

カナリヤを守るためにやっていたことなのに逆にカナリヤに怒られた。

「だったらこれから気を使わないようにするよ!」

「そうしろ!」

フンといいカナリヤはそっぽを向いた。まるで子供と喧嘩しているようだった。

カナリヤも確か十五歳。そんな風には見えない。もっと子供っぽい。やっていることは大人だけれど。

コンコン

ドアを誰かがノックした。シャリングが慌てて開けるとそこにはマリヤがいた。

マリヤを見た瞬間シャリングは一瞬で真顔になった。昨日こいつがカナリヤに毒を盛った犯人の可能性が高いからだ。

カナリヤもきっと恨んでいる。そう思いながらカナリヤの方を見るとさっきまでの怒りは消えニコニコと微笑んでいた。

「おはよう。マリヤ。朝からどうしたの?」

「お、おはようございます。カナリヤ様。朝っぱらからすみません」

「いいえ、大丈夫よ」

「ちょっと頼み事が合って…今お時間よろしいでしょうか…?」

「ええ、いいわよ」

(ったくよくそんなにすぐ表情変えられるよな)

「どうぞ、こちらへ。シャリング。台所からコーヒーお持ちして」

「あ、はい」

今までのカナリヤとは口調が全然違うのでどう接すればいいのか焦った。いつも通りに接したらマリヤに怪しまれる。

シャリングは台所へいき、コーヒーを注いで持ってきた。

「はい、どうぞ」

「あ、ありがとうございます」

「それで、マリヤさん。頼み事って?」

「あ、えっと……変に思われるかもしれないんですけど……私に毒の作り方を教えてください!」

シャリングはその言葉に目をパチクリさせた。

(普通毒の作り方を教えてほしいなんて言うのか?そしたら余計怪しまれるじゃないか)

「それはまたどうして?」

「私…この世界に来る前毒について色々と調べていたんです。毒って面白いじゃないですか。なので、毒に詳しいカナリヤ様に毒のことを教えて教えてもらいたいと思いまして……」

マリヤは照れくさそうに言った。

(この世界に来る前毒のことについて知っていたからカナリヤに毒を盛れたのか。てことは、ここでカナリヤが毒の作り方を教えたら……またカナリヤは狙われるかもしれない)

シャリングはそう予測した。カナリヤもそれは分かっているはず、なのに

「ええ、喜んで教えますよ」

微笑みながらカナリヤは承知した。マリヤの顔はパァーっと明るくなった。

「ありがとうございます!それではまた今日こちらに伺いますね。準備するので!」

マリヤは嬉しさそうに言った。

「はい、待ってますね」

マリヤはそのまま喜びながら部屋を出ていった。シャリングはマリヤが出ていったのを見てカナリヤに問い詰めた。

「おい!なんで教えるんだ?また命狙われるかもしれないんだぞ!」

「だから何?」

カナリヤは心配してなさそうだった。いつも通り冷たい口調でシャリングに接した。

「だから何って……はぁ、君はほんと何を考えているのやら」

シャリングは呆れてカナリヤを見た。



カナリヤの部屋から出ていったあとマリヤから笑顔が消えた。

「フフ、意外とあの薬師簡単に倒せるわね……だけど、前に毒を盛ったのになんで生きているのかしら。もしかしてバレたんじゃ……まあいいわ。次は絶対に仕留めてみせる」

マリヤは満面の笑みを浮かべた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

次期国王様の寵愛を受けるいじめられっこの私と没落していくいじめっこの貴族令嬢

さら
恋愛
 名門公爵家の娘・レティシアは、幼い頃から“地味で鈍くさい”と同級生たちに嘲られ、社交界では笑い者にされてきた。中でも、侯爵令嬢セリーヌによる陰湿ないじめは日常茶飯事。誰も彼女を助けず、婚約の話も破談となり、レティシアは「無能な令嬢」として居場所を失っていく。  しかし、そんな彼女に運命の転機が訪れた。  王立学園での舞踏会の夜、次期国王アレクシス殿下が突然、レティシアの手を取り――「君が、私の隣にふさわしい」と告げたのだ。  戸惑う彼女をよそに、殿下は一途な想いを示し続け、やがてレティシアは“王妃教育”を受けながら、自らの力で未来を切り開いていく。いじめられっこだった少女は、人々の声に耳を傾け、改革を導く“知恵ある王妃”へと成長していくのだった。  一方、他人を見下し続けてきたセリーヌは、過去の行いが明るみに出て家の地位を失い、婚約者にも見放されて没落していく――。

