腹黒薬師は復讐するために生きている

怜來

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始まり

始まりー②

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「おはよう」

シャリングがリビングに入りながら言う。返事はない。リビングを覗くと誰もいなかった。

カナリヤはまだ寝ているのかと思い、棚からマグカップを取り出しコーヒーを注いだ。

昨日ハーネストから貰ったコーヒー豆で作ったコーヒーは美味しかった。

台所にはカゴに入った新鮮な野菜がある。

コンコン

誰かがドアをノックした。出てみるとハーネストがいい匂いのするパンを持っていた。

「おはよう。はいこれ。焼きたてのパン」

「あ、ありがとう」

「カナリヤ今日何をするか言ってた?」

「ううん。まだ何も」

「分かった。じゃあ今日は気晴らしにピクニック行くか。迎えに来るから準備しとけよ」

「え、うん」

急にピクニックに行くと言われても何を準備すればいいのだろう。シャリングはハーネストがくれたパンを台所に置いた。

何を作ろうか考えた。何しろシャリングは料理ができない。一応侯爵家…いや騎士団の一人でもあるし料理をするなんて滅多になかった。

「ちょっと、何作ろうとしてるの?」

カナリヤの声がした。振り向くと薄暗い赤の服を着たカナリヤがいた。まるで、騎士の服みたいだ。

胸のところにはチェーンが付いていてかっこよかった。カナリヤも髪型がポニーテールで似合っていた。

「聞いてる?」

「あ、ごめんごめん。朝ごはん何作ろうかなと思って」

「いいよ、私がやる。あんたは皿とか出しておいて」

「はい……」

カナリヤはパンを手際良く切っていった。シャリングは言われた通りに皿を並べた。

その時ハーネストの言葉を思い出した。

「そうそう、ハーネストが今日ピクニックに行くって言ってたよ」

「は?」

カナリヤは目を吊り上げシャリングを見た。

「それ先に言えよ」

「ごめん…なさい……」

つい敬語で謝ってしまった。その後は大人しく座っていた。暇すぎてカナリヤがご飯を作っている間外に出た。

数人の人が外に出ている。ほとんど老人だ。ちょこちょこ成人くらいの人もいる。

シャリングは村を散歩した。みんな自分の家の畑を育てていて、収穫しているところもあった。

「おい、そこの君!初めて見る顔だね。引っ越してきたのかい?」

推定年齢二十くらいの男性が話しかけてきた。自分のことを言っているのかと理解して返事をした。

「はい、そうです」

「おお、俺はジンナ・イサリヤだ。よろしく!」

「えっと、シャリング・ハルバリストです」

「これからよろしくな~、ところでちょっとおいで」

ジンナはシャリングを自分の畑に連れてきた。ジンナの畑にはレタスやトマト、キュウリやナスがなっていた。

「今は夏だから色々と沢山取れるんだよね。はいこれ、食べな。仲良くなった印だ」

そう言いシャリングにレタスやトマト、キュウリを渡した。どれも美味しそうだった。

「いいんですか?!ありがとうございます。これ、どれも美味しそうですね」

「ああ、昔は凶作だったんだよ。けど、カナリヤが来てくれたおかげで随分変わってな。野菜たちもスクスク育っていったんだ。ほんと、ありがたい」

「カナリヤがですか?」

「ああ」

(カナリヤは凄いな。こんなにもみんなの役に立てるなんて。本当にすごいな)

「それじゃあ俺はそろそろ行くわ」

「はい、野菜ありがとうございます」

シャリングはお礼を言って家に戻った。
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