復讐のための五つの方法

炭田おと
恋愛
 皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。  それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。  グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。  72話で完結です。

【完結】あなたに知られたくなかった

ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。 5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。 そんなセレナに起きた奇跡とは?

魔の森に捨てられた伯爵令嬢は、幸福になって復讐を果たす

三谷朱花
恋愛
 ルーナ・メソフィスは、あの冷たく悲しい日のことを忘れはしない。  ルーナの信じてきた世界そのものが否定された日。  伯爵令嬢としての身分も、温かい我が家も奪われた。そして信じていた人たちも、それが幻想だったのだと知った。  そして、告げられた両親の死の真相。  家督を継ぐために父の異母弟である叔父が、両親の死に関わっていた。そして、メソフィス家の財産を独占するために、ルーナの存在を不要とした。    絶望しかなかった。  涙すら出なかった。人間は本当の絶望の前では涙がでないのだとルーナは初めて知った。  雪が積もる冷たい森の中で、この命が果ててしまった方がよほど幸福だとすら感じていた。  そもそも魔の森と呼ばれ恐れられている森だ。誰の助けも期待はできないし、ここに放置した人間たちは、見たこともない魔獣にルーナが食い殺されるのを期待していた。  ルーナは死を待つしか他になかった。  途切れそうになる意識の中で、ルーナは温かい温もりに包まれた夢を見ていた。  そして、ルーナがその温もりを感じた日。  ルーナ・メソフィス伯爵令嬢は亡くなったと公式に発表された。

公爵令嬢アナスタシアの華麗なる鉄槌

招杜羅147
ファンタジー
「婚約は破棄だ!」 毒殺容疑の冤罪で、婚約者の手によって投獄された公爵令嬢・アナスタシア。 彼女は獄中死し、それによって3年前に巻き戻る。 そして…。

【完結】王都に咲く黒薔薇、断罪は静かに舞う

なみゆき
ファンタジー
名門薬草家の伯爵令嬢エリスは、姉の陰謀により冤罪で断罪され、地獄の収容所へ送られる。 火灼の刑に耐えながらも薬草の知識で生き延び、誇りを失わず再誕を果たす。 3年後、整形と記録抹消を経て“外交商人ロゼ”として王都に舞い戻り、裏では「黒薔薇商会」を設立。 かつて自分を陥れた者たち ――元婚約者、姉、王族、貴族――に、静かに、美しく、冷酷な裁きを下していく。 これは、冤罪や迫害により追い詰められた弱者を守り、誇り高く王都を裂く断罪の物語。 【本編は完結していますが、番外編を投稿していきます(>ω<)】 *お読みくださりありがとうございます。 ブクマや評価くださった方、大変励みになります。ありがとうございますm(_ _)m

悪役令嬢に仕立て上げたいなら、ご注意を。

潮海璃月
ファンタジー
幼くして辺境伯の地位を継いだレナータは、女性であるがゆえに舐められがちであった。そんな折、社交場で伯爵令嬢にいわれのない罪を着せられてしまう。そんな彼女に隣国皇子カールハインツが手を差し伸べた──かと思いきや、ほとんど初対面で婚姻を申し込み、暇さえあれば口説き、しかもやたらレナータのことを知っている。怪しいほど親切なカールハインツと共に、レナータは事態の収拾方法を模索し、やがて伯爵一家への復讐を決意する。

処理中です...